桔梗が咲く頃
まだ学生の頃、祖父と父に連れられては長野や山梨の里山によく登山に行った。
祖父は、若い頃には3000mクラスの槍ヶ岳や白馬方面の山々に登っていたそうだが、万一の事を考え、60歳を過ぎた頃からは高山を避け里山を楽しむようになり、だんだんと父も伴うようになった。
父が伴う時は車で日帰りの登山になる事もあり、高校に行く頃になると一緒に行くようになった。
最初は、父のお下がりの道具を使っていたが徐々に道具も揃えるようになってきて、今でも使っている物もある。
大菩薩嶺や日向山、秋に昇仙峡と羅漢寺山を楽しんだり、蓼科山や霧ヶ峰、冬には白銀の美ヶ原の美しさを教えてくれた。
結婚をしてからは、年に数回程しか行かれないが今でも里山を登ることがあるが、道路や登山道が整備され、キャンプブームで人が増えきた。
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祖父にはよく花の名前を教わった。
撫子、あつもりそう、二輪草、碇草、蝮草、山吹、梅鉢草など、多くの花を教わったが、今ではすっかり覚えていない花が多くなった。
その中で、なぜか桔梗はよく覚えているし、なぜかいろいろな事が想いだされる。
蓼科山に登り帰り日帰り入浴で寄った親湯温泉で見たこと、甲府駅で信玄餅のロゴをみて電車を待ったこと。
地名は忘れたが、群馬で一面に桔梗が咲いていたこと。
3年前、鉢植えの桔梗をホームセンターで購入し今年も綺麗に咲いた。
桔梗が咲く頃になると、若い頃の事をよく思い出す。
なぜ桔梗なのかはわからないが、桔梗を見ると少しだが優しい気持ちにもなれる。
桔梗が咲く頃、いつも不思議な感情に包まれる。