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Everyday life becomes a novel

むかしむかし、あるところに一人遊びの好きな引っ込み思案の子がいました。

その子は頭の中に思い描いた世界の中、一人で毎日違う世界を訪れていました。

ある時は砂浜で砂のお城を一日中作っていたり、ある時はどこかの無人島で冒険していたり、ある時は一面のお花畑を走り回っていたり、ある時は‥‥ある時は‥‥。

一人で遊ぶことを「寂しい」と思ったことはなかった。
でも、その子が幼稚園に通い始めた頃、初めての気持ちが芽生えます‥‥。

おともだちをつくって、いっしょにあそべたらたのしいかな?
と‥‥。




これはわたしの遠い遠い記憶。
幼い頃の私は引っ込み思案で臆病で、思ったことの半分も言葉にして相手に伝えられない子でした。

話そうとがんばるけれど、思いをうまく言葉にできない。
結果、上手く伝わらない。
そのうちあきらめの気持ちが膨らんでいって、最後には口ごもり、無口になって話しかけにいかなくなる。
悪循環‥‥。

おそらくあの頃のわたしは、上手く言葉をアウトプットすることが苦手な子だったのです。
そのうち小学校に上がり、国語を習って知ってる言葉を増やしていき、読書感想文などで「文章を書く」ということを知っていく。

そうすると、それまでできなかった「話したい事を頭に浮かべる」ことができるようになり、そこから少しずつ友達ともスムーズに会話ができるようになった。




なぜこんな事を書いているかというと、先日Amazon prime で観た「怪異と乙女と神隠し」というアニメの中で、似たような話があったから。
主人公の一人である菫子は、幼い頃は相手に言葉で思いを伝えるのが苦手だった。
言葉は浮かぶけど、それを上手く相手に伝えることができず、結果的に相手とトラブルを起こしていた。

似てる‥‥わたしと。
そう思ったのです。

そんなある日、菫子は「玉心堂書店」という書店に迷い込み、店主の女性からあるアドバイスを受けます。


上手く喋れるようになりたいかい?
知ってるかい?
人は頭の中に一冊の「辞書」があるんだそうだ。
「心的辞書」といってね。
そこから無意識に言葉を探して喋ってるんだ。
君はどうやら、その辞書を引くのが苦手みたいだな‥‥。

「怪異と乙女と神隠し」より


わたしも言葉をたくさん知らなかったし、どれを選択して声に出せばいいか、まったく自信も勇気もなかった。
そう‥‥自分に自信がなかったんだと思います。


文章を書いてごらん。
実際に書かなくてもいい。
まずは頭の中に原稿用紙を用意するんだ。
そこに知ってる言葉を全部書いて「かたち」を与える。
頭の「辞書」を一度バラバラにするんだ。
もう言葉は十分にあるから‥‥。
次に原稿用紙に言葉を並べ直して文章にする。
そして出来上がった原稿を読むんだ。

「怪異と乙女と神隠し」より

わたしが当時やりたかったことは「これだ」と思いました。
知ってる単語を繋ぎ合わせて一つの文章にする‥‥。
いまでは割と簡単にしているこんなことが、あの時のわたしにはひどく難しく感じたんだ。


きっと君は、膨大な量の文章を書くことになる。
日常そのものが「長編小説」だ。

「怪異と乙女と神隠し」より


作中の菫子は、そうして作家を目指すようになる。

わたしは作家ってわけじゃないけど、いまはnote にいろんな文章を綴っている。
あれだけ言葉をアウトプットするのが苦手だったわたしが。

なんの脈絡もない、日常にあるこれらの文章でも、一つに繋げれば長編小説になるのだろうか?
そんな事を思いながら、今日も朝のカフェオレを飲んでいる。


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陽だまり
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