スニフ村的歌詞がすごい曲その4"polyester"
ありのままの許容
どうもスニフ村です。
先週は前回も書いた通りお休みさせていただきましたが今週はちゃんと書いてます褒めてください。
ひとまずこれで3回坊主は免れたので習慣化していきたいです。
前回イキって次回作の予告とか書いたせいでちょっと困りました先々週の俺許さん。
ただちゃんと前回の予告通りのバンドでいきますのでよろしくお願いします。
よし。音楽を聴こう。
それではいきましょう。
Kroi「Polyester」
巧みな演奏技術に加えて、幅広い音楽性を感じさせる去年から私が大注目しているバンドKroiの圧倒的に好きな1曲です。
【曲全体を聴いての感想】
私Kroiは、お洒落の暴力なんじゃないかってくらいサウンドが洒落ていて、でも歌詞が独特な所が大好きなんですね。
ただ、この曲は比較的落ち着いた雰囲気でゆったりと諭すような感覚で聴くことができます。
そのおかげか、フレーズがスッと頭に流れ込んできて僕には怜央くんの歌詞がより鮮明に見えたんです。
この曲を初めてちゃんと聴いたのは去年の秋口前くらいで、当時お付き合いしていた人に振られる直前だったんです。
割と振られる感じはヒシヒシと感じていて、それでも彼女のことは好きだったので、こんな俺でも愛してくれないかなあなんて思ってる時でした。
その時の心情に近い感覚を歌詞から感じたことをよく覚えています。
この曲の大まかな僕の解釈は「ラブソング」です。
Kroiが奏でる「愛」ってなんなのか。
紐解いていければと思います。
【自分の弱みは自分が1番よくわかってる】
この曲は前述したように、「ラブソング」と僕は解釈しています。
そんな曲の主人公の自己紹介からはじまります。
「いなたいguitarサウンドチェック 剥いだポリッシュ途中でリタイア オケの製作は30min Lyricの精度より巧みに 寒くなる秋はずっと鼻詰まり アート1つ1つ残す佇まい 暇潰しに作る曲は馬鹿臭い でもそんなもんもあんまり悪くない」
言わずもがなこの曲のメインとなる人物像は、guitarのサウンドチェック、オケの製作、Lyricの精度といった様々な音楽的要素からバンドマンであることがわかります。
その中でも気になるのは「Lyricの精度」というフレーズ。
個人的に、歌詞を書くことを「リリックを書く」と表現するアーティストはラッパーに多いと思っています。
僕の個人の解釈になりますが、バンド形態で、Vo.がラップをすると仮定した場合、これってもしかして怜央くんの実体験だったりするのではないかと思いました。
そうすると、guitarも扱い、Lyricも書くという部分に合点がいくんですよね。
そんなこともあってこの曲を聴いてなんだか僕は怜央くんに親近感が湧きました。
そしてさらに「鼻詰まり」「佇まい」「馬鹿臭い」「悪くない」と後半に韻を踏みつつ情景や心情をわかりやすく表現していく。
ここで韻が踏まれることによって、気持ちよく歌詞が聴けるんですよね。
気持ちよく歌詞が聴けることで、より歌詞が咀嚼しやすくなる。
Lyricの精度が巧みなのがよくわかります。
そして「眠れない夜君のことを思い出す 謝罪重ねる日々自分自身問いただす バイト1時間前フラフラで起き上がる 千代田線10号車ドア横に寄りかかる」と続きます。
もうめちゃくちゃに情景浮かびませんか?
フラフラになりながらドア横の寄りかかれるスペースにぐったり寄りかかる怜央くんが僕には見えました。
そして、どうして何かを思い出す時って眠る前が多いんですかね。
不安なことほど安心して眠りたい夜に現れる気がします。
思い出すたびに懺悔して、後悔して、気がついたら眠っていて、寝不足でフラフラになりながら起き上がる。
人との関わりが複雑化しつつある現代で、こういった経験をしたことない人の方が少ないのではないでしょうか。
恋愛に限らず。
【それでも自分自身は変わらない】
歌詞は続きます。
「少しずつ離れていくような感覚 口だけでは頑張る なんていくらでも言える わかっていてもてんで治らない生活 絵に描くこともできないほどかける迷惑 なあなあなことを抱えまた体たらく コンビニで手に取る品は低価格 性格の鏡見ても まぁ目に余る そんな時もイヤホンからはエリカ・バドゥ」
怜央くんは韻の踏み方が本当に秀逸で、「感覚」「頑張る」「生活」「迷惑」「体たらく」 「低価格」「目に余る」と語尾で踏みつつ、踏み方を変えていっているんですよね。
それがこの小気味良いリズムを作っていて、淡々としているのに耳触りの良い気持ちよさを生んでいます
結構人が自分から徐々に離れて行く時って、なんとなくそういった雰囲気を感じませんか?
「あ、多分もうこの人自分に興味ないんだな」とか「もうこの人に連絡しちゃダメなのかな」とか意外と人間って相手の空気感とかを察する能力が大人になるにつれて長けていってしまう気がするんです。
だから応急処置で「頑張る」なんて言っちゃって。
でもできなくて言葉を裏切って。
自分のダメなところなんて自分がよくわかっているのになかなか治らなくて、それにも嫌気がさしてそれでまた相手に迷惑をかけて、またさらに自分のダメなところを見つけてっていう堂々巡り。
誰しも経験があると思います。
そんな自分自身と向き合っているからこそ生まれる苦悩が本当に上手く表現されています。
こんな自分だから相手は離れていってしまって、でもそんな自分を治せない。
どうしたら良いかわからなくなる葛藤をこの一節だけで強く感じます。
そしてさらに最後の「エリカ・バドゥ」。
僕はこの曲を聴くまで存じてなかったのですが、HIPHOPやR&Bにジャズを融合させたスタイルが有名なアーティストなんですね。
こういった細かなポイントからもKroiや怜央くんのルーツを感じます。
それにそんな自分に嫌気がさしていても、音楽は近くにいてくれるっていう意味にも捉えられます。
音楽を愛していることが強く伝わってきますよね。
そしてここからが僕の大好きな一節
「嘘でもずっと一緒って言ってほしい クソでもまま俺をまた許してほしい 我儘もできる範囲ずっと聞いてもいい 嘘だけど君がいなくなったら死んでもいい」
本当にここが大好きで、初めて聴いた当時泣きそうになった記憶があります。
そもそもここの構成が凄くて、最初に「嘘でも」といって最後に「嘘だけど」で終わる。
「嘘でもずっと一緒って言ってほしい」と相手にお願いする立場でありながら、最後に「嘘だけど」とクソな部分を感じさせつつ、君には嘘をつけないよという意思表示にもなる。
伝わりますかね?
この言葉の構成が本当に素敵で大好きなんです!
さらにさらに「クソでもまま俺をまた許してほしい」というフレーズ。
人と関わりを始める時ってみんな良い部分を見せるんです。
でも相手との信頼関係が生まれた時に悪い部分を少しずつ見せて行く。
人は良い部分も悪い部分も持っていて、良い部分だけの人なんていません。
だからこそ、悪い部分も含めて自分なんです。
そしてこのフレーズには「また」という言葉も含まれていることから、以前にも自分の悪い部分を許してもらっているのがわかります。
だからその対価として「我儘もできる範囲ずっと聞いても良い」
ここも嘘をつけないところが出ていて、ちゃんと「できる範囲」なのがズルいですよね。
悪い部分も含めて僕自身で、僕も君の悪い部分や我儘にも多少は目を瞑るから、許してくれないか?
多分君がいないと生きていけないかもしれないんだ。
僕にはそう聴こえました。
この曲の中で唯一事実の羅列や自身の感情ではなく、明確な対象に向けて伝えているところでは、韻を踏んだりといったことはせず、ストレートに物事を伝えようとしているところも、この歌詞に魅力を感じるポイントです。
人は誰しも悪い部分があって、それをどれだけ許容できるかが、人との付き合いをしていく上で大事になってきます。
ましてや恋人だと、より悪い部分をダイレクトに感じたりすることで、すれ違いを生みやすい関係性です。
でも人の性格を変えることは容易ではない。
だからお互いに譲歩し合って、相手の悪いところを補っていく関係性が理想だと思います。
「こんな僕でごめんなさい。
でもそんな僕をひっくるめて愛してくれる君を愛します。」
そんな少し歯痒さを感じるラブソング。
おそらく怜央くんは、広範囲に変化し、様々な性質に似せることができるポリエステルの様な人間なら、こんな悩みはないんだろうと思ったんじゃなでしょうか。
【最後に】
いかがだったでしょうか。
僕はこのnoteの歌詞がすごい企画をしようと思ったのは、過去に怜央くんがインタビューで「一応自分の中の解釈はあるんですけど、他にもいろいろ解釈できるし、聴く人一人ひとりにその解釈は覆してもらえたらいいなって思っています。自分の中にも正解はないので」と言っていたり、「その人なりの解釈を聞きたい」と言っていたのがきっかけでした。
なのでこうやって歌詞に対する解釈だったりを表に出して行くことも面白いんじゃないかと思ったんですよね。
正直、歌詞ってある程度アーティスト本人が正解を持っているものなので、聴き手の感じ方よりも、アーティスト本人の正解が優先されがちなんです。
当たり前なんですけども。
でも、この歌詞を聴いて違う感じ方をした人もきっといるだろうし、怜央くんの意図した解釈ではなくても、それはその人自身の経験や性格が物語っているので否定する必要もないと思っています。
だから僕はこれからも、歌詞への解釈を表に出していきたいし、みんなの解釈を聞いて自分自身の感性を豊かにしていきたいと思っています。
なので今後とも感想やら思ったことやらビシバシ僕に伝えてくれると嬉しいです。
p.s.Kroiの新しいEPハンパないんで聴いてください。
【次回作】
ここまで読んでいただきありがとうございました。
正直次回どの楽曲しようとかは決まってないです。
ただ、やりたい楽曲は結構あるのでどれにしようかなって迷っている感じです。
バンド→ラッパー→ラッパー→バンドときたので、バンドにしようかな〜とうっすら考えてます。
誰も待ってないでしょうけどお楽しみに。
それではみなさん良い音楽を。