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社会人 大学博士の実際:その3

よくある質問:どうやって仕事と両立しているの?

社会人で大学院で学び直すメリットはなんと言っても
 1:財政的な安定
 2:就職の不安ゼロ
 3:興味関心の強さ
だと思います。 一方で、ぶっちぎりで大変なことは、そう仕事との両立です。

修士や博士など、どちらによっても大分変わってくると思いますが、ひとまず
「ちゃんと国立大学で社会人博士をやる」前提で説明します。

1:すごくいるもの:仕事の時間の融通

「忙しいかどうか」ではないです。時間の融通、がポイントです。
社会人の場合、そもそも「暇で暇でしょうがない」という人はなかなかいないと思いますし、おそらく博士課程にはいないです。

博士の場合、授業という授業はほっとんどないのですが、ゼロではありません。
そしてやっかいなのは、この授業の単位数が、博士の進級に関わるゲートに使われていて、単位が足りないと、審査すら始まらないので、最低限授業を取る必要があります。
残念なことに、授業は通常平日の昼間に行われます。
ビジネススクールだと、夜間の授業があります。一方で、博士課程後期にビジネススクールという概念がないので、普通に他の院生と同じく、昼間です。
しかも普通に学校の教室でやります。
はい。もちろんオンラインの授業をやってくれるケースもありますが、とにかくまず博士課程後期に「社会人」という特別な授業枠はないので、ちょっとだけの授業にでることが死活問題になってきます。

さて、みなさんは仕事中「すいません。いまから大学なんで2時間抜けます」が許されますか?というのが、求められてくる「融通」のレベルです。

有給をとるか、在宅のフリしてサボるかの二択しかないと思います。(自分は後者)

2:いるもの:気合と効率

自分も含めてなのですが、社会人博士にスーパー仕事できる人、というのは見かけません。むしろ、地味で普通の人が多いです。
が、明らかに普通の社会人と違うのは、仕事終わってから夜に勉強できる気合と、効率よく調査内容をまとめていくスキルです。

例えばなのですが、調べごと1つとっても、ボワンとした内容をもとに論文を探す人と、具体的な課題をトップジャーナルだけで調べる人だと、明らかに後者が速く良質で、しかも数も少なくて済みます。

自分の場合でも、論文をメモしてはエクセルに記録を残す(作者とか年とか)のを地味ですがめちゃくちゃ丁寧にやっています。

仕事だと、「前に話した〜と似たやつですが〜」的な正確性で十分なのですが、論文でそれをやるとまずいですので、「2011年の○○は✗✗と指摘している」と、あとからちゃんと言えるようにまとめておく必要があります。

職場では往々にしてただの細かいやつとして嫌われるので、あまり活きてこないスキルです。

3:全然いらないもの:職場の理解

上司とどう話したの?とか、会社の人はどう思っているの?とか、聞かれますが、ほとんどの人に話していないし、話しても誰も理解しないです。
もう一度いいますが、日本の会社における"Ph.D"など、履歴書の免許欄の「普通自動車免許」ぐらいどうでもいいと思われています。

というか、「学位」というものを全く理解していないので、そもそも大半の人は修士と博士の区別もギリです。

さらに、博士はみな「研究者」と思われていて、イメージはお茶の水博士みたいな白衣着た人的な理解度です。

雑多な現実や事象から仮説を構築し、検証しては文書化することで真を見つける、という能力が培われている人、とは思ってくれないので、ペイしません。

端的に言うと、こういう質問が次に続きます。
「大学の先生にでもなるの?」
です。

職場の人がアホなのではなく、少なくとも日本では大半そんな感じなので、博士になろうという人は、職場とか一切考えなくてOKです。割り切りましょう。

社会人博士に通うということを悪く言うならば

・見返りなく
・一人で
・金と時間と体力を消費せざるを得ない
・趣味学習

です。
真面目な話し、「カラオケが上手い」とかのほうが、100%日本の会社の中で重宝されます。

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