今だからこそ観てほしい。『アリージャンス〜忠誠〜』
久々に、舞台を観て
「泣き疲れる」という感覚を味わった。
現在上演中の舞台『アリージャンス〜忠誠〜』。
第二次世界大戦に翻弄された、
日系アメリカ人たちを取り巻く物語を
ミュージカル化した作品だ。
大学生の頃にこの作品のことを耳にして、
いつか日本で上演を、と願っていたので、
数年越しで、願いが叶ったというわけである。
正直、気軽に観られる作品ではない。
本当は憎しみ合う必要のない人たちが、
外部のさまざまな思惑に翻弄されて、
次第に憎しみや不信感に巻き込まれていく様を
見つめ続けなくてはならないのは、辛かった。
そしてこの物語を
「とある日系家族の愛と感動の実話」という
言葉で形容して良いのか。
正直考えてしまうところもある。
それでも、どこか希望を感じさせる力のある作品で、
この機会にこの作品を通して
歴史をまた一つ、学ぶことができたことは、
得難い経験だった。
あらすじは以下の通り。
(ミュージカル『アリージャンス〜忠誠〜』公式HPから引用)
001年12月7日、80歳の退役軍人サム・キムラのもとに一人の女性が訪ねてきた。
遺言執行人と名乗る彼女は、サムの姉ケイが亡くなり、サムに封筒を遺したことを告げる。
50年間会うことのなかった姉、そして過去の記憶が蘇るー。
日系アメリカ人のキムラ家は、カリフォルニア州サリナスで平和に暮らしていた。
1941年12月7日に真珠湾攻撃が勃発、米国の宣戦布告により第二次世界大戦に突入し、日本の血をひく日系アメリカ人たちは敵性外国人扱いをされてしまう。
翌年8月にキムラ家は自宅から強制的に追い出され、収容所へと移送される。
日系の人々は厳しい収容所生活を送りながら日本人の精神にも通じる耐え忍ぶ“我慢”に想いを重ね希望を失わずに暮らしていた。
一方、ワシントンDCではマイク・マサオカが日系人の社会的地位向上のためアメリカ軍との交渉に当たっていた。
ある日、収容所でアメリカへの忠誠を問う忠誠登録質問票(Loyalty Questionnaire)が配られる。
一体どう答えるべきなのか、家族それぞれの考え方の違いが露わになる。
父タツオは不当な強制収容に抵抗し、「No」を貫く。
姉のケイは収容所で出会ったフランキー・スズキと共に強制収容と徴兵の不当性を訴え、日系人の人権を求める運動に参加する。
弟のサミーは家族の反対を跳ね除けて、アメリカへの忠誠を示そうと軍に志願。
恋仲になった看護婦のハナ・キャンベルに家族を託し、日系人で構成された第442部隊の一員として戦場へと赴く。
己の信じる忠誠を胸に、戦時下を生き抜こうとした家族。その行く末はー
「アリージャンス」の時代に比べたら、
差別に関する意識が、少しは良い方向へ
変わってきている。
そう信じたい。
でも今の世界の状況を見ると、
まだまだ差別は根強く残っていて、
さらにだんだん
「この考えは間違っていない」
「相手を攻撃しても良い」という感覚が
人々の間に戻ってきている印象を受けている。
例えば、#BlackLivesMatter にしても、#StopAsianHateCrimes にしても
SNS上で見かけるたびに、
声を上げる人々がいることに安堵すると同時に
このようなハッシュタグを
作らざるを得ない状況にあるということもまた
思い知らされるわけで、
正直、肩を落としてしまう自分もいる。
そんな時期に、上演されたこの作品。
私たちには、過去から学べることが、
まだまだたくさんあるはずだ。
学び続けることを、
理不尽に対して声を上げ続けることを、
諦めてはいけない。
私はそんなメッセージを作品から受け取った気がしている。
偶然の巡り合わせかもしれないけれど
このような時期に、
この作品が上演されていることには
きっと、意味があったのだ。
「演劇」や「映画」でなく、
あえて「ミュージカル」という形を選び、
力強い音楽と共に彼らの物語を伝えようと、
この作品を作り上げた人々には、
本当に頭の下がる思いがするし、
だからこそ、どうか1人でも多くの人に、
この作品を見てもらえたらと
そう願うばかりだ。
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