神経心理学を療育に生かす
療育を進めていく中で、一番大切なものは「アセスメント」です。
アセスメントとは、その子の強みと弱みを「正しく」知ること。
特に自閉症は、その症状にかなり個人差があります。「自閉症」の特徴の一つである「こだわり」でも、何にこだわるのかは一人ひとり違います。「自閉症」と診断されていても、こだわりが少なかったり、ほとんど見られない場合もあったりします。
だからこそ、その個人差をどう正確に把握して、的確な手立てをするか、が大切なのですが、その特性を何を基準に読み取るか。今回読んだ「神経心理学」は、脳の高次脳機能の状態を探り、そこから支援の手立てを考えられないかというものでした。
参考にした本は、「神経心理学入門」坂爪一幸著 学研教育出版です。
高次脳機能の8つの機能
脳機能の中で、「感覚」や「運動」以外の動きを高次脳機能というそうです。
・言語機能→話す、理解する、読む、書く、計算する
・認知機能→見て知る、聞いて知る、触れて知る
・行為機能→手を使う、道具を使う、作る、着る
・注意機能→選ぶ、切り替える、集中する、持続する
・記憶機能→覚える、思い出す、時間・空間に位置づける
・遂行機能→計画・効率的に行動する
・感情機能→喜怒哀楽を受容・表出する
・意欲機能→自発・能動的に行動する
脳の一部が損傷する、もしくは未発達だと、以上の行動に症状があらわれてくるというものです。(本の中では詳しい症状が書かれてありました。)
高次脳機能を学校でどう生かすか
教育の場というのは、学校、療育センター、放課後サービス、家庭とさまざまな場があります。
子どもが一番長く過ごし、さらに問題行動が起きやすい場というのは学校です。なので、学校では「強み」をクラスメイトの前で認められるような時間が、合理的配慮とともに必要なのだと思います。
なので、先生はよく「子どもを誉めなさい」と言われますが、その誉めるときに是非、上記の高次脳機能の中の何が素晴らしいのかを誉めてもらいたいのです。
問題行動というのは、過緊張や負の感情から逃れるために起きると言われています。予防的な観点からみても、不得意な機能に焦点を当てるのではなく、強みの機能に焦点をあて、そこを認めのばすことで、弱みの機能を補うように発達していきます。
高次脳機能を療育でどう生かすか
療育の場(学校でも個別指導の場合)では、「弱み」の高次脳機能の育成を主軸においた支援と、強みの部分を自覚させる支援との両方が必要だと思います。
特に子供の場合は、その機能がまだ未発達なだけの場合もあるからです。
絵カードや、コグトレやソーシャルスキルトレーニング、ビジョントレーニングなど、色々な方法がありますが、どの機能の発達をうながすためにそのトレーニングをするのか、という根拠が必要になります。
その時に「脳のどの機能に働きかけているのか」という視点は、抽象的になりがちな支援での、助けになるのだろうと思います。
一番必要とする部分に、ピンポイントで療育を行うこと。それができれば、学校も保護者も本人も、きっと気持ちが楽になるだろうと思います。
ただ、私自身が課題に感じているのは、「感情機能」と「遂行機能」の具体的支援です。「認知機能」「行為機能」などは、見るならビジョントレーニング、操作なら、「点つなぎ」や「穴通し」など機能に特化した方法が分かりやすくあります。
しかし、「感情機能」と特に「遂行機能」については、支援方法に難しさを感じます。
感情や遂行(自己統制)などは、一人ひとりのおかれた環境も違えば、担任や保護者の考え方や感じ方も違います。
つまり、他の機能と比べ、答えや方法が多岐にわたるから難しいです。どうしたら自分の感情機能をコントロールできるようになるのか、どうしたら衝動的な行動を抑え、他者への配慮ができるようになるのか、は、今回読んだ「神経心理学」のほかにも、「発達心理学」や「行動心理学」、「臨床心理学」や「社会心理学」など、多方面からアプローチできるだけの力を、自分がつけていかなければいけないな、と思っています。
ただ、現時点で分かることは、子どもは目の前の大人を見て成長していきます。トラブルへの対処方法、日常的な声掛け、まなざし、学習に対する姿勢など、あらゆるところを全身で感じ取って成長していきます。
「こういうときはこうするんだよ」というのを姿で示すことが、一番の教育になるのではないかと思って、これからも心理学の勉強を続けていこうと思っています。
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