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#さきどり佐知子
「さきどり佐知子は毒かも知れない」
エリーは相変わらず、赤いワンピースをすっきりクールに着こなしていた。
たまには、違う服装も見たいなぁなんて思いながら、彼女を見てた。
正確なピストル捌き、正確なキャンディ弾の命中率。全てが、綺麗で無駄の無い動き。
見惚れてしまってた。
彼女のように、なりたいな。そう思った。
そして、エリーは去って行った。
しばらくして、ワンダーピープルの創始者の人達が、プールに来たの。
普段は、ずっ
「さきどり佐知子とプリンセスと女神」
キャンディをたくさん落としてくれた。
サマーが腰にぶら下げていたmont-bellの袋から流れ落ちた、たくさんのキャンディは、まるで私の方向に意志を持って転がって来るようだったの。
すぐにキャンディ弾を詰め込んで、私はワンダーピープル達に撃ちまくったの。
才能に気づいてしまった私には、とてもゆっくりに色んな物が見えていた。だから寸分違わずワンダーピープル達の足の小指にキャンディ弾を当てる事が
「さきどり佐知子とライオンの子供」
大変だったでしょ?
今まで。
人の視線の動き、ちょっとした気持ちの変化、そして、弾丸の行方。
全て、あなたは、無意識に見えている。
だから、苦しかったのよ。
エリーは、私にそう言って、またキャンディ弾をいくつもピストルに詰めた。
私は、今までの人生を少し振り返った。
確かに、そうかも知れない。
特段に運動神経も無かったのに、相手のサインがよめるってだけでバレーボールチームのキャプテ
「さきどり佐知子の早く知りたかった話」
ついて行くって決めたの。
何があっても。
グローブ島に向かう道のりは、まるで空き缶をたくさんつけて走るハネムーンドライブのようだった。
素晴らしい景色、湿度の低い乾いた風、そしてチャイニーの背中。
このまま、ずっとこのまま。
そう思っていると、チャイニーが振り返ってくれて、僕もそうだよって言ってくれた。
でも、チャイニーの運転手するベスパは、どんどん進んで行った。どこまでも速く、どこま
「さきどり佐知子の水平線」
目が覚めたら、隣のベッドにはチャイニーがまだ寝てた。
幸せだった。
近くのお店で朝食を食べる事にして、私は身支度をしたの。
シャワーから出ると、チャイニーは起きて窓の外を見つめていた。朝陽がとても眩しかったみたいで、こっちを見て笑ってた。
私の分まで、すぐに珈琲を淹れてくれて、チャイニーもシャワールームへ向かった。
私は、ゆっくりと珈琲を飲んだ。
チャイニーは、ほんの数分でシャワーを終
「さきどり佐知子に天窓に映る月」
チャイニーのベスパの後ろに乗って、ずっと彼の背中にしがみついて。
たくさんの時間が、光のように過ぎて行く。
色んな話を聞いて。
色んな街角を通り過ぎて。
幸せだった。
チャイニーの生きる目的や、夢や希望は、計り知れないものだった。私には。
大人になる前の希望に満ち溢れた、チャイニーの、その瞳は何よりも美しく、そして恐さもあった。
ある街で、チャイニーは、ベスパを止めたの。
そして、
「さきどり佐知子のサマーバケーション」
私は、海辺からレストランに戻ったの。
海で、真紀子ちゃんに言われたの。
もう1度、誰と一緒に居たいのかを確かめたら?
って。
歳下の女の子に、そうやって諭されて、私はおずおずとレストランに向かったの。
レストランの大きな窓の中には、阿部チェリーとジョンペルチアーノが向き合って座ってた。
阿部チェリーは、真っ直ぐな目つきで、ずっとスプーン曲げをしてたの。ジョンペルチアーノに向かって。
「さきどり佐知子の再会」
ジョンペルチアーノと3日間、素敵な時間を過ごすはずだった。
君の望みは、いくらでも叶えてやる。
ジョンペルチアーノは、相変わらずの優しい声と、柔らかい髪の毛で、私を包んでくれた。
3日目の日曜日に、美味しいオマール海老を食べようって、彼から提案があったの。ひいきにしているレストランがあるからって。
移動は、いつも黒い車だった。
いつも運転手さんに、綺麗に整備されて黒光りしていた彼の車は、
「さきどり佐知子とナイトムーン」
映画のお仕事は、順調だった。
エリーが、たくさんスケジュールを埋めてくれていて、そのどれもが素敵な作品だった。
ある日、映画関係のスタッフの人に忠告された事があったわ。
ジョンペルチアーノとは、別れた方がいい。
って。
心の中で、あなた、彼の何を知ってるの?
って、思ったの。
顔には出さなかったけど、適当に聞き流した。
ジョンペルチアーノは、いつも優しかった。
確かに、容赦の無い
「さきどり佐知子と遊園地」
とても穏やかで、誰からも愛されるような人。
それが、ジョンペルチアーノの表の顔。
私が出演した新しい映画の舞台挨拶に、彼は来ていたの。VIP席に、パートナーと手をつないで座っていたわ。
舞台に立っている間に、そっと共演者の人に聞いたの。
あの人は、どんな人?
って。
そしたら、絶対に誰も逆らえない人だって、小さな声で教えてくれたわ。
その日の夜に、豪勢なパーティーがあったの。
映画
「さきどり佐知子とセピア色の写真」
私の人生を変えた人。
全財産をはたいて、富豪しか受け付けない、あのラバリッツホテルに滞在して、色んな輝く人達をカフェで見たわ。
それでね、結局、私の人生は、主人公にも脇役にもなれない事を確信してたの。
でも、エリーのおかげで。
私の人生は、変わった。
しばらくの間、エリーの身代わりとして生きる事で、女優になった。
プリマとの映画は、間違いなくヒットしてた。
チャイニーが居なくなった後
「さきどり佐知子に可愛い手紙」
チャイニーの事をいつしか好きになってた。
頼れる人もチャイニーだけだったし。
チャイニーは、その夜、豪華な食事を部屋に用意してくれて、高価なワインで乾杯したの。
そして、少し酔った私は聞いたの。
チャイニー、あのプリマに私の名前がバレてるって事は、この先どうなるの?
って。
チャイニーは、ワイングラスを少し傾けて微笑んだの。そ
「さきどり佐知子はバニラ」
そう。
あの映画…
大事な仕事だからって、チャイニーはいつになく厳しく、台本の読み合わせに付き合ってくれた。映画のタイトルを聞いた時、どうせ売れない映画だろうなって思ったわ。
だって…
レッドローズ〜愛しき者よ去れ〜
ってタイトルで、なんか、古臭く感じて。
大事な仕事って、もっとお洒落な映画かな〜って、勝手に思ってたから。