刻
秋空に似合わぬ夏の暑さの中。
ふと思い立って神社に詣でてみた。
空に浮かぼうかと感じさせるほどの大きな鳥居を潜ると。
七五三の祈祷であろうか。洋装の大人たちと和装の子どもたち。神主と巫女に囲まれて恭しく佇んでいる。
子の幸せを願う親たちのどれだけの祈りがこの社に座す神に捧げられてきたのだろう。
いま目の前にいる親たちの願いを知ってか知らずか。抱えられた子どもはきょろきょろと辺りを見回してる。
連綿と受け継がれてきた命が歴史を紡ぎ、悠久の刻が流れた今も。子を想う気持ちが溢れ出ているこの空間がとても尊いと感じた。
抜けるような澄んだ青空を風が駆け抜け木々を揺らす。
参道の両脇に立ち並ぶ柱という柱には。寄進をしたであろう人々や組織の名前が連なっている。
いまは昔、きっと今日と同じように親のお願いを一心に受けたであろう子どもだった人たちの名。
どんな人生を歩んだのだろう。親の願いは叶ったのだろうか。
帰りの電車のなか。隣に立った女性に抱かれた、未だ首が座らない赤ちゃんを見かけて。
この子の未来が明るいものでありますように。
自分勝手ながらそう祈る。秋の日のひとコマ。
だて。
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