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人混み



デザインフェスタなるものに来ている


開場前に到着したものの
あまりの人混みに引いてしまい珈琲屋でコーヒーを飲んでいる
その珈琲屋も
人で溢れている


会場に向かう人々が窓の外に見え
晴れた日曜日に歩いている人々を見るにつけ


そういえば
こんなに健康な人をたくさん見ることってあんまりないな
そう気付く


もちろんプラベートでは
友だちと会っておしゃべりしたり遊んだりするのは大好きだけれども
基本的に大勢でうぇーいするのは苦手


仕事では
ほとんどの人は病気か怪我で寝ている
そこで働いている人たちもどこか疲れていて不健康そうである
楽しいとかお祭りとか
そういう空気感とは無縁な場所だ


いま
わたしの目に映る人々は
みんな自分の足で歩いていて
好きなものを飲んで食べていて
生命の危機なんて考えたことすらない人がほとんどで
自分の趣味とか楽しいこととかのために
時間や体力を使える人たちで


そんな人たちを大勢、そしてまじまじと見ることなんてそうそうない
デザフェスなんて無縁な生き方をしてきたけど
こういうことに引き摺り込んでくれる友人たちに感謝である


そうだよな
世の中健康な人のほうが多いんだよな
至極当たり前なことを反芻するかのように何度も何度も考えながら
自分の目に映る人たちを眺めている


仕事で思い出すのはたいてい夜の出来事で
いま比較的健康な人たちが
陽の当たる場所を歩いているのとは
とても対象的だ


なぜか夜や明け方は
具合が悪くなる人が多く
でも病院という場所は夜には働く人は最低限になる


わたしが所属する科も夜は人数が少ない
専門医は夜にはいない
でも具合が悪くなる人は時間なんぞ選んでくれない


真夜中に鳴るPHSの音
それは病棟で急変した人や
緊急で対応が必要な人が救急にいることを告げる音
響くその音に軽く絶望しながらも内線を取る


"ショックの人がいて、入室お願いできますか"


当然のごとく入室を受け
患者さんの情報を聞き取りつつスタッフに指示を出していく


5分後に受け入れ体制を整え
搬送を許可する連絡をする


入室して
患者さんのことを見て
ああ、やっぱりショックになってるな


ぼんやりと思いながら
淡々と医師と一緒に処置をこなし
薬剤の調整をし
検査をしつつ
状態の安定化を図る

こんなことを毎日のようにやっている
改めて思うと恐ろしいものである


わたしの判断で
患者の命を左右するいろいろな物事が決まっていく
もちろん治療の決定と責任は医師にあるのだが
看護師の判断や意見が反映されることも非常に多いのがいまの職場だ


恐ろしいことである


恐ろしいからこそ
学ばなければならない
たとえ救命できなくても
へこたれていられない

もし救命できたなら
陽の当たる場所を歩けるよう
回復を手伝う


歩く
食べる
喋る
遊ぶ
本を読む
スマホをいじる


当たり前のことを当たり前にできるように


見知らぬ大勢の人でごった返す人混みを見ながら


そんなことを考えている



だて



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