合掌
人の熱い想いに。それに触れた瞬間が好きだ。
当事者ではなく。客観視できる立場から見てるにすぎないから。好きと軽々しく言えるのかもしれないけれど。
なんていうのか。
下心や欲ではなくて。純度100%とは言わないけれど。高い純度で人のことや何かを想う気持ちに触れたときに。心震える気持ちになる。
なんでだろう。そう考えるけども。
なんとなくこれだろうなという点はあれども。明確な答えは見出せていない。
でも自分がそうした熱い想いが好きなのは事実た。
街路で赤ちゃんを抱っこしながら見つめる人の優しい眼差し。
口元を拭く親に幼い子が向ける信頼の表情。
手を繋いで街中を歩く老夫婦。
杖をつく妻を労り支える高齢の夫。
現実にはいろいろな苦労があるのだろうけども。その一瞬に表現される想いは本物だなと感じられる瞬間がとても良い。
先日。
なんとなく聴いていた曲が心に刺さった。
RADWIMPSの野田洋次郎がillion名義でリリースした「GASSHOW」。
古めかしい日本語で綴られた詩に引き込まれた。そう思ったが。それだけではなかった。
「(東北の)震災という出来事で感じたあのもどかしさ、眠れなさ、あの心臓のバクバク、失われたたくさんのもの、やがて忘れてしまうだろうあの瞬間を、どうしたらいいかわからなくて、ひたすらスタジオに入って曲に閉じ込めたのが、illionです」
野田洋次郎はそう語っているらしい。
鎮魂。
未曾有の大災害により様々なものを失った人々への想い。
そんな熱い想いが。GASSHOWという曲と詩から溢れ出ているんだな。そう思った。
だからこそ。
引き込まれのかもしれない。
鎮魂。その言葉を聞いて記憶が巡る。
コロナ禍での。ガラス越しに家族を看取った親子。終始静かに見守っていたあの人たちの想いは確かに息を引き取りつつある家族に向かっていた。
もう意識が回復することがない。今際の際にいる母親に。無邪気に抱きついて甘えている幼子。そしてそれを見守る父親。
そういえば。
自分がいまの部署に異動して。後にも先にも泣いたのは。その一度きり。
若くしてがんと闘い。そして力尽きた瞬間にきいた夫の叫び声。逝くなと叫ぶその想いは。確かにその愛する人に向かっていた。
人を想う気持ち。後悔。悲嘆。
そうした感情を。そしてその時の情景を。この曲を聴きながら思い出した。
東日本大震災からまもなく14年。
濁流で荒廃した街々で。さまざまなものを失った人々に。
今まで自分が出会い看取った数多くの人々の姿を重ねて。
雪の舞う瓦礫と化した街の中で合掌し鎮魂の祈りを捧げる僧侶のように。
震災で失われた多くの命、心、思い出に思いを馳せ。心の中で合掌する。
だて。
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