分娩費用を計算してみた 〜産科一次施設の場合

 よーし、おじさん、分娩費用の見える化で頑張ってみるぞ〜。 産科一次施設でどのぐらい費用かかるか計算してみる。 前もやった気するけどな。長いけどよろしくね。

まずは土地建物設備
【土地】はまあ150坪としよう 異論はあると思うけど、建物+駐車場でこのぐらいは欲しいということで。 土地は借りるのか買うのかという問題はあると思うが、借りるとして坪単価3,000円/月としよう。これも異論あると思うけどとりあえず決めないと計算できないので。
150坪×3,000円/月×12ヶ月=540万円/年
【建物設備】 規模にもよるけど、重量鉄骨もしくはRC造でストレッチャーが乗るエレベーターもあって手術室もある、ぐらいの建物(ウチが大体そんな感じ)、まあ設備としてはフツーでめっちゃ豪華な建物とまではいかないレベル、が大体今なら5〜7億はするんじゃなかろうか。東日本大震災前までなら3〜5億ぐらいのイメージだったんだけど、その後建築費用が上がり続けてるから。。。実際は今ならもっとするのかもしれないけど、とりあえず間を取って6億ということにしておこう。 高いなーという意見もありそうだが、産科施設は結構お金かかる。分娩室や手術室、内診室など使い回せない部屋が必要だったり、個室にするとそこに付く水回り分コストかかったり。母体搬送などもあるのでストレッチャーが載るエレベーターもあると有り難い・・・というのは地元の救急隊の言ね。 コレがまあ、イニシャルコストかな。
 これを15年で回収する、という設定だと
土地 540万×15年=8,100万円    
 購入なら8,100万/150坪=54万/坪  坪単価54万の土地か・・・都会じゃあり得ないような    
 まあいいや、とにかく8,100万が土地代
建物 6億円 合計 6億8,100万円
 15年で回収とすると4,540万/年ということになるね。

 さて、次に人件費を考えよう 24時間配置が必要で年中無休(病棟は)、かつ食事の提供などもある。
【医師】5,040万/年
 常勤医 3名 非常勤医 数名 常勤が3名だと、1名が夜間当直、1名がオンコール、1名がフリー・・・ということで、フリーが作れます。ここに昼間の外来を手伝ってくれる非常勤医を数名入れて回せば、まあ労働としてはボチボチかなあと。
 常勤医は年1,200万、非常勤医は月30万×4名×12ヶ月で1,440万/年 合計で1,200万×3名+1,440万=5,040万/年 常勤1,200万なんてあり得ん! うん、ワシもそう思う。でも財務省は医者の給料はガンガン切り下げたいみたいなので、今後は1,200万円ももらえたら喜ばなきゃいかん時代になるのだ(予想)。それに産科はやり甲斐あるから、みんなポジティブに捉えようぜ(無理やり)。
【看護スタッフ】1億980万/年
 助産師 8名 看護師 8名 二人夜勤制
 看護協会のお勧め通り、夜勤を月4回までとすると、原則8名いないと夜勤が回りません。なのでこの16名が病棟担当。全員常勤とするぞ。政権も賃上げしろと言うし、女性スタッフだから安くなんて今時そんなこと言うやつは
「いねえよなあ〜!」
 で、賞与など込みで助産師1名700万/年、看護師1名500万/年としてみる。これも安いぞ!という意見はありましょうが、やり甲斐搾取するのでこれで御願いします。 あとは外来要員として、ここは非常勤で 助産師/看護師 5名 カツカツな気もするが、これもこれで勘弁ね。時給1,300円ぐらいでザックリ計算したら一人23万/月か・・・(1日7時間・月25日)。扶養の範囲内、みたいな人がいたら、その分は人数増やして対応したと考えてね。
 助産師8名×700万/年+看護師8名×500万/年+非常勤5名×23万×12ヶ月=5,600万+4,000万+1,380万=1億980万円/年
【看護助手】1,512万/年
 最近、役割が増強されているのでもっと必要かもしれないけど、一応6名としてみよう。時給は1,000円としてみるか・・・東京じゃあ安いけど(大学生娘のバイトは時給1,400円にアップするらしい)。。。 計算は大体上と同じ。ただ清掃業務なんかは年中無休なので、休み無しで計算してみました。
【医療事務】2,460万/年
 常勤 3名 非常勤 3名 で、常勤が500万/年 非常勤が20万/月で計算してみる。
【厨房スタッフ】2,620万/年
 管理栄養士 1名 600万/年 調理師 常勤4名 400万/年 非常勤 2名 時給1,000円 これも計算略
 他にも臨床検査技師がいたりとか最近なら理学療法士がいたりとか、まあもう少し他の職種もあったりするけど今回は略。
 これで合計が 2億2,612万となったので、簡単にするために人件費合計は2億2,600万/年としましょう。かなり無理のある金額のような気もするが、まあ仮定の数字だからあまりツッコまないでね・・・。

 で、その他の経費ですが、医療機関は大体人件費率が60%ぐらいなので、一応それで考えてみます。最初のイニシャルコスト分も含んで6割だから、そこから計算するとこれもザックリなんだけど、1億368万となったのでまあ1億300万としておきましょう。 そうすると年間の費用が 4,540万+2億2,2612万+1億300万=3億7,452万 まあ3億7000万円としておきますかね。

 収入は更に計算が面倒なんである。それぞれの施設によって収入構造も違うしね。中絶が多い施設もあれば不妊を頑張っているなんて所もあるだろうし、最近だと美容をやっている所もあるし。で、面倒なので自分の所をベースに外来収入が年間1億としておきます。(だんだん雑になってきたな)そうすると残る費用は2億7000万円。これを分娩の収入で賄うことにしよう。。。

ゼーハー・・・疲れてきた。。。

 年間の分娩件数で割ってみます
200件/年 135万円/件
300件/年 90万円/件
400件/年 67.5万/件
500件/年 54万/件
 年間500分娩やっても54万円かかるやんけ。。。 実際はもう少し費用を抑えたり、分娩以外の収入がもっとあったりで、もう少し分娩費用は安く出来ていると思うのですが、それでも一時金50万より分娩費用を安くするというのはなかなか大変なことではあるなというのが、このクソ長い文章の結論・・・かもしれない。。。

 あと補足だけど、少子化が進んで分娩件数が減る、ということは上の表でだんだん数が少ない方へ移行していくという事ね。年間400件やっていたところが少子化で300件になったとすると、分娩費を67.5万から90万に値上げしないと同じ収入にならないということ。金額見たらすんごい値上げしたみたいだけど、それでようやく値上げ前と同レベルの収入になるので、値上げして「ぼったくる」どころかスタッフに今まで通りの給料をなんとか払い続けることが出来る程度、ということを読み取ってもらえると助かるんだな。出産一時金を上げると産科施設が便乗値上げする、という言葉に産科医が反発するのは、そういう内情を知ってるからでもある。分娩数が減ってきてカツカツでやっている所で出産一時金がアップしたので(アップすること自体は政治家の皆さんのおかげでもあるが)ああ、助かったと分娩費を値上げしてなんとか経営を少しでも好転させよう、という状況で「便乗値上げ」と言われるとなかなか辛いんである。まして今は「職員の賃上げをせよ」と政府に言われているご時世だしね。

上の数字はあくまで適当にザックリ計算してみただけだから、数字遊びと言えばそうだし、正確に計算したわけでもないので、そのあたりはご容赦頂けると幸いです。あくまでざっとこんな費用がかかるんだよ、ということをご理解頂ければ。。。

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