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アスリートも要注意!「冬季うつ」について
皆さんは「冬季うつ(ウインター・ブルー)」をご存知ですか? 通常、運動は人の心の健康を改善する最も効果的な方法の一つと言われています。しかし、いつも運動している人やアスリートでも、冬になるとなぜか気持ちが沈んでやる気が起きない……そんな気分の落ち込みを経験をしたことはないでしょうか。
「冬季うつ」とは日光不足による季節性のうつ病です。落ち葉の季節からうつ症状が出るため、落ち葉症候群(Falling Leaves Syndrom)と言われたり、季節性感情障害(SAD)とも呼ばれています。気分が落ち込むなどのうつ症状に加え、過眠や過食といった、まるで冬眠するかのような状態になったり、また春先の3月頃になると良くなるというパターンを繰り返すのも冬季うつの特徴です。
毎年冬になると、何の前触れもなく気分がウツウツと落ち込み、人と会いたくなくなり、何もかもがおっくうになる、体もだるい、絶望的な気分になったり、集中できなくなったり、ずっと眠い、炭水化物がむしょうに食べたい、トレーニングの意欲がなくなる……。このような症状に心当たりがある場合、それは意思の弱さや気合の問題ではなく、光不足から来るホルモンの乱れ、れっきとした体内の不具合かもしれません。
なぜ冬季に気分が落ち込みやすいのか?
普段私たちは朝日を浴びると、光刺激によって脳内の「セロトニン」の分泌が活発化します。
セロトニンは脳の中で合成・分泌される神経伝達物質で、大きく3つの働きがあります。1つ目は頭をスッキリさせる働き、2つ目は心を目覚めさせる働き、3つ目が自律神経を整える働きです。つまり、セロトニンがしっかり分泌されていると1日元気に過ごせて、身体も心も安定した状態になるのです。
また、私たちを睡眠へ導くホルモン「メラトニン」は、朝、光が目に入ることで分泌が止まります。日中はほとんど分泌されず、陽が沈むと昼間作られたセロトニンを材料に再び分泌され、夜に眠くなるよう体を誘導してくれます。そのためメラトニンは、闇(夜)を伝えるホルモン、睡眠ホルモンとも言われています。
通常はこのホルモンがバランスよく働いてくれているのですが、冬に向けて日光の時間と量が少なくなることが引き金となり、セロトニンの分泌量が減少し、ホルモンバランスが崩れ、あなたの気分に影響を与えています。セロトニンの分泌が減少すると、眠くて朝起きられずトレーニングに参加できなかったり、日中も眠気に襲われたり、一般的にやる気がなくなったりします。そして、甘いものや菓子パンなどの炭水化物をむしょうに食べたくなるため、体重が増加する傾向にあります。
どんな人がなりやすいの?
ある研究では、冬季うつ病の人は、夏の強い日差しではメラトニンが下がりすぎ、冬では長時間、分泌されることが分かっており、冬の弱い日差しでは睡眠リズムが乱れ、脳内セロトニンが低くなる体質と言われています。健常人でもこういう傾向はありますが、季節の光の変化にガツンと過敏に反応してしまう。つまり、光に対する感受性が、とても強い体質により、季節の変化に敏感な人がなりやすいと言われています。
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冬のトレーニングへの影響を軽減するためには?
単純に日光を浴びる時間と量を増やすことが一番大切です。そしてこれは、毎日行うことが大切です。セロトニンは貯蔵することができません。その日の朝の日光で分泌されるセロトニンの量で決まるという説もあるので、午前中の光が特に重要になってくるようです。また、セロトニンはメラトニンの原料にもなります。この二つのホルモンを不足させないように日光に当たる時間を増やす工夫をするほかに、自宅内や職場をなるべく明るくすることでも効果があるそうです。
アスリートは冬場、暗い場所や室内でのトレーニングが多くなりやすいですが、より多くの日光を浴びられるトレーニングの場所と時間を選ぶことが鍵となります。大学や仕事との両立が難しくて日中のトレーニングを取り入れにくい場合は、ビタミンⅮのサプリメントや、セロトニンの材料になるのアミノ酸の一つ「トリプトファン」を意識的に摂取するのも有効です。トリプトファンが多く含まれる食材は、豆腐・納豆・味噌・醤油・がんもどきといった大豆製品。牛乳・バター・チーズ・ヨーグルトといった乳製品にも豊富に含まれています。また、ライトボックスのアラームなど、朝スッキリと目覚める体質に変えるお助けアイテムを使うのも良いかもしれません。
厳しい環境の中でも頑張り続けるアスリートの皆さん。日照時間の少ない季節に体が思うように動かない、あるいは気持ちが乗らないとしても、それは決してあなたの頑張りが足りないからではなく、体でホルモンが十分に作られてないからかもしれませんよ。気持ちを少し楽にし、トレーニングに取り組んでみてはいかがでしょうか。冬の間も積極的に日光を浴びて、もうすぐやってくる太陽の輝く季節に想いを馳せながら、心身ともに優しく過ごせますように。
【参考文献】
冬季うつ,ウインターブルー、季節性感情障害 実は身近なうつ病 https://www.mentalclinic.com/disease/p8193/
What Athletes Should Know about Seasonal Affective Disorder https://www.trainingpeaks.com/blog/what-athletes-should-know-about-seasonal-affective-disorder/
睡眠の質も上がる?「幸せホルモン」の正体とは? https://www.nishikawa1566.com/column/sleep/20210629173311/
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