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気になるあの企業のリブランディング事例3選 -サービス編-

こんにちは!
Sun*デザインチームです。

日々仕事の中で、サービスに新たな技術を導入する話や、ユーザーニーズに対応する話など、変化を求められる場面に直面することが多いと思います。
サービスや企業がこれまで築き上げてきたものと、これから目指していく姿にギャップが生まれた時、そのギャップを埋めるための手段として、ブランドイメージの刷新に踏み出す機会があるのではないでしょうか。

そこで今回は、一度は見たことがある有名企業のリブランディング事例を調査しました!サービス編と企業編に分けてご紹介します。今回はサービス編です。


1. ビザスクのリブランディング

出典:https://cocoda.design/vqnarita/p/pcc8e66c9d13b

背景

ビザスクはColeman社の買収に伴い、ブランドの統合とグローバル展開への適応が必要な状況でした。また、ビザスクらしさが不明瞭だったため、デザイナーごとに制作物のトーンが揃っていない状態になっていました。これら2点の理由から、リブランディングがスタートしました。

プロセス

1.ブランドコアの定義
ビザスクはTakramと協業し、既に社内で機能していたMission / Vision / Valueを元に、Value Proposition / Brand Personality / Design Drivers / Visual Identityを定義しました。Value Propositionは元々定義されていた内部向けの7つのバリューと、経営陣へのエグゼクティブインタビューから得たインサイトから抽出されました。
Brand Personalityはブランドアーキタイプモデルという、12個のタイプから人格の構成要素を分析するフレームワークを活用しています。

2.ビジュアルの策定
Takramは前段で定義したブランドコアを元に、ビザスクらしさについてワークショップ形式で議論しながら、ビジュアルを策定しました。カラーを定義する際、Brand Pesonalityの構成要素とセットでカラーを選定することで、納得感を持って進めることができました。

出典:https://cocoda.design/vqnarita/p/pcc8e66c9d13b

ロゴの作成では、デザインの方向性を掴むために、ビザスクのMissionである「Insightful Connections」を概念図にするプロセスを挟んでいます。

出典:https://cocoda.design/vqnarita/p/pcc8e66c9d13b

こうして完成したVI(ビジュアルアイデンティティ)は「知見と挑戦が一つずつ繋がって、誰かの新しい挑戦につながる。そうした知見と挑戦が連なって未来へとつながっていく」というコンセプトを表現しています。

出典:https://cocoda.design/vqnarita/p/pcc8e66c9d13b

成果

ビザスク社内では「シンプルなのにその中にビザスクのミッションが込められていて、すでに愛着が湧いてきました」や「改めてビザスクのミッション、バリューを意識するようになった」などの声があり、改めて会社について考えるきっかけになったようです。

出典:https://www.takram.com/ja/projects/visasq
出典:https://www.takram.com/ja/projects/visasq
出典:https://www.takram.com/ja/projects/visasq

2. Airbnbのリブランディング

出典:https://1000logos.net/airbnb-logo/

背景

成長とブランドの必要性:
Airbnbは2008年に設立され、最初は単なる宿泊のオルタナティブとしてスタートしました。しかし、数年のうちにAirbnbは急速に成長し、Airbnbの創設者たちは単なる宿泊サービス以上のものを提供していることを社会に認知していく必要があると感じ、ブランドというものを意識しはじめました。

ブランドアイデンティティの再定義:
当初のAirbnbのロゴやビジュアルアイデンティティは、同社の真の使命である「どこにいても感じられる居心地の良さ」を十分に反映していなかったことに気づいたそうです。そこで創設者たちはこのギャップを埋めるために、ブランドアイデンティティを再定義することを決意しました。

プロセス

1. リサーチとインタビュー
リブランディングプロセスの一環として、DesignStudioのチームは、世界中の13の都市で18のホストと滞在し、120人以上のユーザーにインタビューを行いました。

2.新しいロゴとブランド戦略
リサーチを通じて得られた洞察から、DesignStudioはAirbnbのブランドミッションを「BelongAnywhere(どこにいても感じられる居心地の良さ)」と定義。このミッションをAirbnbのリブランディングにおける最大の成果の一つ、新しいロゴ「Bélo」で表現しました。

3.コミュニティの関与
Airbnbは、Airbnbコミュニティの意見を取り入れることでリブランディングを進めました。ユーザーが新しいロゴをパーソナライズできるようにし、「Create Airbnb」ツールを提供するなど、ブランドの一部としてコミュニティを巻き込むことで、より強い帰属感を醸成しました。

成果

「Bélo」ロゴのデザイン
新しい「Bélo」ロゴは、人々、場所、愛、Airbnbという4つの要素を組み合わせたシンボルです。このロゴは簡単に描けるようにデザインされており、言語や文化の壁を越えて認識されることを目指しています。

出典:https://e-heywood1316-dp.blogspot.com/2015/02/ougd503-airbnb-brand-guidelines.html

ブランド戦略の策定
「Bélo」ロゴの導入とともに、Airbnbはブランド戦略を大幅に刷新しました。新しいブランドミッションは、以下の要素を基盤としています。

コミュニティとのつながり
ユーザーが現地のホストや他のゲストと交流し、真のコミュニティを体験できることを強調。

包括性
誰もが参加できる、開かれたプラットフォームであることを表現。

信頼と安心感
Airbnbのサービスを通じて、ユーザーが安心して滞在できる環境を提供することを目指す。

出典:https://e-heywood1316-dp.blogspot.com/2015/02/ougd503-airbnb-brand-guidelines.html
出典:https://e-heywood1316-dp.blogspot.com/2015/02/ougd503-airbnb-brand-guidelines.html
出典:https://e-heywood1316-dp.blogspot.com/2015/02/ougd503-airbnb-brand-guidelines.html
出典:https://e-heywood1316-dp.blogspot.com/2015/02/ougd503-airbnb-brand-guidelines.html

DesignStudioが新しく作成したブランドガイドラインはコミュニティーや親近感を重視し、フレンドリー、カジュアル、楽しい感じの色やタイプフェイスとトーンを取り入れました。

効果と影響

ブランド認知度の向上
リブランディング後、Airbnbの新しいロゴ「Bélo」は、デザイン賞を多数受賞しました。これにより、ブランドの認知度が大幅に向上しました。ソーシャルメディアでのリブランディングの話題は広く拡散され、特にXでトレンドとなりました。

評価額の上昇
Airbnbの評価額は、リブランディング前と比較して大幅に上昇しました。リブランディング直後の数年間で、同社の評価額は約30億ドルから86.5億ドルに急増しました。

ユーザー数とリスティングの増加
Airbnbのリブランディング後、同社のプラットフォーム上のリスティング数は大幅に増加し、世界中で600万件以上に達しました​。毎晩、約200万人がAirbnbのホストのもとに滞在しているとされています。

IPOの成功
2020年のIPOでは、Airbnbの株価は一夜にして倍増し、評価額は約86.5億ドルに達しました。このIPOは、リブランディングの成功とブランド力の向上が大きな要因となりました​。

3. Slackのリブランディング

出典:https://slack.com/intl/ja-jp/blog/news/intl-ja-jp-slack-new-logo

背景

Slackの旧ロゴは分かりやすく遊び心があり、Slackのチャンネル名の前についているシャープ記号 に似せたものでした。ただ、取り扱いが難しく11色の多色で構成されており、白地以外の背景への配置や角度、色の微調整によって見え方が変わるという課題がありました。
よりシンプルで分かりやすい、ロゴとしての本来の役割を果たす新しいデザインに進化させるため、Slackはリブランディングに踏み切りました。
色使いはよりシンプルに、かつ洗練されていながらも、元のロゴの本質を引き継ぎあらゆる場所で柔軟に活用しやすく、Slackというブランドを象徴するロゴになりました。 

プロセス

Slackの創設者兼CEOであるスチュワート・バターフィールド氏やSlack社内のデザイン・ブランドチームとグラフィックデザイン会社Pentagramが共同で新しいビジュアルアイデンティティを開発。
新しいハッシュタグ形状のロゴを中心に、ブランドの一貫性を高めるデザインを採用しました。元々ブランドが持っていた遊び心のあるビジュアルパーソナリティは維持しつつ、広告やウェブサイトなど、あらゆる場面で柔軟に活用しやすいデザインにアップデートされました。

成果

新しいロゴのパレットには4つの原色が採用されており、白以外の背景色では扱いにくかったオリジナルの11色よりも扱いやすく、画面上でより見栄えがよくなるように最適化されています。Slackの馴染み深いシャープ記号の特徴は保持したまま、吹き出しはコミュニケーションとつながりを想起させ、ロゴの形状を反映した丸い角を持つカスタマイズされたアイコン、イラスト、モチーフはシステムの基礎となっています。新しい視認性の高いロゴは、様々な言語と文化を超えて一貫したコミュニケーションを可能にしています。ブランドアイデンティティの強化を通じて、Slackの市場での地位をさらに固めました。

ロゴの形状はさまざまな方法で使用できる
出典:https://www.pentagram.com/work/slack
ブランドアプリケーションのためのデザイン
出典:https://slack.com/intl/ja-jp/media-kit
広告用デザイン
出典:https://www.pentagram.com/work/slack

まとめ

気になるあの企業のリブランディング事例のサービス編はいかがでしたか?

今回さまざまなサービスを調査する中で、リブランディングを考え始めるきっかけに、下記のような傾向があることが見えてきました。

  • 経営・事業方針のアップデートが必要になり、これまでのブランド方針と合わない

  • 組織や事業の拡大により、サービスアイデンティティが曖昧になっている

  • デザイナーごとにクリエイティブの解釈に差が生まれ、ブランドの統一感が薄れてきた

またリブランディングはサービスの印象を大きく変更する決断でもあるため、現在の課題を特定して目指すべき姿を鮮明に描くために、社内の関係者やサービスユーザーに対して丁寧なヒアリングを実施していることも印象的でした。

さらにリブランディングが完了し、最終的な制作した具体的アウトプットを見ていると、サービスサイトやデジタルプロダクトへの展開といったWeb上のものだけでなく、広告クリエイティブや資料、ステッカー、ノベルティなどサービスに関わるタッチポイント全てへの展開を意識して、VIのディティールを詰めていることも知ることができました。

こうした学びを、私たちもリブランディングのプロジェクトに関わる際に意識して取り組んでいきたいですね!

おわりに

Sun*では、今年の初めにグループ会社のGROOVE GEARが「Sun terras」へ社名変更し、リブランディングを行ったことを発表しました。
Sun*グループとしてのシナジー強化を目的に実施した事例になるので、ぜひこちらもご覧ください。

次回は「気になるあの企業のリブランディング事例4選 -企業編-」をお届けする予定です。次の記事でまたお会いしましょう!




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