＃１０分で読める小説「選挙戦、SNSバズ勝利から一転！村長が1日で辞任した理由」
地方の静かな村、どこか懐かしい風景の広がるこの村では、数年に一度の町長選挙が行われようとしていた。しかし、村のほとんどの人々は選挙など気にも留めていなかった。なぜなら、長年村の実権を握ってきた三田村家の坊ちゃま、三田村が立候補しているからだ。誰もが「どうせまた三田村が当選するだろう」と思い、選挙にはさほど関心がなかった。
そんな中、金沢が突如、町長選に立候補することになった。理由は至ってばかばかしい。彼は酔った勢いで「俺がこの村を変えてやる！」と友人たちに啖呵を切り、そのままノリで選挙に出馬してしまったのだ。
「勝てるはずがない」と金沢自身も思っていたが、すでに選挙活動が始まってしまった以上、後に引くわけにはいかなかった。
ある日、金沢が村の広場で演説をしていた。集まった村民たちはみんな退屈そうな顔をしていたが、そこに、場違いなほど酔っ払った男が乱入してくる。
「おーい、金沢ァ！ お前、マジで選挙出てんのかよ！？」
金沢は一瞬面食らったが、酔っ払いの男が村で有名なトラブルメーカーである田中であることに気づく。
「おい、田中！今日は静かにしてくれよ。これ、真面目な演説なんだぞ。」
「ハッハー！真面目な演説だとぉ？お前が村をどうにかできるわけないじゃねぇか！ってか、誰がわざわざお前みたいな奴に金を渡すんだよ？お前に渡す価値なんてねぇよ！」
周りの村民が一瞬静まり返る。が、次の瞬間、笑いが巻き起こった。「誰がお前に金なんか渡すかよ！」という言葉があまりに面白すぎて、その場の雰囲気は完全に壊れた。
金沢も、このばかばかしい状況に腹が立つどころか、笑ってしまいそうになる。
「おいおい、田中、俺が金もらえるほどの立派な男か？もし俺がそんな金をもらってたら、この村にとっくに巨大な遊園地でも建ってるぜ！」
「遊園地？そんなもん要らねぇだろ！この村に必要なのはもっと刺激だろ！例えば、村にパチンコ屋でも建てるって話だろ！」
「いやいや、そんなもん誰も求めてねぇよ！村がギャンブルまみれになってどうするんだ！」
「ギャンブル？お前、パチンコは娯楽だ！この村には娯楽が足りねぇんだよ、娯楽が！」
この酔っ払いと金沢のばかばかしい会話は、終わりが見えないほど続いた。周りの村民たちは、そのやり取りを笑いながら見守り、次第にスマホを取り出して撮影し始めた。誰かがSNSに「うちの地域の選挙妨害草www」と投稿した動画が瞬く間に拡散され、金沢の知名度は急上昇していく。
やがて、その一部始終がSNSでバズり、金沢が「金に惑わされない正義の男」として注目されることに。実際には何もしていないのに、彼は一夜にして「正義の人」として村中で英雄扱いされるようになった。
彼は自分でも信じられない事態に戸惑いながらも、村民たちの期待を背負う形で選挙活動を続けざるを得なくなったのだ。
選挙の日、金沢は圧倒的な支持を集め、村の町長に選ばれた。広場に集まった村民たちは、彼を「正義の男」として称賛し、初の町長としての演説が行われた。金沢はマイクを握り、少し緊張しながらも堂々と話し始めた。
「皆さん、僕を信じて投票してくれて、本当にありがとうございます。この村をもっと素晴らしい場所にするために、皆さんと力を合わせて…」
その時、またもや田中が現れた。
「おい、金沢ァ！お前、正義の男だなんて、よく言えたなぁ！」
金沢は「またかよ…」と思いつつ、何とか無視して話を続けようとしたが、田中は止まらなかった。
「お前、正義とか嘘ついてんじゃねぇよ！みんな知ってるぞ、お前が選挙に出る前、毎週キャバクラ通ってたの！」
村民たちは一斉にざわつき始めた。金沢は顔が真っ赤になり、必死に平静を装おうとするが、田中はさらに声を張り上げる。
「お前、キャバクラで何したか覚えてんのか？それだけじゃねぇよ！その後コンビニの前で…全裸で寝てたんだろ？しかも、これ全部動画残ってるぜ！」
村民たちは一瞬凍りついた後、次第にスマホを取り出し始めた。田中はスマホを取り出し、再生ボタンを押す。
「ほら見ろ！こいつ、キャバ嬢と一緒にトイレで…！その後はコンビニの前で酔っ払ってパンツ一丁で寝てたんだ！」
金沢は完全に顔面蒼白。動画には、金沢が泥酔してキャバ嬢と踊ったり、抱き合ったりする姿、そしてズボンを脱ぎ捨て全裸になる場面まで映っていた。村民たちは最初は驚いていたが、次第に大笑いし始めた。
「しかも、その後、祠の前で酔っ払って踊り狂ってたんだぜ！これが正義の男かよ、笑わせんな！」
村民たちの笑い声は止まらず、SNSには次々と動画が投稿され、「#全裸町長 #キャバクラ町長 」がトレンド入りするほどになった。
その後、金沢のこれまでの恥ずかしい行動が次々と暴露され、キャバクラのトイレでの映像、コンビニ前での全裸騒動、さらに他の酔っ払いエピソードが次々と掘り起こされていった。
翌朝、金沢は村役場に呼び出され、コンプライアンス的に問題だとして即座に辞任を勧告されることに。わずか1日で町長を失職することとなった。
失意の中、田中が金沢に近づいてきて言った。
「なぁ、金沢。バズるのは怖いだろ？俺もビックリだよ！」
金沢は、呆然としたまま小さな声で呟いた。
「バズるって…怖いね…！♡」
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