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ベンチャー企業の戦い方を「吉田メソッド」にならえ!

今回は、数年前イノーバの顧問に入っていただいていた吉田行宏さんについて書こうと思う。吉田さんには経営指導などをいただいていた。吉田さんのおかげで僕自身もそしてイノーバも、物凄い勢いで成長できていたと実感している。吉田さんの持っているノウハウを僕は勝手に「吉田メソッド」と命名してるが、その内容は主に経営合宿や経営会議を通じた、戦略立案、戦略実行である。

このブログは、合宿の参加をした翌週に書いたもので、まだ興奮が収まらない状態であるが、その一部をなんとかお伝えしたいと言う思いで書いている。

■吉田さんとの出会い

初めに、吉田さんご自身と僕と吉田さんの出会いについて、簡単に紹介しよう。吉田さんは、ガリバー(現IDOM)の創業メンバーで、ナンバーツーとしてガリバーの上場、その後のグローバル展開など急成長を支えた立役者である。ガリバーでの後継者も育ったと言うことで、ガリバーを惜しまれつつ退職され、今は世界レベルのベンチャー企業の社長を100人作ると言うビジョンの下、ベンチャー企業20社強の経営顧問や社外取締役等をされている。

吉田さんとの出会いは、ベンチャーキャピタルの紹介である。弊社の株主であるドレイパーネクサスの中垣さんから、組織人事についてアドバイスがもらえるかもしれないから紹介しましょうかと言う話があった。たまたまであるが、楽天時代の僕の同期で、現在IPS細胞のベンチャーであるヘリオスの管理部長をしている石川 兼くんからも、吉田さんの紹介があった。

吉田さんとお会いしたのは2016年の4月からで実際の指導がスタートが5月。指導を受けた感想としては、吉田さんの持ってる経営のノウハウが半端ない、ガリバーの急成長がどのようにして成し遂げられたのか、その秘密が集まったものであるという事だ。

■会議の無駄をなくし、効率を上げる秘訣とは?

我が社で行っていただいた合宿は、1泊2日でイノーバの幹部社員6名と吉田さんで行った。その中で、非常に印象に残ったポイントが3つある。

まず1つ目が、会議において、発散と収束のプロセスが非常に重要だということ。例えば、今回の合宿で僕らにはお題が出された。それは、「戦略発表会をやるための全てを決めなさい」というものだ。これについて話し合う時に、吉田メソッドではかなり厳しく時間制限を設けて、一気に方向性を導き出してしまう。

具体的にはこのようなプロセスである。

1.まず、10分位で、思いつく限りのアイディアを付箋に書き、ホワイトボードに貼っていく。そして個人や各グループから出た内容を発表し、全員でレビューをする。<発散>

2.次に、発表した内容を踏まえて結論に向けた議論をする。<収束>

各プロセスにかけられる時間は5分から10分程度。もちろん、その時間内で結論まで到達出来ない場合もある。しかし、結論に向けた方向性はなんとなく見えてくるのだ。この発散と収束の流れを、何度も繰り返す。そして会議の結果を最終的に、誰がいつまでに完成させるのか、期限を決めてしまう。そうすることで、会議の無駄を徹底的に省くことができる。

■発散と収束が重要な訳

この手法、ひと言でいうと、「時間を計って、ポストイットを使ってアイディア出し」というもので、読者の方は、なーんだそんなの知ってるよ、と思われるかもしれない。しかし、これやってみると極めて効率が良い。自分で色々と調べてみると、これは脳科学的にも理にかなっているらしい。

人間の脳というのは、「集中モード」と「発散モード」の2種類が存在しており、これを切り換えながら生活しているという。例えば、あなたも文章を書こうとして、白い紙を前に頭が真っ白になり、全然文章を書けないという現象に陥った事はないだろうか?これは、発散モードを使わないとアイディアが出てこないのに、集中モードに入ってしまっているからなのだ。あるいは、最近、ワープロで文章を書くようになったのも良くない。文章を書きながら、誤字脱字の修正や編集ができるので、集中と発散の切換が上手くいかないのだ。これは僕がかつて以下のブログで指摘した症状である。右脳と左脳が喧嘩するのだと僕は思っている。

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本当にクリエイティブなアイディアは、発散モードで生まれるらしい。実際に、サルバトーレ・ダリは、眠る直前のうとうとしている時が一番アイディアが浮かびやすい事に注目して、絵のアイディアを得て居たとの事だ。今までの会社の会議には、圧倒的に発散モードが足りなすぎる。発散モードがないから、ありきたりのアイディアしかでないし、会議が楽しくない。会議が楽しくないから、会議は時間の無駄だと、こうなる。僕が吉田メソッドを通じて実感したのは、会議はむしろ企業経営の肝である。会議運営力が経営力を決めると行っても過言ではない。

■ボロ舟でもいいから、とにかく作れ

2つ目のポイントは、着手のスピード。例えば10日後に締め切りがある仕事を抱えている時、どのようなスピードで取り組んでいるだろうか?締め切りの一週間前に30%位終わらせて、3日前には70%位、前日には90かもしくはほぼ完成しているか・・・。多くの人がこのようなイメージで、取り組むだろう(グラフ内の黒矢印)。

しかし、吉田さんはこう言う。「ボロ舟でもいいから、とにかく作れ」。なぜなら、早く着手して全体像をつかむことが、最も重要だからだ。確かに、締め切りに向かって30%、40%・・・と進めているうちは、全体像が見えてこない。もしくは、構想やアイディアを頭の中で考えているばかりで、なかなか着手さえしない場合もある。しかし、それよりはボロ舟でもいいから期限の半分の地点で80%位まで作ってしまうほうが、一気に全体が見えてくる(グラフ内の赤矢印)。

ここで重要なのは「とにかく早く着手する」ということ。考えるべきことや、決めるべきことを、つい先延ばししてしまうことは誰にでもあるだろう。でも、とにかくボロ舟でもいいから型を組んでみることが重要なのだ。最初から完璧にしなくてもいい。着手することは誰にでもできる。頭の中であれこれと考えているよりも、実際に着手してしまえば、色々見えてきて意外とすんなり進むこともある。

そして型を組んで全体像をつかんだ後に、細かい部分の改善や作り込みが甘い部分を修正していく。とにかく早く着手する、ということを意識するだけで、物事を決めていくスピードや行動を起こすスピードは確実に上がっていくのだ。僕自身、このメソッドにかなり刺激を受けた。「今すぐ着手できないだろうか?」と、改めて身の回りの仕事や抱えている案件を考えてみると、意外と着手を早められる部分が沢山あることに、気がついた。そして、この経験を活かして、イノーバでは「48時間ルール」というのを作ったのだ。アイディアが出てから、48時間以内に初回のミーティングを行う、というのを徹底しようとしている。

■BHAGで組織全体の意識を上げよう!

そして、3つ目のポイントがBHAGを持つ重要性。BHAGとは『ビジョナリー・カンパニー』(著:ジム・コリンズ他)という本で紹介されている言葉で、「困難で大胆な目標」という意味。今は無理そうに見えても、到達できるかもしれないと思うと、わくわくするような目標だ。実際に、吉田さんからこんな質問をされた。

「ヒマラヤに登りたいの?高尾山に登りたいの?」

もちろん、僕が目指しているのはヒマラヤだ。しかし、僕がどんなにヒマラヤに登りたくても、もし社員の皆が高尾山を目指していたら、絶対に辿りつけない。そこで吉田さんは合宿中、参加した全員が本音で話せるような機会を設定してくれた。

なんでイノーバに入ったのか。逆に何があったらイノーバを辞めるのか。そこで普段話さないようなことやお互いの本音を共有することで、それぞれの会社に対する想いや、上を目指していく意識が向上していったのだ。

そしてこの意識の向上は、間違いなく普段の仕事やマネージャーとしてのレベルに反映されている。全員で共通のBHAGを目指すことで、個人の意識が向上し、それが組織全体への成長へとつながっていくことを、改めて実感した。もしこの経験を全社員に展開したら、イノーバは物凄いスピードで成長していけるんじゃないか?!と期待している。

もちろん現実では、解決すべき課題が山積みで、本当に目標まで到達できるのか?と疑問に思ってしまう時もある。ところが、吉田さんの指導を受けていると、自分自身と組織の成長スピードが加速していくので、本当にヒマラヤに登れるような気がして、わくわくしてくるのだ。

■ベンチャー企業に必要な戦い方とは?

漫画キングダムを読んだ人は理解していただけるのではないかと思うが、そもそもベンチャーの経営とは、戦いに例えるならば、少ない兵力で圧倒的な大群を倒すようなものであり、正面から戦っていては負けるに決まっている。だから戦略が重要であるし、戦略の実行が重要なのである。少人数で、一点突破を目指す経営戦略。吉田さんが教えてくれた戦い方で、僕たちはまた一歩、大きな目標へ近づくことが出来たと確信している。

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