満点堂のまんじゅう
加奈子が珍しくおみやげを買ってきた。まんじゅうだった。
「駅前に最近新しくできた店よ」
紙袋には「満点堂」と書かれていた。駅にはしょっちゅう足を運ぶがそんな店は見たことがない。駅前のどこらへんかを聞こうとしたら、加奈子は「コーヒー入れてくるから食べて待ってて」と下のキッチンに行ってしまった。
中から出てきた箱はいかにも高級そうだった。「満点堂」のロゴもいかにも格調高いが聞いたことのない名だ。甘いものはあまり食べないのだ。加奈子が戻ってくるまで待とうと思っていたが、コーヒーの香りはするがなかなか戻って来ないので、箱を開ける。まんじゅうをひとつ手に取って口に入れてみる。まあ、まずくはない。おいしいのかもしれないが、普段まんじゅうなど食べないのでこれが特別においしいのかはわからない。ひとつ食べればまた欲しくなり二つ目を食べていると、口の中に妙な違和感を感じた。むずがゆいのだ。あれ、と思っていると、胸もかゆくなってきた。なんだこれ。皮膚がかゆいのではなく、からだの内側がかゆいのだ。思い切り咳込んでみるがかゆみはおさまらない。
「お待たせしましたご主人さま」
ドアが開いて盆を持った加奈子が入って来た。メイド服に着替えている。バイト先からちょろまかしてきたのだろう。コスプレは加奈子の趣味なのだ。
おれのようすを見て加奈子は不思議そうな顔をした。
「どうかいたしましたか、ご主人さま」
加奈子は膝をついておれに近づいて来た。
「かゆいんだ」
「かゆい?」
おれはかゆみに耐えながらまんじゅうを食ったらそうなったことを説明した。
「どうにかしてくれ」
「承知いたしましたご主人さま」
かなこは、メイド服をまくると、いきなり、おれの口に中に指をつっこんできた。加奈子の指、手、腕がしゅるしゅるとおれの喉に吸い込まれていった。
「いかがですか。ご主人さま」
加奈子の指がおれの食道を、胃をかきむしった。おれは口もきけずえもいわれぬ快感に酔いしれた。加奈子はまんじゅうをむしゃむしゃ食いながらおれの中をかきむしり続けた。
(了)
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