最近は別れが多すぎる
45歳。
この位の年齢になると、若い時にお世話になった人達の訃報をよく聞くようになる。
先日も取引先の社長がなくなった。
23年前、自動車整備士をしていた時の取引先の中古車屋の部長として知り合ったIさん。
人当たりが良くて、物腰の柔らかいおじさん。
当時、22歳の若僧の僕とはそんなに接点が無く、搬送車で車を運ぶ時に何回か同乗して話した位の間柄。
8年後に退社するまでそんな感じの付き合いだった。
その後、風の噂で独立して個人で中古車のブローカーを始めたと聞いた時は
「あぁ、Iさんならうまくやってくんだろうなぁ」
と思った。
それから今の会社に入社して再会してからは、何度も取引をさせてもらってお世話になった。
相変わらず人当たりが良くて、優しいおじさん。
以前と違うのは、自営業なので奥さんと一緒によく動いていた事かな。奥さんも気さくな方で
「旦那の独立に付き合わされた」
と言いながらも、よく手伝っていた。
今の会社でも10年位取り引きさせてもらったし、お互いに仕事相手とし良い関係だったと思う。プライベートで会うような間柄ではないけども。
息子さんは3人いて、それぞれ独立。
誰も会社を継いでくれない事をよくぼやいていたけど
「この仕事は色々と気を使えないといけないし、個人でやるには息子達は若すぎるし、まぁ仕方ないよね」
なんて言って笑ってた。
僕は、なんとなくこんな関係がまだまだ続くんだろうなと思っていた。
それからしばらくして奥さんが急病で亡くなられた。
数日前にお会いした時は、元気だったので本当に急過ぎて社長も呆気に取られてるようだった。
お通夜で会った時も、僕には普段とあまり変わらないように見えた。
ただ、それからの社長はみるみる元気が無くなり、仕事の規模もどんどん縮小していき、体調も崩して痩せていった。その後入退院を繰り返して1年後にはまるで別人のように老け込んでしまった。
最後に会ったのは亡くなる1か月前位。
いつも通りのやり取りで別れた。
マスクをしてたので目元しか見えてなかったけれど、いつも通り物腰の柔らかい社長だった。
亡くなって1週間後に訃報を知り、その頃には葬儀も終わってた。
もともと月に1度会うか会わないかの関係だったし、仕事以外では会う事は無いので亡くなった実感は無い。
そのうちまたひょっこり現れて、いつものように取引きを頼まれそうな感じがしている。
社長とはそこまで親しくは無かったけど、僕の人生にはちょいちょい登場して彩りをくれた。
もう会えないのかという漠然とした寂しさはあるけど、もう少ししたらそんな寂しさも忘れるんだろうな。
最近はこんな別れが多い。
知り合いに限らず、昔よく観ていた俳優さんや芸人さん、好きだった漫画を描いてた漫画家さん…
別れは思いもかけないタイミングでやってくる…まぁそれはいつもそうなのかもしれない。
2020年はコロナ禍に振り回されて、僕も慌ただしい生活を送っている。
接客業なので、感染リスクにいつも晒されていて毎日気を張っているのでそこまで感傷的になる事は無い。
それでも少し寂しいと感じるこの気持ちを、何かに残しておきたくて文章にしてみた。
いつの日か僕の過去のマンガを描く時に、I社長がちょこっと登場すると思う。その時はよろしくね、I社長。
それにしても、最近は別れが多い。
僕も45歳、哀愁漂う年齢になったみたいだ。
さてと、今しか描けないマンガを描こう。