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MTG思い出話 パイオニアの開拓者たち。
2019年10月21日ウィザーズの禁止改定の発表とともに新たなるフォーマット「パイオニア」が発表された。「ラヴニカの回帰」以降発売されたすべてのエキスパンションが使用可能なルールで、モダンとスタンダードと間を埋めるフォーマットとして期待された。そんな誕生したばかりのフォーマットとそのカオスな環境に挑む開拓者たちのお話である。
震えるカード相場
新しいフォーマットの誕生したことにより、なによりも先に大きな変化が起きたのはカードの価格だった。モダンでは使えないがパイオニアでは活躍が期待できるカードたちが注目を集めた。《密輸人の回転翼機》や《守護フェリダー》など分かりやすい強さのカードが軒並み値上がりを見せたのだ。
そうなると多くのプレイヤーたちは次なる《密輸人の回転翼機》をもとめて、未だ注目を集めていない、最強カードをさまざまなカードショップを巡り探したのである。
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スナガガもそんな夢をもとめて、200円で売っていた《マラキールの開放者、ドラーナ》が黒単で活躍するだろうと予想して、4枚買ってきたのだが、今では100円ぐらいまで値下がってしまった。そんなワクワクとハラハラのフォーマット開始までの期間であった。
エルドラージと日本プレイヤー
パイオニア誕生後、初の新エキスパンションとなる「テーロス還魂記」にて収録された《タッサの信託者》が環境を席巻する。《真実を覆すもの》で自身のデッキを吹き飛ばし、《タッサの信託者》の効果で特殊勝利するということを主軸にしたインバーターコンボというデッキは、2枚でコンボが成立するお手軽さと、その分多くの除去や打消、ドローを積み込める安定性により、初のパイオニアによるグランプリブリュッセル20では優勝を飾っている。
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そんなグランプリブリュッセル20と同じ週末に行われたプレイヤーズツアー名古屋20では、面白いことが起こっていた。あいも変わらず使用率1位となっていたインバーターコンボだったが、決勝戦に登っていたのは、原根選手が操る、スピリットの部族シナジーを生かした「バントスピリット」と行弘選手が操る、小型のオーラ呪文と《上級建設官、スラム》の相性を活かした「オルゾフオーラ」だった。
インバーターコンボによりミッドレンジよりも遅いデッキの居場所がなくなっため、対インバーターコンボを意識したデッキが決勝に上り、優勝を競う結果となった。特にスラムオーラは、日本チームの独創的なデッキ構築を世界に知らしめた。
意外と流行らなかったパイオニア
そんな荒くれた新たなフォーマットとそこに踏み込むプレイヤーたちだったが、新型コロナウイルスの流行により、その熱は一時的に吹き消されてしまう。しばらくしてショップ大会が再開されスナガガもパイオニアチャレンジーデッキを片手に平日の高田馬場へ遊びに行ったのだが、参加人数は3人なんてこともしばしばありました。
それから約5年、出鼻をくじかれたパイオニアフォーマットであったが、今ではさまざまなところでパイオニアのイベントが開催されたり、フライデーナイトマジックのフォーマットに採用する店舗が増えてきた。さらにはスタンダードの不人気化などが追い風となりその存在感を強めている。スタンダードローテーション後の戦場として、間口の広いフォーマットであることを願うばかりのスナガガでした!