ギャザをやってる人しか解けないミステリー 変装編
たった今私は、裏向きのカードに殺された。消えゆく意識の中で、そのカードが何だったのか思考を巡らせる。
1時間前
私と友人は、行きつけのカードショップにやってきた。他の二人の知り合いと統率者戦で遊ぶ予定だったのだが、まだ到着していないようだ。最新セットカルロフ邸殺人事件のカードを眺めていると、友人が言う。
「新弾パック剥きたいし、ブースターブリッツでも遊ぶか?」
とくに断る理由もないので快諾する。そのまま新エキスパンションのカルロフ邸殺人事件のプレイブースターを購入した。デュエルスペースへと移動した。
席につく。さっそくプレイブースターの開封をしていく。すると友人がちょっとした悲鳴を上げる。どうやら《ギルドパクトの力線》が光ったようだ。羨ましいと思いながらも、ブースターブリッツでは使えないからなと強がって見せた。
友人は手際よく3枚ずつのデッキを作っていく。私も負けじと考えるが、どうしても絶対に勝てないだろうというデッキが1つできてしまった。しょうがなく3つのデッキを完成させる。先に組み終わっていた友人の方を見て、カードが何枚か表向きに避けられているのを見つけて言う。
「いいのか?カード見えてるぞ。」
友人は、使えないカードだからどうぞ見てくれと言わんばかりに肩を竦める。たしかに《ギルドパクトの力線》と《島》と土地カードの《ヴィトゥ=ガジーの枝》だった。
さっそく対戦を始める。先行は先にデッキを組み終えていた友人からだ。一戦目の結果はひどいものだ。《ブリキ通りの男爵、クレンコ》に《隠し武器》を装備してそのまま5点で殴られる。何もできず負けてしまった。
2戦目はこちらがやり返す番だ。くらえ《裂け目破りのヘリオン》《地震土竜、アンズラグ》《密偵ワニエルフ》!これぞ巨大クリーチャー軍団。まずいという表情の友人。《殺害》と《次の一手》で《裂け目破りのヘリオン》と《地震土竜、アンズラグ》が除去される。そして走り出す《法の超越者、オレリア》。4点のダメージを受けるも、返しのターンに《密偵ワニエルフ》が殴り返して勝つことができた。というかレア3枚とか羨ましすぎると内心思った。
迎える最終戦は世紀の凡戦だった。友人が変装で裏向きのクリーチャーを1枚に場に出し、《市場見廻りの幻影》を場に出す。迎えるこちらも《市場見廻りの幻影》を場に出し、お手上げだという意味を込めて白緑の諜報ランド《草萌ゆる玄関》を場に置く。「もっとマシなカードあっただろ?」と友人が言う。しかし本当に有用なカードがないものだから、デッキに入れなかった《喝破》や《妥当な疑惑》などを見せびらかす。
そして手札に残った1枚《犯人暴き》を興味本位で友人のコントロールする裏向きのクリーチャーを対象に唱えてみる。さぁ表にしてみろと煽ってみるも、慌てて友人はザ・リスト枠から出ただろう《呪文嵌め》で打ち消した。私は困惑したが、対戦を続ける。
私の中で一瞬友人がイカサマをしたのではないかと頭によぎった。変装を持っていないクリーチャーを変装で置いたのではないかというイカサマだ。戦闘は友人の名誉とこのあとの気まずさを考えて、《市場見廻りの幻影》同士で相打ちをさせる。そして裏向きのクリーチャーに殴られ私はライフを0にした。
この1時間の記憶に思考を巡らせた。そして《犯人暴き》を打ち消さなくてはいけない1枚のカードに思い当たった。一瞬でも友人を疑った自分を恥ずかしく思う。私は自信をもってカード名を言い当てながら、そのカードを裏返した。
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