雑記|父は水をくむ
公園にくる。砂場に来る。
父の役目は子の指示に従順になり
水をくむことだ。
コップ、バケツ、何かのフタ
容量要領おかまいなしに、
いまここに水をもってこいの一点張りだ。
交渉の余地はなし。水をくむ。
蛇口をひねり泥だらけの容器をもってくるやいなや
砂場にぶちまける。
競馬や宝くじにつぎこんだお金のように
みるみると砂にとけて吸い込まれる水。
なくなってしまうから次をくんでこいとの
厳しい指示がとぶ。なんという勝ち目のない反復運動。
それでも父は水をくむ。面倒な顔で。疲れた顔で。
もういくばくかするとそんな水をくまなくてよい日が
すぐやってくることをなんとなく分かっていながら。
それが水でなくお金も一緒だな、なんてぼんやり
考えながら。
我が子が幸せならそれでよし。泥だらけの容器をを
ぶら下げてまた蛇口にむかうのであった。