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DX人材育成講座卒業制作発表:チームJ【現場の声をデータ化”ウェルゲージ(well-gauge)”】


はじめに

DX人材育成講座では、現状の業務が抱える課題を分析し、それを解決するための卒業制作を行い、複数チームでトーナメント方式の発表を行いました。

このnoteでは、整形外科を経営されているお魚さんを顧客とし、医療の最前線の、スタッフ一人ひとりの「健康」と「ストレス」をどう把握し管理するかを課題解決に挑んだチームJの発表についてご紹介します。

医療現場の課題に挑む新たな視点

医療の最前線では、スタッフ一人ひとりの「健康」と「ストレス」をどう管理するかが、経営者にとって大きな課題となっています。今回、TeamJが提案したのは、職員の「健康」と「ストレス」を可視化するツール『ウェルゲージ(well-gauge)』です。

このプロジェクトの背景には、35人の職員が働く整形外科クリニックの経営者であるお魚さんが、個別面談で職員の体調や精神状態を把握するという非効率な方法を続けていたという課題がありました。

経営者1人がすべての職員を把握するのは時間的にも体力的にも限界があるため、「何かデータを活用して効率的に判断できる方法はないか?」という問題意識が生まれたのです。

「ウェルゲージ」の概要──自分で感じる“今の状態”をデータ化医療現場の課題に挑む新たな視点

『ウェルゲージ』の大きな特徴は、「職員が自分自身の体調や精神状態を数値化して入力する」という点にあります。これにより、これまで経営者の主観に依存していた評価基準を、客観的な数値データに変換することが可能になりました。

このアイデアの元になったのは、「ヤーキーズ・ドットソンの法則」。適切な緊張感を保つとパフォーマンスが向上するという考え方をもとに、「体力」と「ストレス」の2軸で職員の状態を把握する仕組みを構築しました。

職員は、専用のフォームを使い「今の体力」と「今のストレス」を入力。それらの情報はリアルタイムにデータとして集計され、バブルチャート(散布図)で職員の状態が一目で把握できるようにしました。

第1スプリント:アナログからデジタルへの移行

最初は、紙のアンケートからスタートしましたが、GoogleフォームのQRコード入力も並行して導入しました

しかし、職員の中には60代のデジタルに不慣れな職員も多く、2日目の時点で「紙のほうが楽」という声が多く挙がりました。

これにより、「単にデジタル化すればいいわけではない」という課題が浮き彫りになりました。

第2スプリント:NFCタグを活用した新たなアプローチ

第2スプリントでは、職員がスマホをかざすだけでフォームが開けるNFCタグを導入しました。

また、NFCタグを導入した際に、アンケート形式の調査も実施し、NFCタグにより、アンケートの手間が大幅に軽減され、「もう紙じゃなくても大丈夫」という結果にもつながりました。

同時に、回答データの可視化が大きな成果を生みました。特に注目されたのが、メディカルクラークと看護師のストレス値の違いです。

  • メディカルクラーク(青のバブル):ストレスが低く、余裕がある職員が多い。

  • 看護師(緑のバブル):ストレスが高く、体力も低い位置に集中しており、退職リスクが高い状態。

このデータは、経営者が行動を起こす強力な根拠となりました。

数値データがもたらした3つの意思決定

『ウェルゲージ』を使って得られたデータは、「感覚的な把握」から「データに基づく判断」へと経営者の意思決定を変えました。特に、2回のスプリント後に経営者が行動した3つの具体例が以下のとおりです。

1.新人メディカルクラークの業務量を調整

データから、新人メディカルクラークが高いストレスを抱えていることが判明。そこで、「新人には業務量を増やさない」という判断が下されました。

2.先輩メディカルクラークの業務を前倒し

新人メディカルクラークとは逆に、先輩メディカルクラークはストレスが低い状態にあったため、業務の前倒しを依頼し、リソースの有効活用につなげました。

3.看護師の業務負担を軽減するため、人員を増員

ストレスが高い状態が続いていた看護師のグループについては、「燃え尽きリスクが高い」と判断。そこで、看護師の増員を決定し、すでに採用活動が始まっています。

これらの決定は、すべてデータが後押ししたものです。感覚ではなく、「可視化された事実」をもとに行動を変えることができました。

今後の展望──「他の業種への展開も視野に」

今回のスプリントでの気づきは、「経営者の面談時間が大幅に削減された」という効果です。これまでは、1人ひとり面談をして情報を集める必要がありましたが、職員自身がデータ入力を行うことで、面談回数を減らすことが可能となり、可処分時間の確保に繋がりました。

今後の展望として、同僚同士でも回答状況が見れるようにすることで、部署を超えたコミュニケーションのきっかけ作りにも繋がり、つつあります。
たとえば、ある部署のスタッフがストレスを抱えていることが可視化されると、「手伝おうか?」という支援が生まれ、組織として業務効率化に取り組み負担を支え合うような形になるように考えています。

まとめ

『ウェルゲージ(well-gauge)』は、職員の「健康」と「ストレス」を見える化するツールであり、医療現場の課題に対して「データを活用した経営判断の質の向上」を実現する一歩となりました。

また、今回のツールは「他の業種にも活用できる可能性がある」という展望も見えました。職員の健康管理やストレスの可視化は、医療業界だけでなく、福祉、教育、さらには一般企業の労務管理にも応用可能で、さらに進化が期待されます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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