11月30日
「『君の強みは…相手に合わせて変化できる柔軟さ!でも自分を見失わないように!』だって、すごい、君っぽいね!」
駆け寄ってきたキミは、楽しそうに僕の結果を読み上げる。
「…特に、人の経験を吸収して自分のもに、ってこれ悪口じゃん」
笑いながら見つめ合う。昼食時のオフィス、電子レンジの前で2人、くっついて小さな画面を覗き込む。
キミが教えてくれたのは性格診断のサイトだった。こういうのは苦手なのだけども、どうしてもというから答えてみた。
「相性がいい人は…『色々なことに対応できる万能タイプ』かー。へー」
クスリと小さく笑ったのを右肩で感じた。今朝は冷え込んだから、部屋は暖房が効いていた。
相手に合わせて、か。試行回数は1回だけど、この性格診断の精度が素晴らしいことは明白だ。解説文も図星。
いったいどれが本当の自分なのだろうな。ココロを砂糖みたいに溶かすうちに、芯までなくなってしまった。砂糖は林檎ではない。温かいものには際限なく溶けてしまう。
バスは帰宅ラッシュで詰まった国道を前に立ち往生している。彼は思い出したかのように既読回避アプリを開き、昨晩から騒がしいグループチャットを覗き見た。
またドライブか。行き先について議論していた。往復の数時間、下品な話に付き合わねければならない。男一般というのはそういう生き物と思って差し支えなかろう。彼は他の3人が意見を出し合った後にしか動かない。特技は相槌と後出しジャンケン。
彼は窓に寄りかかって目を閉じ、最近抱えている問題についてまた思案し始めた。
窓の外で枯れ葉が渦を巻いている。風にされるがままに、同じところを回り続ける。冬だ。
あんな性格診断、やらなければよかった。
2022年11月30日、ジャイアントホール で Lv. 53 のときに出会った。おくびょう な性格。甘いもの が好き。
とくせい : じゅうなん
もちもの : スピードパウダー
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