O.P.E.N. 犯人に自供させる方法
上の写真は、世界でも有名な動作心理学者であり犯罪心理学者達4名にインタビューされるカナダ警察機構の警視正、ジム・スミス氏です(ちょうど中央にいらっしゃる方です)。
スミス捜査官は、FBIで研修し、犯人の心理にまで喰い込んで取り調べが出来るスキルを持っています。また、性犯罪捜査課(SVU)でも研修し、年若い子供の被害者から年長者の性犯罪者まで、エリート刑事として100%の自白をさせた本格的な心理捜査官です。
スミス氏がカナダのトップ警視正になった理由は、約10年前にカナダ国軍のトップ空軍大佐が犯した、連続女性暴行殺人事件を解決に導いた事と、中でも当該事件を、初めて取り調べた容疑者から、大体4時間40分程で、全面白状させた事が世界中の警察機構で有名で、捜査官研修に使われているそうです。
取り調べのビデオは英語でYouTube配信されています。また、この事件は、二件のレイプ事件、そして900点の下着盗難事件が継続したところから、殺人事件の手掛かりが見つかり始めた、と言う事です。
飛行機に乗って外遊する首脳や外国首脳は、ウィリアムス大佐の操作する飛行機に乗ったのです。
私は、この事件が起こった時、カナダのドキュメンタリーを見て、知りました。カナダのドキュメンタリーはカナダの国営放送、CBCのプログラムを観たので、スミス捜査官の事も知っていました。
このスミス捜査官の活躍は世界中の殺人課の刑事への研修プログラムに含められ、カナダ警察もソレを認めて、彼を警視正にして、捜査取調官研修教官として任命されたと言います。
題名の 「O.P.E.N.」とは、この捜査官の取り調べ方法を観たFBI取調官がスミス氏のルールをヒントに、犯罪者に自供させるために纏め上げた、取り調べのルールです。
取り調べをする際に、このやり方を含めれば、キチンと自供までガイド出来る、と言う事だそうです。
O.P.E.N.とは
●OPTIMISTIC OUTLOOK (楽観的な展望)➜イントロ
●PROJECT THE BLAME (別の人に責任転嫁させる事で自供を推し進める)
●EMPHASIZE THE TRUTH (真実を白状する事を強調する)
●NON-JUDGMENTAL (決め付けない)
上記4点を以て、犯人にも人権を与える事で取り調べが好意的に実施され、且つ、上手自供まで勧奨させる、とFBIは説いています。敵対する取り調べや汚い言葉を沢山口にして嘘ばかり言う対象から、そうではない、実は本当はこうだったのだ、という真の事実の証言を巻き取る方法、と言われています。
それでは、詳細を説明しますね。
OPTIMISTIC OUTLOOK (楽観的な展望)
犯罪者に対して、お前がやったんだな、という決めつけから会話を始めるのではなく、相手の権利を認めて好意的、且つ、親切な「良い刑事」の役をしながら(この場に悪い刑事は存在しないと思ってください)、犯人と思われる人物に、好意を与える。
刑事によっては、飲物や食物を振舞う。日本でもかつ丼をおごる刑事がいますよね。信用を得る為に、優しくしてやる刑事さん、いますよね。
そして、ここで、ルールを刑事がガイドします。
「俺は、基本的に君の言う事は事実、と考えているから、本当の事だけ、話してくれ。そうしないとイザ、という時に、君を助ける事が出来ないからね」。
カナダ警察機構のスミス捜査官は、先ず、本件のウィリアムス大佐に、自分のルールを説明しました。
「ラッセル、あなたには大佐という大切なお仕事があるし、軍隊基地での目もあるだろうと、警察機構側では、日曜の取り調べを特別に決めました。私はあなたをよく観察し、見ているのだとわかってもらいたい。結果的に、証拠や色々な理論的証言を以て、あなたを判断するつもりです。だから、先ず私には『正直』でいて欲しい。
このことについて、約束出来ますか?」
ウイリアムス大佐が約束する、と言ってから取り調べが開始しました。
また、刑事は、軍属などに対して、捜査対象に尊敬語は遣わないものだそうです。日本の刑事との文化的違いがありますね。
併し、捜査対象(容疑者)の権利を慮(おもんばか)って、謙譲してやるという意見を話す事で、人間心理学では、RECIPROCITY(相互対応する)という特性が人間学的に出て来ることを、スミス捜査官は知っていた、と言えるでしょう。
「他人はだれしも、ナイスに扱って貰うと、自分もナイスになる。厭な態度の他人には、嫌な態度しかとらない。人間てそんなものだ」。
本件の加害者が実は変態的性格を持った空軍大佐であることが、品格を以て捜査対象に「約束をさせる」事が凄く意味があったのです。
色々な意味で取り調べなどに慣れている大佐に、品位のある提案をすることで、大佐の礼儀を重んじるところや、地位へのプライドなど、他人を重んじてやる礼儀を見せることで、大佐自身が断ることが出来ないようにしたのです。
PROJECT THE BLAME (責任転嫁させる事で自供を推し進める)
日本ではどうか知らないが、欧米の刑事達は、嘘を吐く事が法的に認められています。
「だから、俺は君を信じてるよ。悪い奴じゃない筈だ。何か理由(わけ)があったんだろ?」
という言い訳のチャンスをあげています。
自供の関係図が見えて来る事で、
例えば被害者を出しに責任転嫁させて、
「あいつが俺を追い詰めるから」
とか、何らかの情報を警察側で確認させるために言い訳を勧奨することで、容疑者を庇うようなたいどをみせます。
EMPHASIZE THE TRUTH (真実を話す大切さを強調する)
真実こそ、大切な事である、真実こそ、謂わねばならない言葉だ、と言い続ける事で、刑事側の誠実さを印象付けます。
「君なりの真実を話してくれないか。証拠とかと一緒に見て確認するからさ。被害者を愛していたなら、真実を話す事こそ、被害者の望む事だよ」
などと、真摯に事実を追い求める所を見せる事で、犯人は人間心理学的に刑事を喜ばせたい気持ちが湧いて来て、嘘が吐けなくなるそうです。
NON-JUDGMENTAL(決め付けない)
どんなに取り調べに時間が懸かろうと、どんなに真実を追求する事を勧奨されようと、捜査対象を決め付ける事はしてはいけないとスミス氏は言います。
捜査対象を敬ってやり、何を言いたいのか本人に話をさせます。
事実ではない、と思われる場合は、
「先ほど、約束したとおり、本当の事を教えて欲しいと思います。被害者の前庭と駐車場にあなたの足跡があり、ポストからあなたの指紋が出ました。事実を話してください」。あくまで丁寧な話調です。
そして、沈黙されたら、一緒に黙って待つ
スミス警視正の「正しい犯人の導き方」は、現在の各国警察機構で模範となっています。
今世では、犯罪だけでなく、セキュリティ犯罪や盗難、ハッカーなどに至るまで、色々な生活の局面で、この「論理に基づいて白状させる方法」が使われています。
昔の様に、刑事だけの勘でずっと相手を責め続けるのは、いまや最善の方法ではありません。
相手の権利を認め、相手に自由をやり、少しずつ、攻めていく。
心にある善悪の気持ちや罪の意識に捜査対象が「自分のしたことに罪悪感を感じるようになるように」少しずつ攻め入ってく。
恐ろしいけれど、凄く役に立つ方法でもありますね。皆さん、どうおもわれますか?