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映画『ヘアスプレー』レビュー

いっぱい話したいことがある。

映画『ヘアスプレー』を観ました。

▼あらすじ(以下ネタバレあり)


1962年。アメリカ合衆国メリーランド州ボルチモアに住むトレイシーは、ダンスが大好きなビックヘアーで服のサイズもビッグな女の子。放課後の楽しみは地元の音楽番組『コーニー・コリンズ・ショー』を観ること。ある日、友人と番組を観ているとメンバーが欠員するので新メンバーのオーディションが行われることを知る。大好きな番組に出たいトレイシーは母親にオーディションを受けたいことを話すが反対される。しかし、父親が賛成し、オーディションを受けることに。オーディションの結果は残念ながら落選となるが、学校の居残りクラスでトレイシーとクラスのメンバー(黒人も白人もいます)がダンスしているところを番組の出演者であるリンクが目撃。番組が主催するポップショーの参加を勧める。会場に行ったトレイシーは居残りクラスで教わったダンスで注目を集め無事番組にレギュラー出演することとなる。しかし、白人至上主義のプロデューサーは、トレイシーの容姿や、番組での(月に一回のブラック・デーを)「毎日をブラック・ディーに」との発言が気に入らない。しかし、番組のスポンサーの商品であるヘアスプレーの売れ行きはトレイシーのおかげで好調に。そんなある日、居残りクラスで友達になったシーウィードから(黒人街での)パーティに誘われ、友人達と参加することに。パーティも盛り上がりきった頃、(パーティの主催者でありブラック・デーの司会者であるシーウィードの母親)メイベルから「ブラック・デーの打ち切り」を知らされる。それに違和感を感じたトレイシーはデモを提案しパーティの参加者達とデモを行う。そして、番組の生放送の日でありミス・ヘアスプレーコンテストの日、人種を越えたミラクルが起こる。最後まで何が起こるかドキドキするミュージカルムービーです。


▼60年代。それはレトロでポップでかっこいい音楽の時代。

2007年にこの映画が制作される前に、実は1988年にジョン・ウォーターズ監督よりヘアスプレーの映画が制作されていました。2002年からはブロードウェイで上演され、2003年にはトニー賞13部門にノミネートされミュージカル作品賞をはじめとする8部門を受賞してます。


ヘアスプレーはミュージカルムービーです。歌ったり踊ったりダンスナンバーからバラードまで様々な音楽が使われています。心躍るすてきなナンバーばかり。


この映画の舞台は私が大好きな60年代!!大好きな時代なのでいっぱい話したいことがあるんですが、その中でもとりわけ好きなのが、60年代の音楽!!


60年代のアメリカで流行ってた音楽といえば、

エルビス・プレスリー、ジャクソン5、マーヴィン・ゲイ。スティーヴィー・ワンダーもこの時代に歌ってます。

レトロでポップでかっこいい音楽の時代です!!


『コーニー・コリンズ・ショー』のシーンで司会者の後ろにヒットチャートが貼ってあるんですが、そこにもエルビス・プレスリーやドリフターズ、ディキシー・カップスなどの実際に60年代に活躍したアーティストの名前が確認できます。

そして、劇中で歌われてる音楽も60年代ちっくなんです。R&Bやドゥーワップ。そして、モータウンレコードのサウンド!!好き... 

R&B?ドゥーワップ?聞いたことない。流行ってないし分からない。って方、多いと思います。


安心してください。


(2007年作なので)ちゃんと最近のサウンドになってます。聞きやすいし耳に入りやすくなってます!!


例えば、

ラストの曲「You can’t Stop The Beat」一緒に歌いたくなります。(この曲、去年のFNSで歌ってましたね)

そして、1曲目の「Good Morning Baltimore」はYouTuberのKemioさんの動画で使われてました。

映画観たことない、70年代知らないって人でも、どこかで聴いたことある曲がきっとあります。


ステキな曲ばっかりなので、2006年にはヘアスプレーの曲を歌う『ヘアスプレー ライブ!』も行われたくらいなんです。アリアナ・グランデやダヴ・キャメロンが出演してました。衣装もセットも映画のままカラフルでアメリカンポップでかわいいのです!



▼この映画が抱える問題とBLM

私がイメージするミュージカルって豪華な衣装にセット、ロマンチックなシーン。迫力のある生歌にオーケストラピット。舞台の上はキラキラ憧れの世界なんです。


でも、実際に劇場に行くとちょっと違うんです。

席に座ってもそわそわして落ち着かないしどのシーンも見逃したくないから緊張してるし、なんというかすごく大変!(とくにメンタル)


舞台は確かにキラキラしてる。でも、なんか違う。
楽しいことばかりじゃない...(?)
いじわるな人(役柄)もいるし、悲しいことめっちゃ起こるし、フィクション(現実逃避)観に来たのに、現実かな(錯覚)、正直つらい。


でもね、ミュージカルって人生を観ることだと思うんです。
人生だから、辛いことも悲しいことも起こるんですよね。
辛いことがあるから、それを超えたときに楽しいと感じることができると思うんです。


ヘアスプレーはミュージカルムービーです。

悲しいこと辛いことあります。


印象的だった。デモに行く前にトレイシーと父親が話すシーン。

まず、トレイシーがこう話します。

「ベルマの目的はあたしを番組から降ろすことなのよ。
あそこまでやるなんて信じられない。」

「”ブラック・デー”は打ち切り。
自分たちと違う人間を締め出したいのよ。
黒人。中国人。おデブ...」

「”差別は消える”なんて、
信じてたあたしがおめでたかったんだわ。
”こうしたい”と本気で思ったら、親の元から巣立って、
闘うべきなのね」


これに父親がこう答えます。

「ママとパパの世界は玄関のドアまで、
だがお前ははるか先を見ている」

「正しいと考えることがあるなら、
古い人間は気にするな」

「こちらがお前から、学ぶよ」


主人公のトレイシーは様々な問題と闘ってます。

それは、人種差別や容姿の差別


例えば、
ポップパーティーのシーン。フロアでは白人も黒人も一緒に踊ってます。しかし、会場の真ん中にロープが張られていて、白人と黒人は別のエリアに分かれています。

ミス・ヘアスプレーコンテスト。コンテストに出場しているのは白人ばかり。(ブラック・デーが中止されたとしても黒人もコンテストに出てもいいのでは?)

さらに、よく見ると客席は白人ばかり。


私は、なんとなく昔の遠い国の問題には思えなくて、なぜか見たことがある... 既視感?ってやつ。

そう、思い出しました。「Black Lives Matter」です。

今年でしたね。


似てると思いませんか?

60年経っても変わってないんです。
人種差別は黒人だけじゃなく、アジア人に対しても容姿や髪の色、メイクまで言われることあるんです。
そして、今もまだ残ってるんですよね。



▼最後に

トレイシーは最初から最後まで
自分自身を忘れず、
問題に立ち向かっていった勇敢な女性でした。

そして、
いつもありのままのトレイシーでした。

映画を見終わったら、
明るい気持ちでハッピーでした。
どこまでも歩いていけそうな。

誰かと比べることはなんの意味もなく
ましてや差別するなんて意味がない。
大切にしたいことはオリジナルの自分でいること。

Written by アレキサンダー李乃 / Alexander Rino


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