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拝啓、モテなかった僕へ:プロローグ


19歳と2か月。僕は死んだ。

はじめて死にたいとおもった

あの頃、まだ僕が「ともくん」だった時。
周りに流され、翻弄されて、何者でもなかった時。
笑いものにされて、道化として周りの目線ばかり気にしていた時。
自分自身の心と体がバラバラで、何に笑っているのかわからなかった時。
僕は大学のキャンパス内に「悠久」と名がついた緑の人工芝と
春を感じさせるさわやかな青空の下で
人生ではじめて死にたいと思った。

周囲からの嘲るような笑い声と、名前もわからない好みでもない女を前に
僕は適当な理由をつけ、逃げるようにキャンパスを飛び出し
座り心地の悪い阪急電車の座席に腰を掛けたとき
ようやく呼吸をすることができた。埃のようなにおいがした。
震える手でガラケーから変更したばかりの真新しいスマホでLINEを操作し、
ゆっくりと元サッカー部のグループを開く。
今後飲み会をするだとか、いつか集まろうだとか、自分には興味の無い話題
で盛り上がっているようだ。
(ここがグラウンド・ゼロだ。)
自分の中の自分がそう語りかけてくる。その通りだ。

もちろん、これをすればどうなるかなんて理解はできた。
一度すればもう戻れないことだってわかっていた。
でもこうするしかなかった。こうするしか思いつかなかった。
大学4年間、社会人もいれたら人生約80年、このモヤモヤを抱いて
生きていきたくなかった。
だから今まで19年間の自分にサヨナラしようと思った。

そして僕は僕の手で

阪急電車は淡路駅に差し掛かる。僕はホームに降り立ち、
今まで乗っていた天下茶屋行きから
向かいのホームで連絡している阪急梅田行きに乗り換えを済ませる。
幸いにも席はガラガラで阪急特有の進行方向を向いた窓際の席に腰掛ける。
改めてスマートフォンに向き合う。
もう一度息を小さく吸いこむ。
LINEグループのメニューを開くと[退会]の文字を見つける。
おそるおそる右手の親指を近づける。
指が小さく震えているように見える。
ゴクリと生唾を飲み込む音が生々しく聞こえる。
(本当にいいのか。)
自分の中で最終確認が入る。ゆっくりと息を吐く。
細く、長く。試合前のルーティーンと同じように。
そして、僕は[退会]を押下した。

それからのこと、これからのこと

それから何が起こったか、なんて想像に難くない。
突然の退会にサッカー部からの個人LINEの雨あられ。
何度も何度も嫌がらせのように届くグループへの招待。
そして、メンヘラちゃんのような不在着信。
それらを僕は全て無視を決め込み、端からブロックをしていった。
もう決めたんだ。もう道化を演じる必要もない。
もうここには「ともくん」はいない。
だって死んだのだから。ご愁傷様。
大学内でも顔を合わせ、話しかけてくる連中も
一切取り合わなかった。
もうお前らにイジられてくれる「ともくん」はどこにもいないのだ。
せいぜいこの連絡も1週間もあれば収まるだろうと見積もっていたが、
幸か不幸かたった2日で連絡は止まった。
それでもよく持った方だろうと思う。
スクールカーストの最下層民というのはそんなものだ。

拝啓、モテたかった僕へ

それから僕は新しい友達作りに奔走した。
サークルに入ってない人、ひとりぼっちで授業を受けてる人、ちょっとヤバそうな人、正直誰でもよかった。
今までサッカー部という陽キャ集団にいた僕はクラスメートの中でも
勝手に人間関係が構成されて、勝手に上下が決まっていたから
友達の作り方を知らなかった。だから初めは苦労した。
同い年の男に話しかけるのに、めちゃめちゃ話題探したりした。
ナンパかよ、と今では思う。

それから一緒に授業を受けるような友達ができてきた頃、
元サッカー部からは元々いなかったものだと認識され始めた頃、
猛烈に襲い掛かってきたのは「モテたい」という衝動だった。
経験はあった。童貞ではなかったが、
自分はそれを「モテ」とは認識していなかった。
もっと俗っぽく言えば、中学時代にバイブルだった
「いちご100%」くらいモテたかった。本音だ。
そして自分には甘酸っぱい高校時代の青春なんてなかったが
それが悔しいと感じていた。
だからその倍、いや10倍、50倍は手に入れたいと思った。
性衝動はいつだって男性の原動力になるのだ。

長くなったが、
この本では、20点くらいだった自分が
30点くらいにパワーアップするために何をやってきたか。
そして、結果どうなったかについてまとめていく。
全ての男子たちよ。ぜひ参考にしてほしい。
青春はいつだって、目の前に転がっているものだから。






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