うどん屋で飲む
今日はうどん屋で飲む。
なんとこの県ではうどん屋で酒が飲めるのだ。
「うどんのトッピングをツマミにできる」
これを聞いただけで酒飲みはディズニーランドに行く前日くらいワクワクした気持ちになるだろう。
天ぷらに油揚げ、かき揚げにイカ天、ちくわ磯部揚げ……
考えるだけで頭の中にエレクトリカルパレードが流れてくるぜ。
ここでは丸天なんてのもメジャーなトッピングだ。
これは魚のすり身を揚げたもの。いわゆる、さつま揚げであるが、丸くて平たいフォルムはまるでそこに収まるべくして作られたかと思うほど、うどんの椀にぴったりである。
初手は丸天にちくわ磯部揚げ、……それからハイボールだ!
普段うどん屋でハイボールなんて頼もうものならお腹たぷんたぷんになるところだが、これなら頼めちゃうな。うれしい。すごい。
丸天が到着。しかしそこには見慣れた丸天と違うものが。
なんと、丸天を十字に、4つに切って出してくれているのだ。酒飲んでるのに丸いまんまをかぶりついても無粋だもんね。ありがたい。
さらに嬉しいことに、これが揚げたてなのである。
切ったあとに揚げてあるから、切断面まできつね色にこんがり。
なんなのこの気遣い。惚れてしまう。
しかも大根おろしまで添えてある。もう結婚してほしい。
相手が誰なのか。無生物なのか店員さんなのか分からないままうっかり求婚してしまっていたが、ここは夢の国なのであるからそんな気持ちになっても仕方ないのである。
揚げたてこんがり。ハイボールうめー。
大根おろしでさっぱり。ハイボールうめー。
ちくわの磯部揚げも大正解だ。
うどんにのせると、どうしてもしっとりとしてしまって
味わいが変わってしまうけど、こうして食べるとちくわと向き合うことができる。
「天ぬき」という天ぷらそばの食べ方があって、
そば屋では、そばのメニューをそば無しで食べることができるのだ。値段はそのまま。
昼からそば屋で飲んでるご隠居とかがやってるらしいが、憧れるだけでまだやったことはない。
いま、私は丸天うどんとちくわ天うどんの「ぬき」を注文しているのだ。上級国民になった気分だぜ。(ここはトッピング代だけでよい)
上級国民で思い出したけど、俺はさけるタイプのチーズの後半をさかずに食べることが、2回に1回程度あるのだ。上級国民だろぉ?
脱線してしまった。次の注文を考えないと。
揚げ物を頼んだから次はさっぱり目のものを。さらに、シメに向けたゴールまでの道筋を考えないといけない。
こういうときは「最後に何を食べたいか」から逆算して考えると良い。
シメの候補としては、ご隠居が最後にざるを1枚たべて帰る(正規料金を払ってソバを抜いたトッピングを食べた上に、追加でソバを頼んじゃってる! すごい!)のよろしく、かけうどんとするか、なんならざるソバにしちゃうか、軽めにおにぎりにするか......
「かき揚げうどん、お待ちどうさまです」
となりの席にかき揚げうどんが運ばれてきた。かき揚げがでかい。カップそばについてるやつと違って円柱形をしている。体積がある。半径の2乗×3.14×高さである。
「かき揚げうどんください」
別皿で運ばれてきたかき揚げに今すぐかじりつきたい気持ちをぐっと我慢し、うどんのほうにネギをのせる。熱いつゆでシュンとさせて甘くなったネギをこさえるのだ。のせ放題だ。のせ放題ではあるが適量がうまい。こういうところが私が上級国民であるゆえんである。
かき揚げさくさくもーぐもぐ。
おつゆに浸してじゅんじゅわー。
あっ、揚げ物がかぶってたな。
※このお話は事実をもとにしたフィクションですが、だいたい事実です。
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