Gmailも嫌がってると思う
6月14日(水)
うんともすんともである!転職活動の話です。
いくつかの会社に連絡したり応募したりしてみたものの、どこからもなんの返答もない。
朝起きてGmailアイコンをタップ、昼にタップ、ゲームの合間にタップ、夜ごはんを食べた後に、寝る前に……。いくら見ても受信ボックスには、エージェントからのおすすめメールばかり。もうなんでもいい、一言でもいいからなんかくれないだろうか。わたしは本当にここに存在しているのだろうかという気持ちにさえなってくる。
心を落ち着かせようとして、不眠症なのにコーヒーを2杯も飲んでしまった。これでは反対に高ぶってしまう。ということで、これを書いている。ベルソムラさま、わたしをどうか寝かしつけてください。
思えば前回の転職はとてもスムーズだった。
わたしはこの会社に入るのだと受ける前からそう信じて疑わなかった。
いくつかの会社の面接を「御社のことがだいすきなんです」という顔をしながらしっかりすべて練習台にして(ごめんなさい)、しっかり準備したうえで臨み、一度だけの面接でしっかり採用された。
しかし、今はあのときと同じくらいの熱量をもって絶対にここに入りたいと思える会社がない。大して思い入れのない会社で虚無の中働くくらいなら、もういっそ拙いなりに積み上げた10年のキャリアにこだわらずに、楽しそうと思えるようなところで派遣やアルバイトをするのもいいかもと思ったりもする。
けれど「社会人たるもの成長せよ!キャリアアップせよ!市場価値を高めよ!できないものは自己責任!」という世の中の圧や、この国で女性がキャリアを失うということの恐ろしさや、それなりに稼いでいた過去の自分が邪魔をして、なんだかんだ正社員の求人にぐぬぬと応募している。
こんな中で、仕事に関する本を読んだら落ち込んでしまうのではとも思ったのだけど、なんとなく読みたくなって『ここだけのごあいさつ』を手に喫茶ルビーへ。
ここのミルクレープはずしんと大きくて一層一層が厚い。フォークを通すとトコトコトコトコと指に伝わる。にぎやかで楽しい。ドトールのミルクレープも好きだけれどトゥロロロロという感じなので、思いがけずドトールが上品だと知る。
『ここだけのごあいさつ』は、言わずと知れた出版社であるミシマ社代表の三島さんが、これまでにミシマ社サポーターへのみに宛てていた手記を一冊にまとめたもの。
ちいさな組織で、あえて大きくはさせずに、しかし売上は確保し、おもしろいことを続けていくために、三島さんが一般論から外れて試行錯誤してきた(している)姿が浮かび上がる。
組織の多様性をゆるしてほしいという点にはとても共感した。
小さい組織では、所謂ホワイト企業に近づくことは到底難しい。休暇だとか手当だとかを実現するには人的にも資金的にもリソースが足りないのだ。けれど、そんな会社を社会はゆるさないし、従業員からも声があがったりして「言いたいことはわかるんだけどさ~」ということを何度も経験してきた。
小さい組織はどうしたって人で賄わなければならないので、それなりに無理はでてくる。だけど、整ってるかとかじゃなくて、ちょっと無理をしてでもはたらきたいという願いだってあるのだし、あったっていいのにな、と思っていた。それが楽しかったりもするんです。わたしは小さい組織のほうが好きだし(前職は5人だった)、わたしの夫も休みの日に申請せず好きで仕事をしていたりする。わたしは労務だったのでそれを咎める側なのだけれど。もちろん従業員としての権利は行使されるべきだけれど。
組織をあえて大きくしないということも、人が足りなくなれば採用せずに事業を縮小するということも、一般論からいえばありえないだろう。だけど、三島さんは、ミシマ社は、こんなにも楽しそうで、こんなにもおもしろい。ミシマ社のような会社がぽこぽこたくさん日本にあったら、たくさん存在できるような「スキマ」があったら、この国にももう少し良い風が吹くのではないだろうか。とにかく一律で線を引くことは楽だけれど、失うものもある。
と、読んでいて、わたしも一般論に絡め取られているなと思った。スキルアップとか成長とか市場価値とか。履歴書を豊かにすることって、ほんとうに必要だろうか。というか、市場価値という言葉をにんげんに当てはめるの、好きじゃないな。だってにんげんだもの。
とはいえ、この国の状況が状況だし自分を騙してでも賢い選択をしていくのが正解なのかもしれないけれど、それで失うものはなんだろう。一般のために、はたらきたいわけじゃない。お金のためだけに、はたらきたいわけでもない。もう少し「スキマ」を自分のなかに持ってもいいかもしれない。
とはいいつつも、社会保険って手厚いですよねとか有休っていいですよねとか考えてしまう。労務を担当してきたばかりに知識があるから余計にだ。この国はどうしてそんなにも勤め人になってほしがるんだろう。自営業だってフリーランスだって勤め人と同じくみんな働いてるのに、ひととして見ていないように思う。労働者として、一般論の向こう側を見ることは容易ではないぞ。
一応、Gmailアプリをもう一度タップしてみたけれど、新着メールなし。どうなることやら。