林美脉子『黄泉幻記』より『凍沱の河口』レビュー
人間が一つの生命である実感、またその生命の力強さは死の直前に現れる。冷たくなった亡者の手を握った時に、自分は生きているから体温があることを感じる。『凍沱の河口』はそのような温度を持っている。
私がそう感じたのは「死者達」とその世界と「母」とのコントラストが印象的だった為だ。
「地吹雪吹き荒れて」「音立てて凍る空知野の雪原」「死者たちが無言の氷柱」となっている、とんでもなく寒い世界は死の世界だろう。「河が三本あって 橋を三つ越えてきて」とあるから、三途の河の向こう側だ