ある夜
その夜、私はこの世界の設定を忘れてしまいそうになっていた。
私が生きている世界の重力や時間や正義や痛みやあらゆる設定をだ。
現実味が遠いところにいる。
コーヒーを飲みすぎたせいかと思いながら、鏡をみてみる。
こちらをみているのは女だろうか?
それとも目のある犬だろうか?
足の裏がとても冷たいようだけど、足の指が5本あることは不思議なままだった。
この世界が成り立っている姿は、もしかすると私がまだ見つけていないとあるたったひとつの言葉、もしくはセンテンスで崩れ去るかもしれないと思う。
崩れなくても、形を変えてしまうことは大いにありえるに違いない。
私の隣に眠っているのは誰だろう。
その人は今この世界にいるのだろうか。
この世界を崩すセンテンスを探しにいこうと思う。