シェア
夏川
2021年11月28日 00:40
三歩先も見えない地平線の彼方で、彼は遠く笑った。笑った、ような気がしていた。そんな雰囲気があった。……それは、確かなことだっただろうか。 黒い靄のような、逆光にも似たそれが彼の顔を覆い隠す。靄が現れる前の彼の顔は? ……笑っていた、はずである。 ──本当に? わからない。笑っていたかも知れないし、そうでなかったかもしれない。朧げなそれは、明確な形式を持って私に理解を促す。頭が朦朧としていた