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士業のタタミカタ_4

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税理士事務所の成り立ちの背景

同じように国家資格を基礎としていても、税理士事務所は他の サムライ業とは、儲けの構造というか成り立ちが大きく違っています。

その一番の理由は、顧客数の規模、業務量の膨大さ、そしてそれらの業務が必要となる「税の申告納税」の存在によるのだと思います。

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この表は、中小企業庁の平成30年6月28日に総務省と経済産業省が公表した、「平成28年経済センサス-活動調査」のデータを分析し、中小企業・小規模事業者数の集計作業をとりまとめたモノです。

事業者全体のうち、中小企業・小規模事業者は357.8万者、その占める割合は、99.7%で、小規模事業者だけでみても304.8万者、84.9%です。

この小規模事業者304.8万者には、単純にほぼその件数分の申告業務があります。(会社なら法人税、個人事業なら所得税) その申告を行うためには、業務に対する決算(最低限のまとめであっても)が必要ですし、その手前には「誰にとっても、後ろ向きで、手間のかかる、つまり面倒臭い会計帳簿、記録の作成」という仕事があります。

ある程度のサイズがある事業者であれば、経理部や管理部があり、担当者がいて、自前で処理をするのでしょうが、このセグメント・小規模事業者では、ほとんどが社長、事業主自身、その家族、フルタイムではないパートタイマーの事務職員、他の仕事と兼務の社員など、つまり専任の担当者を雇用するほどの仕事量が無いか、その余裕が無いか、もしくはこれらの両方の理由で、置き去りまたは後回しになるのが、経理、記帳業務です。

「記帳代行業務は無くならない。領収書のある限り。」

ある友人税理士の言葉ですが、その当時、パソコンの普及、自計化(顧問先が自社でパソコンで記帳業務をすること)が税理士事務所としては、進めるべきか、合理的になるけれど収入が減るのでは、と話題になった時期でしたが、友人税理士は、この言葉で「所詮、誰にとっても面倒臭い作業だから、この業務は無くならないよ。領収書がある限り。」と。当時としては、正解でしたが、いよいよ、領収書が消える(だけではなく記帳が不要になる)時代が近づいて来ています、が。 これまでの税理士事務所は、そんな背景を基礎として、こんな構造になっていました。

これまでの税理士事務所の「構造」

1. 小零細企業の個々に異なる状況に合わせて、領収書の整理から記帳を請け負って顧問報酬をいただく。
2. その異なる状況ごとにフィットするスタッフを雇用して担当を決める。
3. 担当者はお客様ごとの異なる処理に習熟し、家庭内を含む個別の事情を理解するほどに信頼が厚くなる。
4. 月次の試算表、年一回の決算は税理士が目を通して、決算の打ち合わせの段階で、決算内容、納税、次年度の見通しなどを協議して決算報酬をいただく。
5. その延長線上に税務調査の立会や、社長とその家族の個人の確定申告、相続税の申告まで、全体が業務エリアとなる。結果として、ご家族に関する相談、諍いの仲裁まで関わる時もあり、親族の結婚披露宴の主賓(かつては仲人)まで頼まれることも。

このような「構造」は、経理、税務を「丸投げ」された結果として、小零細企業とその家族を「丸抱え」することになる。それは、「面倒なことは先生(そう呼ばれることが多い)に連絡」となり、他の税理士を垣間見る機会を失い、タコツボ化した中に置かれ、数年付き合ううちに、あらゆる事を任せるような形になるため、他の税理士に変えることのスイッチングコストが高まって、一生の付き合いとなる。

税理士事務所側からみれば、それぞれのかなり微細なクセを紐解くように習熟して月次、決算を組むことは、職人芸的な技となってしまうため、属人的に固定した担当が必要となる。

単発な仕事と異なり、顧問報酬という定期的な報酬が、関与を開始してからは余程のことがなければ解約にはならないため、徐々に積み重なっていくため、先の予定がたち固定費をまかなえるので、担当者となるスタッフも増やして行くことが容易となる。

これらの事が税理士事務所は「安定して長きにわたり営業を継続できる仕事」として、税理士を目指す若者も多く、就職先としても選ばれ、金融機関などにも信頼される職業の一つとされてきた理由です。

そして、これらの強みとなってきた事が、タタミカタを考える時には、逆に大きなネックとなるのです。

(次回に、そのタタミカタを考える時のポイントを詳しく考えてみます。)

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鳥たちの宴の跡を見て、これが柘榴の木だと気が付きました。


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