広告動画のシナリオの作成法④世界観を構築する
【企業VPのプロが教える、広告動画・PV映像のシナリオ制作法】目的に合わせた構成・ナレーション原稿・台本の書き方を解説
6.シナリオの世界観を構築する
広告動画を制作する際に、すべてのケースで世界観の構築が必要なわけではありません。一般的なフォーマットで十分な場合はこの作業をスキップし、次の「広告動画のシナリオの作成法⑤」へ進んでも問題ありません。しかし、オリジナル性の高い広告を作りたい場合や、他の競合と差別化を図りたい場合、この作業を経ることで動画のクオリティが格段にアップします。世界観を構築することで、制作者全員が共通のイメージを持ち、一貫性のある広告動画を作ることができます。また視聴者に深い印象を与え、ブランドの認知度や好感度を高めることが可能です。
広告動画においてストーリーやコピー以外から伝わる非言語のイメージは無数にあります。各作業工程でこうしたイメージを少しずつ取り入れ、映像作品に落とし込むために必要な道標が「世界観」なのです。
では、具体的に何をしていけばいいか、以下で説明していきましょう。
企画意図を書く
まず企画意図を明確にすることです。企画意図は、広告を通じて伝えたいブランドのメッセージや目的を明示するものです。この意図が明確であればあるほど、制作チーム全体が同じ方向性で動画を制作することができ、統一感のある映像作品が仕上がります。
例えば、新製品の発売を告知する広告動画の場合、「製品がもたらす未来のライフスタイルを視聴者に提案する」という企画意図を設定できます。この場合、広告動画全体が未来志向のビジョンに基づいて構成され、視聴者に新製品が日常をどのように変革するかを効果的に伝えることができます。
その際、注意したいことは自分本位の視点だけで考えないことです。えてして企画意図に「売上アップを図る」や「かっこいい映像を作る」など、販売者や映像クリエイター目線の意図(願望)を書きがちです。それが悪いとは言いませんが、「何のためにこの動画を作成するのか」「この動画を見ることで視聴者にどうなってほしいのか」「この動画を見ることで社会がどう変わってほしいのか」など、視点を顧客や社会全体まで広げ、考えるようにしましょう。
作品のキーメッセージを書く
次に、広告動画のキーメッセージを短い言葉で表します。キャッチコピーと考えてもらってもいいでしょう。違う点と言えばキャッチコピーは、広告内で使用され、消費者へ直接メッセージとして伝えるものであるのに対し、キーメッセージは決してその言葉自体が動画の中で使われることはありません。
例えば、サステナビリティを推進するブランドの広告動画で「未来のために今できる選択」というキーメッセージを設定したとしましょう。そうすれば、ナレーションなどで直接、訴えなくても「二つの商品から1つの商品を選ぶ手」や「枝分かれした道」などのイメージ画像を挿入することで「選択」というメッセージを映像に取り込むことができるようになります。
作品のキービジュアルを決める
次に先ほど設定したキーメッセージから連想されるキービジュアルを決めておきましょう。キービジュアルとは、広告動画全体を象徴するイメージやデザインです。予算に余裕があればプロのデザイナーに発注するのもいいでしょう。が、たいていの場合はキーメッセージで策定した単語をインターネット上で画像検索するだけで十分です。おそらく無数の画像が出てくるので、その中から自分のイメージに最も合うものを選びましょう。また、今ならChatGPTなどの生成AIを活用し、「××(キーメッセージ)」からイメージできる画像を作成してください」とお願いするのも良いでしょう。
例えば、「未来」というキーワードからイメージできる画像は「ロボット」から「宇宙」まで幅広くあります。また、同じ「宇宙」でも広い「銀河系」なのか、「地球の俯瞰図」なのか、「CGっぽい画像」なのか、「漫画っぽいイラスト」なのか、さまざまです。抽象的なキーメッセージをなるべく具体的な画像として共有しておけばこの後の映像作成段階でブレや認識の相違を生む確率が大幅に削減されます。
世界観を作成するメリット デメリット
こうした世界観を構築しておくことでシーンの切り替え時(トランジション)にメッセージに即した写真を使用したり、イラストやBGMを細部に散りばめることができ、広告動画としてのクオリティがぐっと高まります。さらにこうした非言語のメッセージを動画で伝えることで消費者の深い部分にまで訴えることも可能です。
ただし、かなり専門的でクリエイティブな領域になるのでこの作業をすることで撮影・編集作業などでの手間が増える場合が多々あります。予算や撮影日数、スタッフの力量なども考慮しつつ、世界観構築をするようにしましょう。
またご自身ではイメージが湧かないという場合は企業系映像シナリオライターに問い合せるのも1つの手段です。貴社の課題や事業フェーズ、目的に合わせ、複数パターンを提案してくれることでしょう。
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