
若くて女性、ということのパワー
中学のころ、歴史の先生に言われて忘れられない言葉がある。
「あなたたちに覚えておいてほしいのは、若くて女性である、ということはものすごいパワーがある、ということです。」
この言葉にどのような印象を受けるだろうか。
中学生当時は、若くて女性だと、世間にチヤホヤしてもらえて何かと得である、という意味に捉えていた。
リベラルな女子校で、こんなことを言うのか、と少し驚いた記憶がある。
しかし、あの言葉は実は違う意図で発せられたのではないかと思う。
私は現在27歳。これを若いとするかは人によるだろうが、これから書く文章は、とりあえずお茶の間に出てきたら若い女性に見える感じの人が書いた、という体で読んで欲しい。
↓↓
先日、共同親権を廃案にするための国会前デモに参加した。
寒い雨の中、出掛けていくのは心が折れそうだったが、"友人と一緒に参加して、終わったら一杯やろう"、ということをなんとかモチベにして向かった。
デモに参加していると、テレビカメラが現れた。案の定TBS。こういう時取材をしにくるのは決まってTBSだなあと思う。
そのうち、ディレクターが私に声をかけた。
あなた、当事者ですか?と。
返答に詰まる。「共同親権の当事者」ってなんだよ、そりゃ将来的に当事者になるかもしれないけど、共同親権の当事者とは??
やや的を外したように思える問いかけに呆れつつも、(そりゃこれから報じるんだもんな)、と自分を納得させ、会話の中からおそらく「DVの被害などに遭って、実際に困っている/いた張本人ですか?」という意味だと解釈して、応対する。
たぶんマスコミが欲しいであろう、わかりやすいエピソードとしての"DV"は、私は受けていない。が、過去、家が緊張感で満ちて、安全ではないと感じられ、心理的負荷を感じることはたくさんあった。親に対し、別れないの?と聞いたことも、ある。
ディレクターの要望は、顔出してインタビューを受けて欲しいというものだった。
今や、テレビのインタビューに答えるということは、放映時間帯だけで完結しない。
テレビ局のニュースサイトに動画として残るし、そのスクショがネットに出回って、Twitterでの攻撃対象になるのは事実だ。
また、私はそれほど法律に詳しいわけではないから、あまり共同親権について語れないかも...と思います、初めは断ろうとした。
しかし、若い人が来ているということを伝えたい、そのためには出て欲しい、というディレクターの熱意と、
また、DVから逃げている最中の""当事者""はインタビューを受けるのが相当なリスクであること、
お茶の間にいるのは同じように「よくわからない人」だから小難しいコメントはいらないこと、
さらに私は、普段の生活ではTBSラジオに生かされている(笑)ので、ここはインタビューを受けてTBSへの恩を返すか!と思い、
マスクをつけたままにすることを条件に、インタビューを承諾した。
撮影しても編集段階でボツになることもざらにあることは理解している。それはそれでありがたい。
さて、これはもうテレビの作法なので仕方ないが、欲しいコメントは事前に打ち合わせがある。どの辺を言って欲しいのか、なんとなく察して、ここはもうテレビ局の望むコメント、使いやすい素材になろう!覚悟を決める。
なぜなら、取材する皆さんのやりたい報道と、自分の意図はあながちずれていなかったからだ。
これ、OA流れたら家族にバレるかな、ネットでスクショ流されて、やれブスだクソフェミだ、と叩かれるかな、と苦笑いしながら、キャスターに対峙した。
しかし、しかしだ。
いざインタビューになると「思ったようにしゃべれなかったな」というのが本音である。((養育費を慰謝料と言い間違えたし。カットして欲しい
でも多分、こんな法案が通ってしまったら、結婚なんてマジでリスクですよね?!※
という、
この少子化の中、若い女性が結婚を忌避しているぞーーーー!!(大変だーー!)という発言箇所が切り取られるだろうし、よしとする。
※私をよく知る知り合いから「お前www共同親権が通ろうが、廃案になろうが、どのみち子供産む気無いだろwww」というツッコミは入るかもね。
ここで冒頭に戻る。
若くて女性であることのパワーとは、性的に魅力があり、人目を引いて、だからカネになるし、広告にもしやすくて、経済的価値があるということ。
それもきっと解のひとつだが、それだけじゃ無いのかもしれない。
多分、私が若く、女性でなかったらディレクターは声をかけなかっただろう。
それはエイジズムではなく、お茶の間にわかりやすく、これから結婚するかもしれない人(※限りなくしない)が、
こんなにこの法案に不信感と不安を抱いているよ、という発言が伝わりやすい素材として、私が適任だったから。
私は若くて女性である、というだけで、全国ネットの民放で、自分の意見を拡散できるという「権力」を得たのである。
10年以上経過して、歴史の先生が放った、呪いとも祝福とも受け取れる言葉の意味を、ようやく得た気がした。
果たしてこのインタビューがオンエアされるかは謎です。正直、怖くて見れませんw
0526追記
私のインタビューはOA上ではカットされてたそうです。ホッとした反面、なんだかなぁという気持ちになりました。