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ド貧乏スイカ事件
21歳、私はオーストラリアにいた。
そしてお金に困っていた。
いや、困っていたなんてもんじゃない。窮地に立たされていた。
1年間の留学中にカナダからオーストラリアに移動してきのだが、この2か国では物価が倍近く違う。500mlのコーラが約350円。恐ろしすぎる。
(イメージがしやすいようにあえて日本円で説明させていただいております)
さらに不幸は続くもので仕事はなかなか決まらず、ついに私は1週間を約500円で過ごさなくてはいけなくなった。普通に考えて、7日×3食を500円で賄うなんて不可能に近い。
しかも見切り発車でオーストラリアに来たものだから、頼れる人もいない。
友達もいない。仕事もない。たった一人の生活。
きらきら太陽が降り注ぐ街の中で、私は意固地になり一人でも生きていけるんだと汗を垂らして地面を踏みしめていた。
そんなひもじい時期を過ごしていたある日、週に一度の買い出しのためにスーパーマーケットへ立ち寄った。さっさと買い物を終えようとしたときに、ふと目に留まったのは真っ赤なスイカだった。
「あまいもの、食べたいな。」
そんなもの高くて買うお金なんて端からない。
わかってる。
わかっていたけれど丁寧に4分の1にカットされ、
煌々と赤く輝く禁断の果実に、私は思わず手を伸ばしてしまった。
パーンッ!!
大きな音が店内中に響き渡った。
手に取ったはずの輝く果実は無残にも赤い汁をまき散らし、床に転がっていた。
まるで人を殺めてしまったかのような光景。
慌てて駆けつけてくれた店員の声で我を取り戻した。
馬鹿の一つ覚えみたいに必死で「ソーリー」を繰り返し、近くのレジへ走る。今週のお金は全てぐちゃぐちゃの赤い塊に注ぎ込んだ。
目を奪うほど赤く輝いていた禁断の果実はもうどこにもない。
家路につくまでの間、「日本に帰ったら絶対このことをネタにしてやるからな!!!!!」と決意し、
赤いとこも、
白いとこも、
緑のとこも、
全部むさぼって食べた。
こういう時にわけのわからない笑いの野心を燃やせるのは私の最大の強みかもしれない。
願いかなって帰国後、私のド貧乏スイカ事件は友人達の爆笑をかっさらった。
ずしりと重たいレジ袋を提げて歩いたあの日。
血がにじむほど唇をかみしめて帰ったけれど、涙を流しながら笑ってくれた友人のおかげで21歳の私も報われたってもんだ。
written by: 美波すみれ
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