
夢ならばどれほど良かったでしょう。
私はパーリーピーポーにはなれない。
そう思ったのは大学生の時だったと思う。
初めて先輩に連れられてクラブに行った時、浴びるように酒を飲み爆音の中でその場をぴょんこぴょんこする友人や先輩を見て、私にはできないと思った。
耳をつんざくような音と、それを言い訳に至近距離で獲物を狩りに行く獣たち。
ちなみに言うとクラブではその場で片手をあげ、小刻みにジャンプすることを「踊る」というらしい。私の知ってるダンスではないことは確かだ。
誘ってもらった手前、つまらなさそうにするわけにもいかない。どうにか見よう見まねで音楽に乗ってみるも上手く乗れず、ダンスをやっていた私は
「リズムがずれた。」やら
「あ、この曲大会で踊ったな。」やら
余計なことを考えてしまう。根が大まじめ人間なのでどうも理性が吹っ飛ばせないみたいだ。仕舞には踊り狂ってる人々を見て
「この人たちはどんな気持ちでいま飛び跳ねてるんだろう。」
と考え出す始末だった。
「酒が足りないんだよ!」
と見るも無残な先輩が話しかけてきた。
「いやいや、そんな汗だくになることあります???」
と冷ややかに突っ込んだが、私の声は言うまでもなく爆音にかき消され、
「飲むぞー!!」
という先輩のガラガラ声を皮切りに、その場にいた数人でテキーラを何杯も煽った。
上向いてテキーラを飲み干し、正面向いてレモンを齧る。
テキーラ、レモン。
テキーラ、レモン。
テキーラ、レモン。
素朴な疑問だが、なぜテキーラ飲むときは決まって円になり「ウェーイw」と言いながら乾杯するのか。まぁ、例に漏れず私も同じことをやっているのだけど。
結局、朝になるとテキーラ組は全員床に転がりどっ潰れていたらしい。
そりゃあれだけ飲めば当たり前だろう。
私?
私はちゃんと家のベッドで寝て一限から授業に行きましたよ。
みんなが上向いて飲んでる間に一人だけ下向いて排水溝にテキーラを流し、
レモンだけをひたすらに齧ってたからね。
ほら、女の子は潰れちゃダメだって近所のおばあさんが言ってたしさ。
胸に残り離れない、苦いレモンの匂い。
雨が降りやむまでに帰りました。
written by:美波すみれ
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※美波すみれが書くエッセイは事実を元にしたフィクションであり、
そもそも全てがフィクションである可能性も大いにあることをここに記しておきます。
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