目覚めたらそこは停車場だった
大学は都内、といっても23区外のある地域まで通っていた。
小中学校は地元の公立。高校は都心部の私立。
大学生になり初めて1時間以上かけた通勤をすることになったのだ。
当時から体力はなかったが若さゆえのガッツはあり、8時台の1限があっても前日に夜更かしをよくしていた。
地下鉄が私鉄に乗り入れているタイプの路線だったが、行先によっては途中駅が終点となり、同じホームに来る別の電車に乗り換える必要があった。
ただ、ターミナル駅で乗客が大勢入れ替わるので座れないことはめったになく、よく睡眠時間にあてさせていただいていた。
なによりぼんやりした頭でも乗り換えができるのでとても便利だったのだ。
その日もいつも通りに爆睡。
が、なんとなくの違和感に目を覚ます。
電車が止まっている。乗客は誰も乗っていない。かつ車内も暗い。
なんなら快速的な電車がすぐ脇を通過していく。
寝起きの脳みそをフル回転させてたどり着いた答えは
「車内に取り残されてるー!」
終着駅のすぐ近くの停車場にぽつねんと置き去りになる電車内の私。
有事(?)の際には意外と冷静になるもので、「はてさてどうしようか」とケータイを取り出すと同時に人の気配。
振り返ると車掌室から車掌さんが出てきたではないか・・・!
「あの、降りそびれちゃったんですけど」
恥ずかしながらも告白する20代に、珍しいことでもないのか車掌さんはこともなげに言った。
「15分で折り返すんでそこで降りてください」
「そんな殺生なー!」
とエコー付きでこだまする自分の声(脳内)
というわけで15分後。
「別に寝過ごしたわけじゃありませんけど?」という顔で始発駅ホームに降り立つ私を、不思議に思った人もいただろう。
その当時は自業自得の笑い話として終えていた。
が、よく考えると終点で客が降りたかどうかのチェックって車掌さん(駅員さん?)がやるべき業務なんじゃなかろうか?
周りに詳しい方がいないので真相は不明だが、バスで寝過ごした乗客が車庫に閉じ込められたニュースを耳にすることもあるので、世が世ならニュースになる事案だったのでは?と思ったりもする。
とはいえ、何事もなかったからこそ、いまなおオモシロエピソードとしてこすらせてもらっているのは、こちらの話。