終わり、そして始まり 2(二度と会えない)
会社を早退した私は、家へ帰る電車の中で携帯に表示されているFacebookのメッセージを何度も読み返した。
小さい頃、夜中に家の隅で「マーマー、マーマー」と泣き叫んでいたことや、サンタクロースに、ママの所に行きたいと、お願いしていたことなど、昔の記憶が蘇ってきて、心を締め付けてきた。
母の訃報を知らせてくれた妹の芽衣(仮名)。この知らせで、自分に弟妹がいることを知った。
芽衣になんてメッセージの返信をしようか?電車を降り家に着いてからも、しばらく考えていた。
「あなたのお母さんこと、私もお母さんって呼んでいい?」
メッセージを返信した。
しばらくして芽衣から返事が帰ってきた。
「もちろん、いいですよ。」
嬉しかった。
聞きたい事、話したい事、たくさんあった。そして、何ともしがたい抑えきれない母への思いを、まだ会ったこともない芽衣にぶつけてしまった。
そのメッセージのやり取りで、母の新し苗字が分かり、また、直樹という弟、芽衣にとっては兄がいることも知りました。一人っ子として育った自分に、血の繋がった弟妹と呼べる人がこの世に存在していたことが、もの凄く嬉しかった。
芽衣とのメッセージのやり取りから、母がどうな人だったか思いを巡らせならが、日付が変わったころ、布団にもぐった。
本当にこれでもう、母には会うことは叶わないのか・・・。
母が私の前からいなくなって半世紀、やっと母に関係する人と繋がったのに。
父が逝った時も、小さい私を育ててくれた祖母や祖父が逝った時も、私は涙を流すことはなかった。
でも、母の死だけは・・・
母の顔も、母の声も、母の匂いも、母の感触も、全て忘れてしまった私ですが、この夜、声を押し殺して、初めて泣いた。