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”殴ってきたインド人” ~世界一周旅日記~ インド編 【第六章:第1話】雲と地平線の間

これまでの旅日記はこちらをご覧ください↓


6/20(殴ってきたインド人)

朝5時30分

僕は、今、インドとネパールの国境地点にいる。


これから国境をこえ、
ネパールを出国し、
インドへと入国する。

インドへ入国すると、
インドの入国管理官が手招きしている。


僕が近づいていくと、
彼は手を合わせて
「ナマステ」
と言った。

僕も「ナマステ」と答えた。


パスポートを受け取った管理官は、
「いい写真だ。」
と言った。

僕は
「そうでしょ。」
と答えた。

彼の助けを借りながら手続きをすると、
手続きはすぐに終わった。


その後、談笑していると、
僕のギターケースを見て、
彼が、
「それはギターか?それともシタール(←インドの楽器のこと)なのか?」
と聞いてきたので、ギターです、と答えた。

僕が、
「これからバラナシ(←インドにあるヒンズー教の聖地の町)まで行きたいのですが、
そこに行くためのバス停はどこにありますか?」
と聞くと、
親切に教えてくれた。


(あれ、こんなもんか?)
(インドの旅はもっと大変なはずじゃないだろうか?)
(気合を入れすぎていたのだろうか?)

しかし、この後、
インドの手痛い洗礼を受ける事になる。

僕は、
教えられた通りの道をバス停に向かい歩き出した。


途中何人かの客引きが声をかけてくる。
僕は客引きを無視しながらバス停に向かった。


バス停につくと1人のインド人が話しかけてきた。

「バラナシへ行くのか?」

「そうだ。」
と答えた。


彼は、

「バラナシへ行くバスは本数が少ない。
ツーリストバスで600ルピー(1ルピー=2.5円程度)で行くことができる。
ローカルバスは400ルピー。
しかしローカルバスは朝9時に発車して、到着するまでに14時間の時間がかかる。
ツーリストバスなら8,9時間くらいだからツーリストバスのほうが良い。」

と親切に教えてくれた。


「バラナシ行きのバスはどこで待てばいいですか?」
と聞くと、
その場所を教えてくれた。

彼の友達の2人も寄ってきたので、
しばらくそこで雑談をしながらバスを待つことにした。


雑談もひと区切りついたころ、
僕は、もう少し情報収集してみようと思い、
まわりをうろうろと歩き出した。

すると、現在、客が乗り込もうとしているバスを見つけた。


その時、なんだか、僕の後ろに誰かがついてきている気配がした。

(なんかおかしい。)

僕は自然に早足になった。


バスのところへ行き、
運転手に、

「バラナシへ行きますか?」

と質問すると運転手はうなずいた。

(やった。早くもバラナシ行きのバスをつかまえた。)

僕は、運転手に

「バラナシまでいくらですか?」

と質問した。


すると、
後ろから大きな声で、

「600ルピー」

と叫ぶ声が聞こえた。


後ろを振り返ると、
さっき一緒に雑談していたインド人3人組がこちらに向かってきている。

再度、運転手のほうを見ると、
運転手は小声で、
「172ルピー」
と言った。


とたんにインド人3人組みが大声ですごい剣幕でわめきちらしながら、
運転手にくってかかった。

僕は、
運転手に向かって、

「分かった。
僕はこのバスに乗る。
すぐ荷物を取ってくるから待っててくれ。」

と言い、
3人組と運転手の争いを横目に荷物を取りに走った。


荷物を置いてある場所まではわずか20秒ほど。
荷物を全てかかえ、
振り返ってバスの方を見ると、
バスの乗車口を3人のインド人が力づくで締めようとしている。

僕は荷物をかかえて、
急いでバスのところまで走って戻った。


着いた時には、
すでにバスの乗車口は完全に閉じられていた。
乗車口をたたいても乗車口を開けてくれない。

そして、すぐバラナシ行きのバスは出発してしまった。


僕は、
「何するんだよ。お前ら。何であんなことやったんだ。」
と不満をぶつけた。

インド人3人組は、
「あれはバラナシ行きのバスではない。」
と平然な顔をしている。


「嘘つくな。運転手はバラナシ行きだって言っていたぞ。
もう自分でバスを探すから着いてくるな!」

そう言って僕は自分でバスを探し始めた。
しかし、3人組の内の1人のインド人が横にぴったりついてくる。

「着いてくるなっていってるだろう。どっかにいけよ。」

そう言っても、彼は、

「バラナシにいきたいんただろ。」

「バラナシにいきたいんだったらお前はさっきの場所で待つべきだ。」

「ここのバスは、全部俺達が管理しているんだ。
だからお前は俺達からバスチケットを買わないとバスに乗れない。」

と言いながらついてくる。


しばらくいくつかのバスを探し、
探しはじめてから4台目のバスの運転手に、
「バラナシ?」
と聞くと、運転手はうなずいた。

(よし、見つかった。)

そう思い、
荷物を背負ったまま、
乗車口からバスに乗り込んだ。

出発するまでは時間があるらしく、
乗客はまだ1人も乗り込んでいない。

バスの最前席に行き、
荷物をバスの中に下ろす。

そしてバスのシートに腰を下ろした。

すると、
さっきのインド人がバスの中にまで入ってきた。

「だから、ついて来るなよ。出て行けよ。」

そう言って、
僕は、
運転手の方を向き、
「バラナシまでいくら?」
と聞いた。


とたんに、
後ろから大きな怒鳴り声が聞こえた。

「お前はなんで分からないんだ。
ここのバスは俺達が管轄しているって言っているだろう。
さっきから何度も言っている。
さっさとこのバスから下りろ。」

というような意味の言葉をわめいている。

(なんで、そこまで言われなきゃいけないんだ?
あいつらが邪魔しなければ、
今頃はバスの中で流れる景色でも見ているはずだったのに。
そして、まだ邪魔しやがる。
しかも、こっちは悪いことをしていないのに、
なんで喧嘩腰で怒鳴りつけられなければいけないんだ?)

抑える怒りの限界だった。


僕はインド人に、
「何を言ったんだ。
何が言いたいんだ、お前。」
と叫んだ。


インド人はなおもわめきちらしている。

僕は席から立ちあがり、
インド人のほうへ歩いていった。
インド人の正面まで行き、
顔を近づけてインド人の目をまっすぐに見た。

「お前、高い値段をふっかけてコミッションが欲しいだけだろうが。
あっ?違うのか?
出て行けっていってるだろうが!」
僕は、
大きな声で怒鳴りつけた。

インド人が怒鳴りかえしてくる。
「お前は俺達のところでチケットを買わないとバスに乗っちゃいけないんだ。
そんなことも分からないのか?」

「お前らのところでチケットなんか買うか。さっさと出て行け。
今すぐ出て行け。さあ、出て行け。」

インド人が、
かぶっている帽子を脱ぎ捨ててバンと床にたたきつけた。
そしてこう言った。
「お前、俺と喧嘩したいのか?」


僕は、力を込めて、
インド人の右腕をつかんだ。


再度、インド人が怒鳴る。
「このバスは俺の親父のバスだ。お前は親父の許可がなければ
バスに乗ることもできないぞ。」

「じゃあ、今すぐお前の親父をつれて来い!ついでに警察もつれて来い!」
そう叫ぶと、
少しインド人は、引き下がった。


インド人が引き下がったので、
僕は、インド人に背中を向け、
バスのシートの方へ向かった。

運転手はやさしい笑顔で、何事もなかったように、
「まあ、シートに座りなさい。」
と言ってきた。

僕は、シートに腰掛けて質問した。

「僕の荷物はどうした方がいい?
バスの中においておくのが邪魔なようなら、
バスの上に荷物を上げるけど。」

「バスの上に荷物を置くと、荷物が道路に転げ落ちるかもしれない。
ここの方が安全だからここに置いておきなさい。
ところで、奥さんは一緒じゃないのかね。」

「奥さん?いやいや、1人旅です。」

穏やかな雰囲気の運転手と話すにつれて、
怒っていた気持ちが治まって、
笑顔も出せるようになってきた。



運転手は空を指差し、笑いながら、
「ベリーサマー」
とTシャツを手でつかんで暑そうにパタパタしてみせた。

「イエス、ベリーホット」
と僕も答えて笑った。

そんな状況を見て諦めたのだろう。
先ほどのインド人はいなくなった。


一息ついていると、
ふと、
先ほどのインド人3人組がヨーロッパ人のカップルを案内しているのが見えた。

バスの運転手がこちらを振り向いて、
「友達じゃないかね?」
と言った。
「そう、あるべきだろうね。」
そう答えた。


運転手は、
こっちへ来い。こっちへ来い。
とヨーロッパ人のカップルに向かって手招きをしている。

ヨーロッパ人のカップルは、
全くこちらに気がつかない。
(このままでは彼らは騙されてしまう。)
僕は、
バスの窓から身を乗り出し、
「ヘイ!バラナシへ行くのか。それならこのバスだ。」
と叫んだ。

とたんにインド人3人が走ってきた。

そして、窓の下のところへやって来て、
「何を言いやがった!コノヤロー!」
と腹から絞り出すような大きなガラガラ声で、
僕に向かって叫んだ。

僕は、
「黙れ!別に何も言っていない。」
と答えた。


その直後、
先ほど、
僕と喧嘩をしそうになったインド人が、
僕の顔面をめがけてパンチをくりだしてきた。

意表をつかれた。

(うぉっ)

と思いながら、
僕は、バスの窓から顔をひっこめた。

インド人のパンチは空を切った。


僕は、
3人組に向かって、
両の手のひらを両肩の横に広げて、
「ベッ」
と舌を出した。


ヨーロッパ人のカップルがバスの中に入ってきた。
女の方が、
「あいつら狂っている。」
と言った。

僕は、
「ああ、あいつらは本当に狂ってる奴らだ。」
と答えた。


そしてすぐに、
「バラナシまでのバスの料金は172ルピーだ。」
と教えた。

男の方が、
「welcome to india!(これがインドなんだな。)」
と言った。

僕は、
「yes,welcome to fuck'n india!
(ああ、大変なインドへようこそ、だね。)」
と答えた。


それから数分後、
バスはバラナシへ向けて出発した。


夕方6時
バラナシに到着した。


画像1

バラナシの道


ここバラナシには日本人バックパッカーが集まる、
クミコハウスというゲストハウスがある。

このゲストハウスは、
今まで何度も日本のテレビに取材され、
素樹文生が書いた「クミコ・ハウス」という本まで存在するような
有名な僕たちバックパッカーの間では伝説のゲストハウス。


クミコハウスに着くと、
くみこさんが、
「シングルルーム?」
と聞いてきた。

僕は、
「いや、ドミトリールームでお願いします。」
と答えた。
(ドミトリールームとは、
1つの部屋にベッドがいくつも置いてあり、
皆で共同で寝泊りができる部屋のこと。)

チェックインする前に、
注意書きを読むように言われた。

要約して書くとこんな感じ。

---------------------------------
日本人の心はきれい。
とってもやさしい。
赤んぼうみたいにやさしい。
やさしい人、神様のすぐ近くです。
やさしいの心はいい事。
赤んぼうの心、悪いことではない。
けど、大人になっても、赤んぼうみたいに動いたらだめ。
やさしい心があっても、
どっちが良いか、どっちが悪いか分からないから、
困ってます。
だから、日本人の旅行者が死んでいるが、
死んだ人が見つからないと、
いつまでも行方不明になってる人が多い。
日本の国の常識、とっても正しい。
他の国よりも正しい。
まちがいない。
だから、他の国に行ったら、
だまされる人やどろぼうにあう人がとっても多い。
他の国の人は、
しっかり分かっているから、
旅人になってからは、
よく感じるようになって、
どうすればいいのか、を分かっています。
だから問題があまりないです。
日本人の心はやさしいのはいい事。
だけれどすぐに信用して動いたら問題になります。
このことをよく考えて。
今から30年前、日本人を守るつもりでくみこの家ができました。
これがくみこの家の心である。
その心を持って歌があります。

『歌』

毎朝毎朝早く起きて
くみこの家の屋根より
朝日の姿、みんなで見よう
くみこの家の歌を歌おう
東の空は涼しい風
ガンジス川の涼しい流れ
心をひらいてみんなで褒めよう

毎朝毎朝早く起きて
くみこの家の歌を歌おう

(この歌は長淵剛さんが泊まっていた時、
みんなで作った歌です)

------------------------------------

画像2

ガンジス川を眺めるインド人


僕は聞いた。

「長渕剛も泊まってたんですか?」

「あの子も泊まってたよ。
でも今は来ない。
皆、有名になると来なくなる。

あの子もギター持って旅をしててね。
あの子もドミトリールームだったよ。

あの頃は、チェックアウトの時に自分の写真を
思い思いに部屋の壁に貼って、去っていくのが流行っててね。

あの子がチェックアウトしてだいぶ経った時に、
壁の写真を見た日本人が、
『この人、今、日本で歌を歌ってますよ。』って。
『えー。そんな子いたかな?』
って、その時は思い出せなかったんだけどね。」


そしてくみこさんは窓の方に僕を手招きした。
窓からはガンジス川が見える。

「ほら、あそこ見てみ。
2つの青いボートの右側。」

ボートの右側に白いものが見える。

「なんですか?あれ。」

「死体だよ。流れてきたのかね。」


よく見ると、ふくれあがった人の死体だった。
その横の2つの青いボートの上では、
死体を気にすることなく、
インド人がボートの整備をしていた。


「気をつけないといけませんね。」
と僕が言うと、
くみこさんは笑った。


ドミトリールームに行くと、
5,6人ほどの日本人バックパッカーがいた。


<次号の旅日記は12月22日です!>

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