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”日本人は強いんだぞ!!イメージ推進計画” ~世界一周旅日記~ バングラデシュ編 【第六章:第7話】雲と地平線の間

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コックスバザールで少しゆっくりした僕は、
コックスバザールを離れ、
セントマーティン島という島に行くことにした。

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コックスバザールで会った人たち


その島はとても小さな島で、
たった1日外国人が滞在するだけで、
島全体に外国人が来たことが知れ渡ってしまうのだそうだ。

今は、
シーズンじゃないので見れないけれども、
シーズンには、
海亀が産卵に来たり、
時々、イルカ等も見れたりするらしい。

ここまで一緒に行動してきたアレックス。
アレックスは、
違う場所を目指すということなので、
ここから、また1人旅となる。

朝、
僕はコックスバザールからテクナフという村へ
向けて出ているバスに乗り込んだ。

しばらくバスに乗っていると、
突然運転席の方から"キュー、キュー"という音が聞こえてきた。

(んっ?なんの音だ?)
すぐにバスが停止した。


このバスの運転席の横には、
縦1.5m、横50cmほどの出っ張りがある。
そこがエンジン部分になっている。


3人の男達がエンジンカバーをはずしだした。
カバーをはずすと、
その中からエンジン本体部分があらわれた。

"キュー、キュー"という音が大きく聞こえるようになった。
エンジンから出ている音のようだ。


エンジンの左上のほうから煙がたっている。
右下の部分からは、水のようなものも漏れているのが見える。

(あ~。あ~。このバスはもう駄目だな。
ここでこのバスを降りて、
違うバスを捕まえるしかないか。)

そう思った。


男達の1人がエンジン上部にある小さな蓋を開けようとしている。

運転手が騒ぎ出した。
顔とジェスチャーから想像すると、
こう言っているようだ。
「おい、やめろ。やめろ。危ないだろ。煙でているじゃないか。」


運転手は近くにあったプラスチックボードを拾い、
それで顔を隠し、
何かあった際の防御の姿勢を取っている。


1列目と2列目に座っていた乗客があわてて立ち上がり、
バスの真ん中あたりまで逃げた。


僕は1列目に座っていたが、立つのが面倒くさいのでそのまま状況を見ていた。


男達の1人がバケツに並々と水を持ってきた。
1人がエンジン部の上部の蓋を開けた。
蓋が勢いよく上に飛び上がった。
蓋を閉めてあった穴から"プシュー"蒸気が上に向かってはきだされた。


すかさずバケツの水を、
穴の入り口から注ぎ込む。
しばらくすると、
煙はあがらなくなった。


男達はエンジンのカバーを閉めた。

(えっ?それだけなの?水も漏れてたようだけど、大丈夫なの?)

そう思ったが、
運転手はさっきまで騒いでたくせに、
何事もなかったかのように運転を再開した。


バスがタフなのか。人間がタフなのか。
このタフさには驚く。

日本であれば、
クレームだろうな。


少しすると休憩所に到着した。
休憩所の売店で、
手作りをしているチキンバーガーを見つけた。

店主が、
チキンバーガーを指差しながら、

「マクドナルド!セブンイレブン!」

と、訳の分からないギャグをぶつけてきたので、

「リアリー?(本当?)」

と軽く流しておいた。

料金は20タカ。とても安い。


ソースがかかったチキンを、
ハンバーガーのパン生地ではさんでいるだけ。

シンプルだけどおいしい。


しばらく行くと、
バスはテクナフについた。

セントマーティンへはテクナフから船が出ている。
僕は、
船着場でセントマーティン行きの船を待った。

船着場で待っていると、
子供が寄ってきた。

僕は、
写真を撮ろうとした。
が、
カメラのシャッターが開かなくなっていた。
電源スイッチを入れてもうんともすんともいわない。

(壊れた~!)

正直、落ち込んだ。

いろいろな人が話し掛けにきたが、
何を話したのかあまり覚えてない。

(どこで直そうか?
バングラディシュじゃさすがに直せないだろうな。)

そんなことばかり考えていた。


しばらくすると、
セントマーティン行きの船が船着場に到着した。
とても小さい。

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船、とても小さい、写真がなんであるかは、後で分かります


20人ほど乗り込んだところで船は出発した。

波は結構荒い。

バシャーン。
大きな波にぶつかると船が大きく右に左に揺れる。
海水が船のなかまで入ってくる。

船員は、船がひっくり返らないよう、
乗客に、
「こっちに重心が傾いているからこっちに移動しろ。」
と指示を出していく。

移動しようとして、立ち上がった乗客が、
船の床ですべってすっころぶ。

そんな様子を見ながら、
僕は次第にウトウトと眠りについた。

1時間ほどすると、
肌に冷たいものを感じた。

(雨だ。)

ポツポツポツポツ、
そんな感じではじまった雨は、
すぐに、
ザーザー、
という音を発し始め
急激な勢いのスコール(大雨)となった。

(こりゃダメだな。カメラ壊れるし、ついてないな。)

と思いながらも、
僕はこう考えた。

(多分、ここの辺りの人達は、
船の上で雨に打たれることなんて慣れているんだろう。
もし、ここで、僕が、
不安そうな表情や、
疲れた表情を見せたら、
『日本人弱し!!』
という印象を持たれるかもしれない。
ここは余裕な態度を見せつけてやろう。)


そう考え、
僕は、
雨にずぶぬれになれながらも、
前にたれてきた髪をかきあげて、
オールバックのように後ろに流し、
気持ちよさそうに、歌を歌いだした。
だんだん気持ちも高揚してきた。

(ふっふっふ。見たか。なに事にもへこたれない、この大和魂!)

少しして、
得意げに周りを見渡してみた。


なにっ!
なんてことだ!


僕は驚愕の事実に愕然としてしまった。


乗客、皆が同じように歌っていた!!


なんて、ことがあると面白いのだが、
そんな面白い現実はなかなかおこらない。

皆が歌っているどころか、
皆が僕を無視している。
目を合わせようともしない。

気が変なやつと思われてしまったのだろうか?

日本人の魂を見せつけるつもりが、
日本人は雨の中で奇声を発する変な民族という印象をつけてしまったようだ。


こうして、僕の、
『日本人は強いんだぞ!!イメージ推進計画』は、
地元民に変な印象を植え付けただけで幕を閉じた。


しかし、この大和魂にも限度がある。
途中から寒さでブルブル震えてきた。
こればっかりは、
体がかってに震えるから、
気持ちでは抑えようも無い。
指先もふにゃふにゃになりこころなしか青白い。
多分顔も青いんだろう。
30分ほどすると、
雨は通り過ぎた。

そして、
太陽が顔を出した。

(ああ、太陽よ、いつもありがとう。
暑いな~。などと、いつも嫌悪していてすみません。)

太陽のぽかぽかした気持ちよさの中、
僕はまた眠りについた。

船のエンジンの音が変わったことで目を覚ますと、
そこはセントマーティン島だった。

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セントマーティン島


船の揺れのせいで、
胸は気持ち悪く、
ふらふらしながら船を降りると、

1人の子供が、
「どこから来たの?」
と質問してきた。

「おじさんはね、遠い星から来たんだよ。」

とでも答えてやりたかったが、
残念ながら、
胸がムカムカしてそんな余裕はないので、
「日本から。」
と答えた。

すると、どこから沸いて出たのだろう。
たくさんの子供達が、
「ジャパニ。ジャパニ。」
と寄ってきた。

(あぁ、ここは笑顔の島なんだな。)

そう思った。

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セントマーティン島の人たち


ゲストハウスに着いた僕は、
カメラのことを思い出した。

(どこで壊れたんかな?)
と考えた。

そういえば、昨日の夜、
道にカメラを落としてしまった事を思い出した。

(あの時か。)

僕は、
カメラを壊れることを危惧しながら、
同じようなショックを与えるため、
カメラを少し高いところから地面に落としてみた。

"ガン"
音がして、カメラは地面に転がった。

(ふ~む。)

スイッチを入れてみる。

"ウィーン"
音がしてシャッターが開いた。

(おいおい。生き返ったぞ!やってみるもんだ。)

うきうきした僕は、
あらためて、
この島に来て良かったな。
と思った。


この日、僕は売店の夢を見た。
夢の中で、僕は再度、休憩所の売店でチキンバーガーを買った。
すると、
店主はおもむろに、
チキンバーガーをマクドナルドの袋に入れて、僕に手渡した。
僕は驚いた。
そして、夢の中でこう思った。
(なんだ。店主が言っていたのはギャグじゃなくて、ここは本当にマクドナルドだったんだ。)


<次号の旅日記は1月16日です!>

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