”ブータンという国” ~世界一周旅日記~ ブータン編 【第六章:第12話】雲と地平線の間
”日本人としての誇り” ~世界一周旅日記~ ネパール編 【第五章:第2話】雲と地平線の間
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昨日の夜は宿のベッドにダニがいて、
ダニに噛まれまくりほとんど寝ることが出来なかった。
今日は、
なるべくめだたないよう、
紺色を貴重とした地味な色の組み合わせの服を選んだ。
持ち運ぶ荷物も少なくまとめて、
カメラとパスポートと現金のみ。
ソナムの横に並んで歩き、
そのままブータン人のふりをして国境のゲート(国境にある門)を通過する。
ソナムから、ゲート付近では、
1、言葉を発しないこと。(英語を話すと外国人だということがばれてしまう)
2、荷物を検査される場合があるのでバッグは持ち歩かないこと。
(荷物検査されると入国管理官とブータン語で話さなければならなくなる)
3、何かがあれば、ソナムが入国管理官と話してうまくとりつくろう。
という指示を受けた。
朝9:00
いざゲートへ。
鮮やかな色彩の大きなゲートが見えた。
ゲートを監視している入国管理官。
男性が3人。
女性が1人。
ブータン方面から来て、インド方面へ抜ける人々のチェックをしているのが、1人の男性の入国管理官。
インド方面から来て、ブータン方面へ抜ける人々のチェックをしているのが、2人の男性の入国管理官と1人の女性の入国管理官。
やはりブータンからインドへ抜けるより、
インドからブータンへ入る場合の方が、
チェックが厳しいようだ。
ゲートを通過する際、
歩けるスペースは決められていてる。
だいたい幅1メートルほどのスペース。
つまり、
入国管理官の横を通る場合、
入国管理官と肩をすれ違わせながら通り抜けることになる。
だんだんゲートが近づいてくる。
ゲート手前に1人目の入国管理官の男が立っている。
入国管理官の男は、
他の通行人に気をとられてこちらを見ていない。
このゲートを通過できるのはインド人かブータン人のみ。
もちろんブータン人はノーパス。
インド人がゲートを通過する場合には、
インド人用の特別の許可証が必要となる。
もちろん、
インド人の顔とブータン人の顔は、
全く違うので、
インド人とブータン人の判別は容易だ。
入国管理官は、
インド人がこのゲートを通過しようとすると、
インド人を引きとめ許可証のチェックをする。
だんだん入国管理官に近づいていく。
入国管理官の横を通り過ぎる。
こっちを気にする気配はない。
あっけなく1人目を突破した。
次、
3メートルほど先。
ゲートの通過途中部分。
男性の入国管理官が椅子に腰掛けている。
彼もこちらを見ていない。
横を通り抜けようという時、
入国管理官がこちらに目を向けた。
(しまった!!
入国管理官を気にして、その動きを監察しすぎた。)
あわてて、なにくわぬ顔をして、
(なにくわぬ顔にうつったかどうかは分からないが)
目の前にひらけてきた、
ブータン王国の光景を眺めるふりをした。
カラフルな民族衣装を着たブータン人たちが歩いている姿が見える。
そして、
無事、
2人目も通過した。
3人目、最後の1人。
3メートルほど先。
ゲート出口に女性の入国管理官が立っている。
僕は、先ほどの失敗から勉強し、
チラッと入国管理官のほうを見ただけで、
正面の風景を眺めながら歩いた。
女性の入国管理官がこちらを見たかどうかは分からない。
だが、とりあえず、
3人目も突破した。
ゲートを越えても、
無言のまま、
20メートルほど歩いた。
そして、
小声でソナムに聞いた。
「ここがブータン?」
「イエス。」
返事が返ってきた。
「・・・・・・ここがブータンか。」
(やった〜〜〜〜!!!)
ついに、
今回の旅11カ国目。
ブータンに入ることに成功した。
ブータンの通りの風景
ソナムの案内で町を見物することにした。
ソナムの用事を済ませるため、
病院と郵便局に立ち寄り、
バター風味の白くてメチャクチャ辛いブータンの国民食、
"エマ・ダツィ"を食べ、
町をぶらぶらと歩いた。
エマ・ダツィ(右上はカレー、右下がエマ・ダツィ)
驚いたのは病院のシステム。
ブータンでは病院にかかる料金は、
国から支給されるため無料らしい。
そのためなのかどうかは分からないけれども、
病院の中は、
診察者でとても混雑していた。
そして、
不思議なのは、
ブータンの雰囲気や光景が、
昔の日本のようだということだ。
男の人は『ゴ』という浴衣のような衣装を身にまとう。
たまに下駄に似たようなものを履いている人もいる。
ゴを着るためには、
帯も必要なのだが、
帯の長さは2メートルほどあるらしい。
ゴは正装としても認められており、
郵便局に行った時、
局員全員がゴを着て働いているのには驚いた。
ブータンの町並み(ゴを着て歩いている人も見える)
顔は日本人に似ているが、
まゆ毛が太くあごが大きい。
こち亀の両津勘吉のように、
まゆ毛が太くつながっている人もいた。
いろんなところに飾られている、
額縁に入った、
ブータン王国の王子の写真。
浴衣のようなゴを着て
キリッとしたまゆ毛と大きなあごを持つその顔は、
僕に、
昔の東映の映画俳優さんの顔を連想させた。
女の人は着物とまではいかないが、
カラフルなデザインの1枚の布を全身にまとう。
(なんかこういう顔を、
どこかで見たことあるな‥‥。)
と考えていたら、
(そうだ、おかめさんの顔だ。)
と、思い出した。
丘に登ってプンツォリンの町を見下ろす。
ちょうと真下で、
ゴを着た男の人が、
鎌をふるって畑を耕しているのが見える。
この国には、
ゆったりとした時間が流れている。
僕は、
時間が止まっているような錯覚を覚えた。
そして、時間が逆戻りをはじめた。
あの頃、
デパートの屋上で見る月光仮面ショーが楽しみだった。
たたみの部屋で生活し、
ふすまのしょうじをやぶって親におこられ、
テレビではピンクレディーが歌っていた。
週末の夜は、
家族や親戚が集まってテレビを見る。
テレビの中では、
ジャイアント馬場やアントニオ猪木、長州力達が、
ところ狭しと暴れていた。
あの頃はエネルギーにあふれた時代だった。
「高度経済成長」
こんな言葉が日常の中にあり、
皆が、
同じ目標に向かって頑張っていた時代だったような気がする。
『ブータン』
この国は、
訪れたものをあたたかい気持ちにし、
懐かしいような、
ちょっとセンチメンタルな、
遠い昔の記憶を思い出させてくれる国なのかもしれない。
<次号の旅日記は2月7日です!>
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