”キレたアレックス” ~世界一周旅日記~ バングラデシュ編 【第六章:第6話】雲と地平線の間
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7/3(切れたアレックス)
今日、
夜行バスでアレックスと共に、
バングラディシュ南部、
コックスバザールという名前の田舎町へ向かう。
夜行バスのチケットはあらかじめ購入しておいた。
夜10時発のバス。
夜9時
バスに乗るためにバス停に向かわなければならない。
リキシャ(荷台つき自転車タクシー)に乗ってバス停に向かうことにした。
僕用のリキシャとアレックス用のリキシャ、2台のリキシャを捕まえた。
リキシャの運転手と交渉した結果、
1台25タカ(1タカ=1.7円)でバス停まで行ってくれるという。
さっそくリキシャに乗り込み揺られること20分。
バス停に到着した。
僕は10タカ紙幣3枚を運転手に手渡した。
30タカ手渡したので5タカのお釣りが返ってくる計算。
僕が、お釣りを要求すると、
運転手は首を横に振った。
どうやらお釣りがないらしい。
「じゃあ、お釣りはいいよ。」
そう言って、僕は運転手の肩をポンポンと叩いた。
ふと、
アレックスの方を見ると、
口論になっている。
どうやらアレックスを運んできたリキシャの運転手が、
アレックスが25タカを渡そうとしたのに、
「30タカ払え。」
と言っているようだ。
僕が、
アレックスの助太刀をしようとすると、
すかさず、
僕を運んで来たリキシャの運転手が、
(こいつは30タカ払ったんだぞ。お前も払わないか!)
そんな感じで、
ついさっき、僕が運転手に渡した30タカを、
アレックスに見せつける。
(恩を仇で返しやがって。)
そう思いながら、
「何を言っているんだ?
もともと25 タカの約束じゃないか。
そういうことするんなら、
お釣りの5タカを僕に返せ!」
そう言うと、
僕を運んできたリキシャの運転手は引き下がった。
アレックスが、
彼を運んできたリキシャの運転手に25タカを無理やり渡したのを見て、
僕は、
(さっさと、行こうぜ。)
とアレックスに目で合図した。
バス停の中にある、
チケットセンターまで行き、
そこの係員に、
昨日、あらかじめ購入しておいた、
コックスバザール行きのバスチケットを見せる。
チケットセンターと言っても、
室内にあるわけではなく、
バスが発着する場所の近くに、
小さな机がドンと置いてあって、
係員がいて、
地元のバングラディッシュ人が、
そのまわりにたむろしている。
そんなちっぽけなチケットセンターだ。
チケットを見た、
係員は首を横に振った。
「どういうこと?」
僕が聞くと、
係員は日付のところを指差している。
7/2と昨日の日付が記載されている。
「それがどうした?それはチケットを購入した日だろう?」
と言うと、
係員は、
「バス。ゴー。」
と言いながらその日付を指差す。
(まさか、7/2に出発するチケットだったということか?)
確かに、
僕とアレックスは昨日7/2にチケットを購入した。
だが、分かりやすいように、わざと片言で、
(トゥモロー、ゴー、コックスバザール)
と繰り返して、チケットを購入した。
それが、伝わってなかったということか?
アレックスが、
「トゥデイ、ノー、バス?」
と聞くと、
係員は首をたてにふり、
「イエス。」
と答えた。
再度、
アレックスが、
「じゃあ、いつ出発するんだ?明日か明後日か?3日後か?4日後か?」
と質問。
係員は英語が分からないんだろう。
首を横に振っている。
「じゃあどうするんだ?
俺達はお金を払ったんだ。
1人当たり300タカ。2人分で600タカ。
チケットを買うために昨日すでにお金を払ってあるんだ。
そのお金はどうしてくれるんだ?」
係員は沈黙した。
チケットセンターのまわりにいるバングラディシュ人たちが、
ざわざわと話している。
しばらくして、
係員が無言でお金を手渡してきた。
100タカ紙幣‥‥
アレックスが数を数える。
1,2,3,4,5‥‥‥。
5枚しかない。
突然、
ドンという音がした。
アレックスがおもいっきり握りこぶしで机をなぐった。
そして、大声で叫んだ。
「ふざけんな。くそやろう!!
600タカ払って、なんで、500タカしか戻ってこないんだ。
なんでお金が減るんだ。
残りの100タカはどこにいったんだ。
100タカ、今すぐ返せ!」
凄い迫力だ。
迫力に押されて係員はすぐに残りの100タカを差し出した。
(それなら、はじめから600タカ出せばいいのに。)
アレックスは、
「ヘイ。スミ。」
と言って、
取り返した600タカの中から
300タカを僕に手渡した。
アレックスが持っている300タカが小刻みにブルブルと震えている。
まだ、怒りの余波が残っているんだろう。
僕達は、
コックスバザールへ行くバスを手配しているバス会社を探すため、
チケットセンターをあとにした。
みちみち、アレックスが、
「スミ、すまない。怒ってしまって。」
と言った。
僕は、
「別に気にしてないからいいよ。英語が伝わらないのが一番の原因だ。
ただそれだけだ。」
と答えた。
道を走っているリキシャを呼びとめ運転手に、
「コックスバザール、バス?」
と尋ねると、
運転手はうなずいた。
僕とアレックスは1台のリキシャに相乗りすることにした。
せまい。
リキシャがカーブを曲がるたびにリキシャから落っこちそうになる。
リキシャの横を乗用車がクラクションを鳴らしながら、
通り過ぎていく。
道を歩いて横切る人影が見える。
リキシャの運転手が、
「ホゥ~~!!」
と、道ゆく人に、高い声で叫ぶ。
道を横切っていた人たちが、
リキシャに轢かれないように、
走って道を横断する。
後ろから、違うリキシャがやってきて、
どけどけ、とばかりに、大声をあげて、
追い抜いていく。
バイクや車やバスの間の、
空いたスペースを見つけながら、
リキシャはくねくねと走っていく。
おっこちないよう、
僕は、
椅子に手でつかまりふんばる。
20分くらい経っただろうか。
「本当に不便なところだ。
バスに乗るためだけで、
こんなにも時間がかかる。」
と、僕は不満をこぼした。
考え事をしているのだろうか。
アレックスは、短く、
「イエス」
と答えた。
それから20分ほど。
やっと、
リキシャはコックスバザール行きのバスを手配しているバス会社に到着した。
僕達は、バスのチケットを購入し、
バスに乗り込んだ。
バスのシートに腰を落ち着けると、
だんだん気持ちも落ち着いてきた。
バスはすぐに出発した。
外から入ってくる風が気持ちいい。
汗が少しずつ引いていく。
僕は、
「本当は、僕は、もう今日はあきらめて、
宿に一度戻って明日出直そうかな、と考えていたんだ。」
と言った。
アレックスが、
「僕もそうだ。」
と答えた。
外の景色が流れていく。
カレーとナンを販売しているお店
『ゴーーーー』と音をたてて追い抜いていく大型バス
夜の帳のもとで暗い水をたたえる湖
果物を売る屋台のオレンジ色の光
そのうち、僕はウトウトと眠りについた。
<次号の旅日記は1月12日です!>
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