他人の人生を覗き見する快感

先日Steamで『Telling Lies』をクリアした。おもしろかったー。

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『Telling Lies』はプレイヤーがNSA(アメリカ国家安全保障局)のデータベースが入ったPCで映像を検索して視聴していくゲームである。
プレイヤーがゲーム内で行うことはその映像を見て出てくるまたは関連して考えられるキーワードを検索し、ビデオに映る映像を見て「登場人物たちがどういうつながりを持つのか、どういう物語になっていくのか」を想像することだ。

出てくる映像は重要なものだったりなんということのないものだったり、はたまたその映像の中で語られていたことは嘘だったりもするので、何を検索したか、想像される人間関係や物語はどういうものかを整理するためにメモが必須になる。

同じクリエイターの作品で、『Her Story』というゲームもある。これもゲームシステム的にはほぼ同じで検索をして映像を見ていくものだったが、『Telling Lies』と『Her Story』では映像の質がまあまあ違ったので体験としてはまた新鮮なものになった。

2つの映像の違いはこんな感じ。

『Telling Lies』の映像
・基本的にはほぼすべてPCのビデオチャットを録画したもの
・画面に向かって誰かと誰かが会話しているものを見ているので、映像に映っている人間が聞き手になっている場合はその間無音になっていることがある
・ビデオを見ただけではなんの会話をしているのか、誰と会話をしているかがわからないが、対話相手も録画されているのでその映像が見つかると『何について話していたか』がわかるようになる。
『Her Story』の映像
・映像はすべて警察の取り調べ室で話すある女性の証言を録画したもの
・画面には映っていないが警察官と会話をしていて、その内容もわかるので、映像としての退屈さは少ない
・ビデオを見ただけで『何について話しているか』は一応わかるが、そもそも事情聴取されている理由が不明なので『なぜその話をしているか』はわからない。

映像が一人称視点か三人称視点かでかなり受ける印象が違うのはおもしろかった。お話としては『Her Story』の方が好きだったけど、『Telling Lies』で見る映像の中で人間関係が少しずつ変化していくのはなかなか心臓に来るものがあった。

ところで、このふたつのゲームを進める動機は、ほぼ下世話な好奇心しかないと思う。推理力や連想力が楽しめるのは確かなのだけど、映像を知ったところでなにか変わることもなく、ただ『そういう事柄があった』ということを知る以外に得られるものがない。

『検索するプレイヤーは誰の目としてその映像を見ているのか』というのもゲームをやっているとわかる部分であり、それももちろんおもしろいのだけど、「その目を通じて見ている」こと自体はあまり重要ではない。むしろ「その目を通じて見ているから、映像をすべて知る権利、義務があった」という免罪符に過ぎないような気がした。なぜなら、それを知ったところで『ゲームの中でその映像を見て検索している人物』にさほど感情移入ができないからだ。むしろ、『ねぇねぇこの映像知って検索してるのどんな気分??』という気持ちになる。

『Her Story』も『Telling Lies』も、最初の映像ではほぼわかることがない。なんなら人物たちの名前すらわからない。わからない中でとりあえず検索を進めていく。
その検索をしていくうちに、突然自分の中で勝手に作っていた物語が進む瞬間がある。それは名前だったり、事件だったりいろいろだけど、それが来るとどんどん検索をしていく手が止まらなくなる。

自分はどちらのゲームもクリア(という概念が一応存在する)したあとに、データベース上に存在する映像をすべて時系列順に見直した。
そのときはもはや作業であり、起きていた事柄の答え合わせに近い感覚でやっているのだけど、『Her Story』の事情聴取の映像も、『Telling Lies』の私的なビデオチャットの映像も、他人の人生をこんなに堂々と見られるということにすごい背徳感を感じた。実写ゲームということも手伝って、「この映像に出ている人たちは自分のことを何も知らないけれど、自分はこの人達の人生に何が起きたか、いつどういう感情を持っていたか、この人がどう見られたかを知っている」ということに奇妙な充足感があった。

『Her Story』も『Telling Lies』もかなり悲しい終わり方をしたけど、その悲しいという感情も自分が一方的に映像を覗き見して得られたものであり、登場人物たちにしてみれば知られたくない情報もあったはずだった。勝手に見られてかわいそうだなと思う。

他人の人生の話を聞くのがもともと好きというのもあるけど、それについて下世話ながらも最高の体験ができるのはこの2つのゲーム以上のものはないんじゃなかろうか。

また同じゲームシステムでいいので、新作出してほしいなぁと思う。

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