器用貧乏、とりあえず生きる。
物わかりが良く、成績表は悪くなかった。運動も地域の中ではできる方で地域対抗リレーにはよく選手として出ていたし、美術で描いた絵も何度か賞をもらったし、習字だって、作文だって、標語だって表彰された。部活も県大会出場して、部長を任された。そんな時は決まって嬉しかった。自分が誇らしかった。
でも、何一つ、誰よりもできることはなかった。
悲しいことに、特技も趣味も、これと言ったものがなかった。のめり込むことができなかった。何かに没頭したことが今までで一度もないのだ。
別に天才肌、というわけではない。素養はなく、努力で補ってきた人生だ。気づいたときには、思いの外自分は凡人で、尖った個性なんてものは持ち合わせていなかった。
もちろん、そのなんでも中の上にできてしまうことが良いところであり、それが個性だ、なんて言葉もあったけれど。私にとってはそれが受け入れがたかった。何か一つ、拠り所があったらよかったのに。私にはこれがあるからって思いたかったのに。
なんでもある程度だと、できるよね?って、仕事を何もかも押し付けられてしまう。なんとなく後ろ指を刺されてしまう。羨望にの眼差しに刺されて痛い。私全然上手くないのに。私全然出来ないのに。能ある鷹は爪を隠す。私は能無しだ。
私のステータスは綺麗な五角形を描いている。年を重ねると、周りの五角形は少しずつ大きくなっている。その中の一つがぐんと伸びていて、自分が惨めに感じてしまう。
今まで人生の上での選択を間違ってきたんだろう。あのとき、こっちの道を選んでいれば、、、。つまらない意地やプライドがなければ、、、。人生はもっと楽しかったんだろうな。
ふとしたときに強く思う気持ち。嫌味に感じる人だっているかもしれない。でも、これが今の気持ち。
落ち込んでいたって仕方ないことは何年もの歳月をかけて証明してきたんだと自分に言い聞かせていながら、未だにあまり何かできている気はしない。年々腰が重くなっている。こんなどこにも行けやしない私、一体どうにかなれるのかな。
正直、こんなことを中学生の頃から考えていて、一回も解決したことはなかった。考えても考えてもわからないな。また問題を先延ばしにしちゃうけれど、とりあえず晩ご飯でも作ろう。生きることは、勇気もいらないし、器用さもいらなくて楽だからいい。とりあえず今日も生きようと思う。