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原チャリで行こうぜ!道北編 vol.2 〜通学用スクーターで北海道に向かってしまった件

1日目:2001年7月28日(土)

旅立ちの準備

9:00

起床。

昨日は東京での仕事を終えた後、電車に乗り込み実家のある神奈川県に移動。
そして、バイクに乗り換え、自宅がある千葉県市川市まで。
ガンガン走ったので、めちゃくちゃ疲れて爆睡。

これしきで疲れていては!
今日は北海道ツーリングの、本当の?、スタートする日であるが…。
そう、夕方に旅立つというのに、ツーリングの準備が全然なっていない。
どうにか夕方までに、準備しなければ…。
ま、なんくるないさー。

近くにバイク用品を売っている店がなかったので、愛車のS13シルビアに乗り込み買い物を開始。
国道6号線を走りつつ、やはり、原チャリと比べて、車は楽だなあと思う瞬間である。
交通量の多い、国道も余裕である。
あ、やっぱ、車は楽だなぁ〜。

11:33
セブンイレブン、松戸緑ヶ丘店、サンドイッチ、パン、378円。
遅い朝飯である。

11:42
ドライバースタンド松戸店、オイル670円、グローブ3950円、ベルト960円、シールド3150円、計8730円。

フルフェイスヘルメットのシールドが古くなってきて、傷が多くなり、光が当たるとギラギラするので、新しいものを購入。
これで、夜間の視界も快適である。
安全運転には道具を整えるのが重要である。

愛車のSuper Dioは2サイクルエンジンなので走るたびに、オイルが減少する。
そして、オイルが切れると、エンジンが焼き付くという、恐ろしい状況になる。
そうなると、ツーリングどころではなくなる。
特に、北海道ではスタンドとスタンドの距離が半端ないため、すぐに入手できるとも限らない。
今回は、前もって1本スペアをスタンバイしておくことに。

12:13
マツモトキヨシ矢切店、使い捨てカメラ3個、コンタクト用品、ビオレさらさらシート、3091円。

現代と違って、この頃は使い捨てカメラというものがあった。
もちろん、デジタルカメラなども普及していない時代のことである。
プラスチックの筐体にレンズが付いて、フィルムが入っているという代物である。
撮影後、コンビニやカメラ店で、この筐体ごと現像に出すという、現代では考えられないシステムであった。
27枚撮りを3つ購入した。つまり、北海道で81枚の写真を撮影できるという寸法である。
現代からは考えられないほどの、写真1枚あたりの価値である。
そう、まだギリギリ昭和の香りが生き延びていた時代である。

市川市の家に戻り、シルビアからDioに乗り換える。
街中は原付きのほうが小回りがきいて効率が良いわけである。

13:13
東京三菱銀行のATMにて、35000円を引き出して旅行資金の準備。

13:17
本八幡のどこかのお店。
半袖のシャツがなかったので、とりあえず安いものを一枚ゲット。2593円。

13:29
ファミリーマート、東京電力4423円。旅の前に、電気料金を支払いサッパリ。

13:32
ダイソーにて、コーヒー、ご飯、バイクシート、630円。
このバイクシートとは、本来バイクに被せて雨風を防ぐものである。
しかし、よく考えるとテントの下に敷くグランドシートや、パッキングした荷物の防水シートとしても使えそうかも?という妄想のもと?購入。

13:40
西友、本八幡店、防水スプレー、1029円。
とりあえず、ツーリングに利用する物品に、防水スプレーをかけとけば、雨でもどうにかなると購入。

13:44
ミニストップ、本八幡店、そば、283円。
昼食に軽く小分けそばを。

原チャリを駆使し、13時台に6個所も店を回った。
これは原チャリだけにできる技か?

さて、部屋に戻り、少し休むことに。
そう、今日は旅のスタートの日である。
今夜23:59に大洗港を出港するフェリーに乗り込むわけである。
夕方には千葉県を出発し、茨城県の大洗港にたどり着く必要がある。

しかし、今回の相棒も50ccのDioであり、高速に乗ることはできない。
地道に下道を使って、たどり着くしかない。
そろそろ、気合いで準備に取り掛からねば。

16:00

原チャリに荷物を積み始める。
マンションの駐輪場で、スクーターに過積載を施すのはなかなか勇気がいる。
他の住人の目が気になるところではあるが、気にしないことにした。

去年に引き続き足元にザックをいて、それを両足ではさみながら、そして、キャリアにテント、寝袋というスタイルを踏襲することに。

ロープだけは、ベルトタイプの頑丈なものにした。
ここだけの話、去年、朝方に札幌市内を走行中、キャリアのロープが解けて荷物が道路に落っこちがことがある。
この頑丈なベルトさえあれば荷物は大丈夫なはずだ。
よし、準備完了!

北の大地へ向けて、旅立ちの時

16:40
市川市をスタート。

スタート直後は半袖のポロシャツだったが、少々寒くなってきた。
ここ一週間の猛暑がうそのようだ。
めちゃくちゃ寒い。
これが7月か?

松戸から国道6号線、通称”水戸街道”に入り、茨城県の大洗港を目指して北上を開始。
あいも変わらず、交通量が激しい。
実は、原チャリで北海道を走るより、本州を走るほうが比較にならないほど難易度が高い。

17:48
JOMO、スペース柏SS、3.5L、96円/L、353円。

柏を過ぎたぐらいから、あまりの寒さに、ウインドブレーカーとグローブを装備。

土浦の手前ぐらいからお腹がへってもう限界だ。
さらに、寒くて仕方なくなってきた。
ふと、つくばに住んでいた頃のうまい飯屋を思い出した。
夜ご飯はそこで食べよう!

満面の笑みの本当の理由

19:00
寒さに震えながら例の食堂へ。

お店に入ると、マスター、おかみさんが笑顔で、「ひさしぶり!」って。
その温かい声で、一瞬でつくばに住んでいた頃に戻った。
カツオの刺身定食900円を注文。
新鮮なカツオをしょうが、にんにくで頂く。
スイカもサービスしてくれた。
ご飯はとっても美味しいし、お店の雰囲気も懐かしくてしょうがない。

ただ、二人の顔が浮かない。
「知ってる?」
「社長が病気で、もうだめなんだよ。」
大学院の頃のバイト先の社長が末期ガンだってことを聞かされた。

社長は手術して小康状態にはなったけど、もう2,3ヶ月の命しかない。
今は、仮退院して息子に仕事を教えて引継ぎ作業をしているらしい。
そして、すぐまた入院する予定で、もう先がないらしい。
さらに、社長はこの食堂からすぐの自宅にいるらしい。

おれのテンションは一気に落ち込んだ。

おやじ(社長のことをみんなそう呼んでいた)は、おれが大学院卒業の2001年3月に急に連絡をくれ、焼肉をごちそうしてくれたのだった。
「卒業おめでとう!今夜はたくさん食べろよ!」ってすごい元気だった(少なくとも俺の目にはめちゃくちゃ元気に見えた)。
この時、すでにガンは進行し、半年ちょっとの命だってことを隠していた。

「ちきしょー、どうしたらいいんだ、おれは…」

おれは、一瞬、ためらった。
すぐに、おやじの顔を見に行こうとした。
いや、おやじは強い男で、弱っている自分を見られたくないこと、そして、おれが会いにいって、ツーリングをやめたら、おやじががっかりすることをおれは知っていた。

3月の焼肉の本当の意味を思い知った。
おやじはおれに精一杯元気な最後の姿を見せたかったのだ。
それに気がついたとき、おれは一気にさみしくなり、ガタガタと震えだした。

こうなったら、おやじの意志を尊重するのがベストな選択だ。

だから、おれは会わないことにした。

そして、おれは号泣しそうになった。

19:30
平静を取り戻し、いや、普通っぽい表情を無理やり作り、お世話になったおかみさん、マスターにお礼を言い走り出した。

孤独な夜のツーリング、そして…


ひたすら、国道6号線を北上。
そして、夜の風が冷たい。

胸がいっぱいになって、涙が出そうになる。
本当は会いたかったけど、おやじの思いは「前へ進め」ってことはわかっている。
でも、せつない。
バイト中のおやじの優しさ、昼食中のおやじのバカ話、そして、笑顔、さまざまな思いが頭をめぐりながら、真っ暗な心細い道を大洗港を目指して走り続けた。

国道6号線から大洗方面へ右折して、県道16号線に入る。
畑の中の細い県道をひたすら走る。
暗くて寂しい。
Dioの暗いヘッドライトでは相当頼りない。
そして、おれはおやじのことを思い出しつつ、気分が沈んでいた。

そんな気分なところにである、そして、いきなりである。
全てを明るく照らすように、何か遠くの空で光ってる。
「花火だ!」
ちょっとうれしいぞ!
いやー、相当嬉しいぞ!
すげぇ、きれいだ!

港が近づくにつれ、花火が大きくなってくる。
そして、バーンって音が、大気を震わせて…。
おれは身体に感じる音圧で、花火が近いことを感じた。

「もしかして、大洗あたりでやってるんじゃん?」なんて思いつつ、アクセルを回す。
予想は、当たった。

まさかの、ガタ落ちのテンションが急上昇。
さっきまでは、”北海道ツーリング中止”も考えていたのだが、花火を見たら急にツーリングの気合いが高まってきた。
「今回のツーリングも、おもしろくなりそうだぜ!」

大洗港周辺は、花火客の浴衣や甚平の若い人々がたくさんいて活気があった。
「ちきしょう、おれはこれからツーリングだ…。」
「浴衣を着たかわいい女の子さんと花火でものんびり見たいぜ!」

20:59
ホットスパー、生茶、ロールパン、カレーチップス、カライーカ、688円。

コンビニ周辺は花火客であふれている。
耳を澄ますと、花火客のほとんど地元の人のようで、茨城なまりがある。
「去年まで、おれも茨城に住んでいたんだなぁ~」と思いつつ、茨城なまりを懐かしむ。
ひさしぶりに聞いたらなんかうれしくなってきた。

21:07
JOMO、大洗港SS、2.9L、96円/L、292円。

北の大地にたどり着いた際、ガソリンは満タンでいたい、全てのライダーの思いであろうか?
ほとんどのライダーがここのJOMOで給油していた。

愉快な仲間たちとの出会い、そして出港

21:30
ターミナル着。
バイクを停めて、とりあえずターミナルの中に。
さて、乗船手続きだ。
去年のツーリングに引き続き、今回は2度目なんで慣れたものである。

フェリーの乗船待ちの列にDioを停めようとすると、すでに10台ぐらいのライダー達が。
その最後尾には、250ccのビッグスクーターに乗った兄ちゃんがいる。
そして、こちらのほうを不思議そうな顔をして眺めている。

それもそのはず、自分の後ろに、186cmのでかい男が、身体に不釣り合いなちっぽけなバイクに、たくさんの荷物を積んで並んだのだから…。
この人、鈴木さんと言う。

「いやー、50なんすよー、これ。」
おれは少々恥ずかしそうな笑みを浮かべつつ。

「実は、去年も北海道を走っていて、今回二度目でして…」
それを聞いて、鈴木さん、超うれしそうである。

鈴木さんは、横浜からで、現在大学4年生のようである。
自分も横浜生まれなんで、かなりの親近感、シンパシーが増大。

待合室で30分ぐらい待った後、再び、フェリー前に集合すると、すでに20~30台のバイクが集結しているであろうか?
「そう、その時がきた!いよいよだ。」

鈴木さんと、自分の後ろに並んだライダーとも仲良くなることができた。
彼も横浜のようだ。
その後、タラップを経由して、フェリーの中に。
バイクを係のおじさんに固定してもらう。

23:00
生ビール、400円。

荷物を下ろして、フェリーのラウンジに集合。
鈴木さん、後ろのライダー、34才のライダー、みんな横浜だ。
何の縁か、自分を含めて4人、全員横浜関係者である。

生ビールサービスで、ビールを買っているおれを見て、鈴木さんが「めちゃくちゃうれしそうな顔してますね!」 と。

恥ずかしい話、おれはビールを飲む前から、かなりうれしそうな顔をしているらしい。
やっぱおれはビール好きなんだ。
といいつつ、鈴木さんはビール飲めないらしい。

たまたま、フェリーに乗り込む列で仲良くなった4人、なぜか超意気投合。
みんなで、北海道到着後のツーリングの予定について熱く語る。

「おれの予定ですか?明日の夜、20時に苫小牧到着後、明後日には宗谷にいますよ!」
「お、まじで?原チャリで?すげぇな!」
「実は、去年もあのDioで道東を走ってまして…。今回は最北端を目指したくなりまして…。」

おれの豪快な??日程を聞いて、みんな喜んで、そして応援してくれる。
さっき知り合ったばかりのメンバーなのに、昔からの友達みたいな雰囲気である。

話題は、苫小牧についてからの宿に移った。
34歳のライダーは「金に物を言わせて、宿をとる!」と。
鈴木さん、後ろのライダー共に、「金に物を言わせる」というフレーズを気に入ったらしく、このフレーズを激しく連呼しまくる。
本当に楽しい旅の始まりだ。

鈴木さんは、友達の家、後ろのライダーは、近くのキャンプ場、自分は走れるだけ走ってキャンプだ!

23:59
大洗港出航。
「いよいよだ!」

「わくわくしてきたぜ」って思っていたのは束の間、台風の影響で激しく揺れ始めた。
きもいぞ。
みんなソッコーで、布団へ移動。

気持ち悪さと、明日からの旅、泊まるキャンプ場も、何も決まってない、風に吹かれてどこまでも行くスタイルのちょびっとの不安?の中でのスタート。
それも悪くない。

明日はどこで寝るんだろう?
次の日が、どうなるのかわからない。
これこそが旅の醍醐味。

明日は明日の風が吹く。
風の吹くまま走り出そう。
「おやすみ、Dio、今日出会ったライダーたち!」
「そして、待っていてね、北海道!」

次回、いよいよ、北の大地の玄関、苫小牧港に入港します。
最北端を目指して、走り始めます。
お楽しみに!

※ このストーリーは、ほぼノンフィクションです。一部走行に関する描写に関して、物語展開上のフィクションを含む場合があります。実際の道路状況に合わせて、交通ルールを守り、安全運転を心がけましょう。また、現代と時代背景が異なるため、一部現代の感覚など異なる箇所があるかもしれません。ご了承いただけると幸いです。

※トップの写真は、ツーリングマップル北海道2001に掲載された写真です。カメラマンの小原さんから特別な許可を得て使用しております。


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