年老いていく実感と祈り
去年出来ていた事が、今年はスムーズに出来ない。
昨日の事も思い出せない。
なんて良くある事でさほど気にもして無かったし、加齢は1秒毎に進むから、若返りに精を出す事を諦め、せめて現状維持をと願う日々。
体力勝負の無農薬栽培は、除草作業が毎日続いていて、段々と疲れが抜けにくくなってきた。
そんな矢先に父が怪我をした。
退院するまで約3週間はかかるらしい。
その日は疲れていたから夕方の除草作業を母と私は休む事にしていた。いつもなら夏休みの子供達しか家に居ない時間帯に起こった事故。
「手を切った!」
「寿美子!病院連れていけ!」
「あんなに気をつけろって言ったのに!何やってんのや!!!」
一瞬何が起こったから分からなかったが、床が赤く染まるのを見て「ヤバい」と直感した。
肘の内側を布で縛り止血。傷口をキレイな手ぬぐいで抑え、滴り落ちる血を受け止める為レジ袋を被せ、車で病院へ。
バックミラーで父の顔色をチェックし、「気持ち悪くない?」とか声を掛け、レジ袋に溜まる血の量にビクビクしながら、なんとか病院に到着。
救急の先生はラッキーにも「形成外科」の先生。午後6時半の救急受付は父以外1人しか居なく、処置室へすぐ通された。
怪我をしてから処置室まで約20分、30分は経っていないと思う。
「良かった、田んぼに行ってなくて」
もし田んぼで除草作業をしていたら、どんな事態になっていたのだろう。最悪父はこの世にいなくなっていたかもしれない。
父は手術も成功し、手首以外はピンピンで、入院中で断酒も出来るから顔色も良く、あんな事故の2日後とは思えない程に元気だ。
だけど、農作業は多分出来ない。握力も弱ってしまうし、神経やケンをズタズタに切って、更には骨までやや切れてしまってたのだから、平常運転とはいかない。
その負担は私が引き受ける!
もっと先の未来に私がやらなくてはならない農作業が、今目の前にある。うん、大丈夫、いつかはやらなきゃいけないんだから。
だけど、どうか死ぬまで無事に農作業が出来ます様に。
私と家族と集落の未来が明るい物であります様に、と願う日がくるなんてな。
あなたの未来も、私の未来も、同じ線上にあるんだって。家族じゃなくても同じ線。繋がっているんだなぁ。
みんな、助け合いながらこれからも生きていく、それしかないよね。