Entrance Exams: 答えそれ自体を覚えるのではなく、答えまでの行き方を覚える。
このChapterでは、いよいよ入試本番に向けた過去問のより良い使い方について話していきます。
自分が志望する学校の過去問に全く触れずに本番に臨む人はいないでしょう。
(ごく稀にいわゆる「滑り止め」を受験する際にそれをやって止まらなかった例も見てきましたが…)
ここでは過去問は何かしらの手段で手に入れる・使う前提で話を進めます。
まずは、一番やってはいけないことを知っておきましょう。
それは答えを丸暗記することです。
それではまるで意味がないどころか、全くの逆効果です。
いわば過去問とは、「過去にもうやってしまったネタ」の集合体です。
一度出してしまった問題と全く同じ問題は、もう二度と出題できないのです。
これさえ抑えておけば、過去問の扱いで大きく外すことはありません。
もし過去問と全く問題を出題してしまったら、
過去問を解いたことのある受験生は100%解けてしまう
生徒間で一切差がつかない「捨て問」になってしまいます。
実際にはそんなことをなんとしてでも避けるために、
各学校の出題者は「過去に同じ問題を出題していないか」を念入りにチェックするのです。
では過去問をやる意味が全くないのかと言われれば、もちろんそんなことは全くありません。
過去問で大切なのは、出題側の「こういう生徒が欲しい」という意図を汲み取ることです。
例えば標準的なレベルの長文読解を複数出題する学校は多いですが、
あれは「単語・文法・読解をこれまでしっかりと継続的に勉強してきた生徒がほしい」
という学校側の態度の表れです。
また、難関校だと注釈なしで出てくる単語のレベルが高いですが
それは「単語力の高い生徒、ないし未知の単語の意味を考えられる思考力のある生徒がほしい」
という学校側の態度の表れです。
そして文章の並び替え問題を出題する学校は多いですが、
これは「正しい文章をしっかりと書ける・扱える生徒がほしい」
という学校側の態度の表れです。
入試の問題とは、「こういう人がほしい」という学校からのラブレターなのです。
それを汲んだ上で対策することが重要です。
過去問の長文読解に取り組む際は、
「こういったレベルの単語・文法・読解が求められるんだな」
という意識のもとで普段も勉強していくという気付きを得るべきです。
文章並び替えの問題に取り組む際は、
「このレベルの構文は一通り覚えておく必要があるんだな」
という意識のもとで普段も勉強していくという気付きを得ることです。
「これを覚えた」ではなく、
「こういう風にして、本番に向けて勉強していくべき」というのが大切なのです。
その指針を得るために過去問をやるのです。
これは逆に言えば、過去問だけやって対策した気になってはいけないということでもあります。
単語帳、文法書、問題集、長文読解などは
過去問と並行して幅広く取り組む必要があります。
たとえ自分が受けると思っていない学校の過去問でも、取り組む価値はあります。
「こうやって問題を解いていくんだな」という考え方を取り入れることができるからです。
あの学校で出題された問題が、数年後に別の学校で出題されることもあり得ます。
繰り返しますが、答えそれ自体を覚えても何の意味もありません。
そこに至るまでの考え方・途中式・経験こそが重要なのです。
そうすれば、入試当日に問題を見た瞬間に
「あぁ、こうやって解くんだな」というのが頭の中に浮かんできます。
…筆者、透佳(スミカ)