最後の出張、外気浴に何想ふ(Radwimps風)
2021年6月末。
初めて正社員として入社した会社を退社する。
有給消化に入る前、最後の釧路出張にむけて出発したのは17日の朝。
1泊2日、上司と2人で行く最後の出張だった。
退職の理由は正直自分の中でもぐちゃぐちゃしていて。到底インターネット上に載せられるような明確なものじゃない。だから、こんな記事も書く予定もなかった。書くにしても、やめたこと・これからのことを書くだけのつもりだった。
でもこうして書き留めたいと思ったのは、これからフリーランスとして活動しようとしている自分が、何かにぶつかった時、何かを成し遂げた時に、この時の感情を覚えていて欲しいと思ったから。
そんな風に思える、釧路出張先のホテルでの体験をここに残します。
・・
17日、出発
退職といっても、仕事をやめたあとも業務委託として今の職場には関わっていくことが決まっていた。なんなら現在進行形で、8月に控える移転リニューアルに向けて手足と頭をふんだんに使って頑張っているところで。
正直なところ「やめる」という実感は全くといっていいほどなかった。
「明日で終わりなんだもんな〜」くらいで。
辞める〈実感〉がないせいで、フリーになるという〈責任感〉も十分に備わっていない自分に焦る。
環境に影響を受けやすい自分だから。中途半端な環境に身を置いていると、やることも中途半端になってしまいがち。会社をやめる。だけど今は会社員。だけどフリーになった後の仕事も自分を待ってはくれない。
中途半端な環境に、うまく切り替えのできない自分。かといって環境のせいにする自分も嫌で。モチャモチャする自分の仕事の仕方に自己嫌悪のする日々が続いていた。だからこそ、17日の朝は、フリーになる〈実感〉や〈責任感〉を早く手にしたいという想いから、
「中途半端よ、早く終わってくれ...!」
と、日を急ぐような気持ちが強かった。
少し良いホテルで、最後の一泊。
1日目の行程を終えて、早めの夕飯後宿に向かう。
釧路は普通盛りが多いから、毎度のことながらお腹に一切の余裕を残せなかった。水を飲むのも辛い。
出張には少し豪華と言ってもいい、高温サウナ付きのホテル。パワーワードに心を躍らせながら到着したはいいものの、お腹がいっぱいすぎて少し時間を空けてから温泉に入ることにした。
溜めていたタスクを処理したり、電話をかけたりしているうちに、気づけば時計は23時を指していた。「こうなったら、人っこ1人いない時間を狙おう。」結局温泉のある最上階に向かったのは0時を過ぎてからだった。
外気浴2セット目
まぁ、この時間はどこの宿でも“夜更かしさん”が1人や2人いる。今回もそうだった。深夜0時に裸の女が3人。穏やかなBGMのかか浴室で静かに体を洗う。
みんなお疲れ、って思いながらできるだけ大きな音を立てないように、空気になるように徹しながらその場の雰囲気を楽しむ。やっぱり深夜の水場は落ち着く。露天風呂も暑目のお湯でいい感じだ。
そして、楽しみにしていた高温サウナ。明日の出発も少し遅めだから、今日はマイペースに3セット楽しむぞ。と意気込みいざ中へ。敷いてあるタオルに足を置くのもしんどいくらいの高温。まずい、あんまり得意じゃないかも....
時計を見る。一向に動かない赤い針1本だけの12分計。見方がわからない。壊れてるのかな?(真相わかる方教えて欲しい)おかげで何分滞在するかの目標も立てられないまま、「あっついな」っていう感覚に頭を支配される。
限界に達して、水風呂へ。外気浴に当たってもう一回サウナに。まだ整わない。
2回目の外気浴。少し小さな温泉だったので、整いスポットはなかった。ホワンホワンした状態で岩場に腰掛けて休む。「あー、気持ちいいなぁ」って俯いていた顔を上げる。そうすると、夜空と釧路の街が視界にちょうど半分になった。
明日で終わり。
入社したて、仕事の仕方も、自分の強みも、人付き合いも、
なにもわからなかった自分。
あれから自分は成長しただろうか。できることはもっとあったんじゃないか。もっと頑張れたんじゃないか。それとももっと早くやめるべきだっただろうか。本当にやめてしまって大丈夫だろうか。これから私はどうなるだろうか。
2年半前に勤め始めてから、今まで。土日以外毎日通い続けた会社に明日からいかなくなる。
釧路は少し、思い入れもあったり、嫌な思い出がある場所だったから、変に感傷的・感情的になってしまう。
嬉しい、悲しい、いやだ、怖い、不安、楽しみ。
いくつもの感情を抱きしめては、手放す。
だってどんなに後悔したって、どんなに解放感に浸ったって、明日からは1人だから。
「会社の人間という重み」から解放されると同時に「1人である責任」を背負う。会社にいる頃よりもずっしりと重いそれを背負って、しっかりちょっとずつ前に進もう。大好きなことを、大好きな人たちと、大好きな場所で。自由に、責任を持って、がむしゃらに挑戦していこう。
そう心で考えていると、こんな勇気のある選択をする後押しをしてくれた周りの人たちの存在に感謝すると同時に、周りに恵まれている自分を誇らしく思えた。
「あー。楽しみだな、」
心の中でつぶやきながら露天風呂を後にする。
露天風呂に入った時と、出ていく時の私は何か違った。何が違ったのかは明確にはわからないけど。
脱衣所に戻ると、2時を回っていると思っていた時計は1時を指していて。
「まだまだだな。」と思いながら部屋に戻った。
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