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【現水展賞受賞の感謝の言葉にかえて】

現在、東京都美術館で開催中の『第62回 現水展』

今回の樋口鳳香の出展作品は『美貌の天瑞』と名付けました。

作画の意図をそのまま題するなら『龍翔鳳舞』でしたが、

詩的な画題にしたのには理由がありました。

画題を決める段階、それは六月でしたが、

音楽家の坂本龍一が亡くなったのが三月で、魂の雨まだ止まぬ気配が濃く

特に気に入って聴いていた『Bibo no Aozora』という曲がありました。

その楽曲の不協和音に浸りながら創作した背景もあって

曲に寄り添う気持ちが梅雨前線のように停滞して、

よほど楽曲と同じ『美貌の青空』にしようかと思ったほどでした。



東京都美術館の入り口にある球体。天と地を映します


現在、『美貌の青空』とネットで検索すれば、

映画バベルの挿入曲となった坂本龍一の楽曲がトップに出てきますが、

坂本の曲作りの背景にあったのは、

どうやら舞踏家の土方巽(ひじかた たつみ1928年 - 1986年)だったようです。

坂本の楽曲と同題である土方巽の遺文集『美貌の青空』は筑摩書房より1987年に刊行されました。

その前衛的な舞踏家の存在は、坂本がいなければ知るよしもなかったことで、

見えない糸によって引き摺り出される不思議な縁を感じながら、

和紙を滑る筆先の意識は感性の響き合う時間軸を遡っていました。

そんな時もすでに三月も前のことで

今は瞬時に過去となり、誰もが常に過去を生きていることを深く実感した創作でした。



画題とした天瑞、とは、

幸せの兆しとなるしるし、瑞祥です。

未来の希望である瑞祥は、それぞれの心に映るもので、同じ形のものはなく

水に映る空のように、時間と場所で刻々と変化するものです。

神の姿を持たない宗教もあるように、心に宿る瑞祥の形も人ぞれぞれ。

多くの方にご高覧いただき、この作品を通して心の内に響くものがあれば幸いです。

改めて日頃よりご支援くださる皆様と

現代水墨画協会の皆様に深く感謝申し上げます。


エレベーターホールに向かう壁面にポスターが掲示されています


樋口鳳香は、有り難いことに『現水展賞』を受賞しました
ご高覧いただければ幸いです。

【第62回 現水展】
☆入場無料
東京都美術館(上野)2階展示室
10/14(土)まで開催
9:30~17:30・最終日は15:00閉展
後援:文化庁、東京都、上野の森美術館


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