【日記】室内プール|こどもの頃の日記から 10
196X年8月XX日 Z曜日 晴
シェーンブルン〔Schönbrunn〕の近くのプールにいった。
おもに室内プールだった。
とても水がきれいで、底まですけて〔透けて〕見えるくらいだ。
泳げたのがとてもうれしくて、言葉に出せないので、
今日の日記は短くしておく。
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「おもに室内プール」という表現は、どこから来たのだろうか。
I swam mainly in the indoor pool.
の mainly を英和辞書で引いて使ったのかもしれない。
「おもに」はふだんの会話では使っているはずはなく、
そもそも日本語の会話は親とMさん以外にはほとんどない。
ハプスブルク家の夏の離宮、シェーンブルン宮殿は有名な観光地でもあるが、プールや動物園など家族連れの市民が楽しめるレジャー施設もあった。
「底まですけて見えるくらいだ」と日記に書いているが、
プールなのだから底が見えるのは当たり前だと思う。
それを、わざわざ「すけて見える」と書いているのは、
緑の木々の影の揺れる中、夏の光がガラス越しにプールの底まで届いているのを、言葉に表せないくらい美しく感じたからだと思う。
現在はモダンにリフォームされているが、私がこども頃のこの施設は
「テルマエロマエ」に出てくるようなローマ風呂の趣があった。
今も、当時の雰囲気を一部残している場所もあるようだ。
シェーンブルンの動物園は、のちに米国の小説家ジョン・アーヴィングの作品でも有名になった。村上春樹が日本語訳をしている。