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【落語】おなら指南|おならの稽古をAI翻訳でやってみた

「お前さん、ちょっと付き合っておくれよ。
あたし、お稽古けいこに行きたいの」

「よしなよ。お前は何をやっても続かねぇんだから」

「今度こそ大丈夫。楽しそうなとこ見つけたの」

「何を稽古けいこするんだい?」

「英語でおなら」

「英語でおならァ?」

「お尻の穴からプウ〜って空気がもれるやつ」

「おならに英語も日本語もあるかよ」

「それがね、おならで楽しく英語がしゃべれるようになるんだって。
横丁のご隠居の向かいのマンションにおなら指南所しなんじょって看板が出てるから
お稽古に行こうと思うのよ。
ひとりじゃ心細いからお前さん、一緒に来ておくれよ」

「嫌だよ、そんなバカバカしい」

「いいじゃないの。お前さんとあたしの仲じゃないか。
一緒に来てちょうだいよぉ」

「しょうがねえなあ・・・



・・・あれ、ほんとに出てるよ看板が・・・

English School of AI DeepL  
英愛深流 おなら指南所

俺ぁ横文字ンとこは読めねえが・・・
えい、あい、ふか、ながれ・・・」

「えいあいしんりゅう、じゃないかねぇ、お前さん」

「何でぇそれは?」

「知らないけど先生の流派でしょ? 何だか奥が深そうじゃないか。
〈ピンポーン〉・・・こんにちは〜」

「どうぞお入りください」

「あのう、オモテの看板見たんですけど、
こちら英語でおならを教えてくださるとか?」

「さようでございます。お二人ですね?」

「いえ、お稽古したいのはあたしだけなんですけど」

「では、お連れさんはこちらへどうぞ」

「俺ぁ、オツレさんてほどのモンじゃねえです。一緒に来ただけです」

「じゃ、お連れさんですね。お連れさんはこちらへどうぞ」

「お前さん、先生がこちらへどうぞっておっしゃるんだからこっちへ来ておすわりよ」

「それでは稽古を始めますが、今までおならの稽古をしたことはおありかな?」

「えっ! 他でもやってるところがあるんですか? 
てっきりここだけかと思ってました。いえ、あの、あたしは初めてです」

「初心者の方ですね。では手始めに〈四季のおなら〉の稽古からまいりましょう。春夏秋冬ございますが・・・

秋のおなら

は名月ですな。お団子やススキをお供えして名月を観る。その時におならが出てかぐわしい香り越しの名月となる。なかなか風流なものでございます・・・

冬のおなら

炬燵こたつでございます。炬燵こたつに入ってミカンをむきかけたところでとろーんと眠くなる。うとうとしているとさっき食べた焼きイモのせいで思わずプウ〜っと・・・
・・・炬燵こたつの中で寝ている猫がにゃあとひと声鳴くが、外へ飛び出るほどではない。炬燵こたつ布団ごしに猫に聞こえるか聞こえないかのおなら。これは四季のおならの中でもいちばん難しい・・・」

「むずかしいのはカンベンしてくださいな。
いちばんやさしいのでお願いしますよ」

「では、

AI 翻訳 DeepL で夏のおなら

はいかがでしょう? 私がやってお見せしますので・・・」

「何ですか、その四角い金魚鉢みたいなの?」

「これが DeepL でございます」

「じいぷう?」

「いえ、DeepL」

「で、でぃいぷう」

「Deeee-pp-LL」

「でぃいいぷぅるっ」

「D の発音はまあまあですが、L がいけませんね。
舌の先をこう前歯の裏側に軽く当てて LLLLLL.....」

「ぅぅぅるぅぅるぅ……むずかしいじゃないですかっ! 
いちばんやさしいんじゃなかったんですかっ?」

「先に行きましょうか。なに、発音はおいおい良くなります・・・」
・・・では、夏のおなら。
・・・隅田川に舟をもやいまして船頭せんどうと差し向かい。
・・・夏の昼下がりにとろーんとした気だるい感じ・・・
・・・きせるを持ってタバコに火を点ける・・・
・・・ゆっくりとタバコをくゆらす・・・
で、台詞せりふでございます。ようく聴いていてください。
・・・船頭さんや・・・舟を上手うわてへやっておくれ。
堀から上がって一杯やって晩には中にでも行って新造しんぞうを買って粋な遊びをしよう。舟もいいが、一日乗っていると・・・退屈で・・・退屈で・・・
・・・プウ〜・・・おならが出る」

「む、ず、か、しい、です、よっ!! ねえお前さん、見たかい? 
奥が深いってこれの事だよっ! 先生、見ておりましたがとてもいっぺんでやれるもんじゃありません」

「いえいえ、

大丈夫ですよ DeepL がありますから

・・・この中に入って・・・こうすわりまして・・・
・・・タバコを一服・・・
Get the boatman and the boat to the right place.
Let's have a drink after we get out of the moat, and in the evening we'll go in and buy a new boat and have some fun.
The boat is nice, but after a day's ride it gets boring, boring, boring….

〔作者注、実際の DeepL 翻訳です〕
・・・たいして長文じゃございませんのでなるべく早く覚えてくださいね」

「ちょ、ちょっと先生、じゅうぶん長いじゃありませんか。
あたしは英語が苦手なんです。
おならのけいこっていうから1列に並んでみんなでプウ〜っていっぺんにひねるんだと思ってました」

「まあ、そう言わずに。あなたもやってごらんなさい。 DeepLで」

「この四角い金魚鉢の中に座ってしゃべるんですか?
・・・えっと、きせるを取り出して・・・

きせる →  Put on 〔作者注、実際の DeepL 翻訳です〕

あらま、着物を〈着せる〉の〈きせる〉になっちゃった! じゃ、こうしましょ。

キセル →  Kisser 〔作者注、実際の DeepL 翻訳です〕

いや、違うでしょ絶対。じゃあ、ちゃんと漢字で書いてみましょかね。

煙管 →  Chimney 〔作者注、実際の DeepL 翻訳です〕

ち、チムニー? メリー・ポピンズじゃないんですよっ!
隅田川がテムズ川になっちまいますよ。せんせーい!」

「きせるはいいから台詞をやりましょう。
・・・船頭さんや、舟を上手うわてへやっておくれ。
Get the boatman  ...」

ゲッザ、ボートマン

・・・あら、船頭さんて英語でボートマンなんですね。
なんかレガッタレースの選手みたいですね・・・筋肉ムキムキの・・・
・・・テムズ川でトレーニング中・・・
・・・オールをガシッと握る手が力強くって・・・
・・・二の腕はこんがり日に焼けてたくましく・・・
・・・首筋に汗がきらりと光って・・・・
・・・ブロンドの髪はすっきりクルーカットで超イケメン・・・



うふふふふふ」

「そんなこと、どこにも書いてありませんよ! 先を読みますよ!
... and the boat to the right place.

「あのう・・・舟を上手うわてへやる、がこうなるんですか? 
上手うわてへって、川の水がこう流れてくる上流の方向へってことでございましょ? 
ボート、ツー、ザ、ライト、プレイス? 
正しい場所へ移動ってちょっと違うような?」

「堀から上がって一杯やって・・・

Let's have a drink after we get out of the moat. 」

レッツ、ハブ、ア、ドリンク

・・・ちょっと待ってくださいよ、先生。
レッツって言ったらお友達と誘い合わせて一緒にってことでしょ? 
あたしは夏の気だるい宵の口は独り静かに呑みたいんですけど・・・
・・・谷中やなか蕎麦そば屋の二階かなんかで・・・
・・・軒先に風鈴がちりんちりん・・・
・・・カナカナゼミが鳴いている・・・カナカナカナ・・・
・・・セミの声を聴きながらキンと冷やした日本酒を・・・
・・・キューーーっと・・・・



・・・あああああ〜っ! 五臓六腑ごぞうろっぷにしみわたるっ! 一杯やるってそういうことでございましょ? 
レッツ・ハブ・ア・ドリンクじゃあ渋谷のバルで女子会みたいですよ」

「晩には中にでも行って・・・
... and in the evening we'll go in and ...

「先生、いくら英語が苦手な私だってこれはヘンだってわかりますよ。
〈中にでも行く〉って吉原の中、遊郭に行くってことでございましょ? ゴー・インだけじゃあ、この人どこ行っちゃったんだろってなりますよ。
今さっき堀から上がってきたのにここでゴー・インって・・・・
酔っ払って堀に落っこちたみたいだよ」

「新造を買って粋な遊びをしよう。
... buy a new boat and have some fun.

「えええええ〜〜っ?! 新造さんがニューボートなんですか? 
そりゃどっちも乗っかるもんですけど。
あら、これ、ピー音かぶせないといけないかしら? 
ドリンク一杯やって遊郭へゴーイン、そこで買うのがニューボートって・・・むちゃくちゃじゃないですかっ!」

舟もいいが

・・・一日乗っていると・・・

The boat is nice, but ... after a day's ride ... 」

「先生、新造さんが気の毒ですよ。
ナイスってからには別嬪べっぴんさんなんでしょ? 
お客さんに引く手あまたの新造さんに決まってますよ。
それをまるまる1日24時間独り占めして乗っピーーーー 
まあ、よっぽど大金で買えば、
そりゃあ乗りh ピーーーーーーーーーーーーー

「退屈で・・・退屈で・・・
... it get's boring ... boring ....

「あんまりじゃありませんか、先生。
別嬪の新造さんを24時間拘束したあげくに退屈で退屈で、だなんて。
まったくヒドイ男だよっ。
あたしがその新造さんだったらそんな男は思いっきりひっぱたいてやりますけどねっ!」

「・・・プウ〜・・・おならが出る
.... boring ....



「・・・・・」

「では、もう一度やってみましょう」

「ちょっ、ちょっ、ちょっ、ちょっ・・・

ちょっとまったああああああ!!!



「何ですか?」

「何ですかって・・・おならはどこへ消えちゃったんですか! 
プウ〜は? プウ〜の翻訳は? おならが出る、の英語は?」

「DeepL には出ませんでした」

出ませんでしたって、そんな無責任な! 

プウのプの字も聞こえなかったし、台詞の最後の〈おならが出る〉ってとこ、この落語のキモじゃございませんかっ! 
それを boring ひとつ余分にくっつけただけでごまかしちゃうんですか? 
なんでおならを出さないの? おならはどうしたんですかっ!」

「いい加減にしろよっ! お前たちはいいよ好きな事やってるんだから! そもそもこんな事を教わろうってカカアもカカアだが、
ゼニ取って教える方も教える方だよっ! 
でぃいぷうだか北風ぴいぷうだか知らねえけどよ! 
四角い金魚鉢ン中にへぇってドリンクだのニューボートだのって
何考えてんだよ! お前たちはいいけどよ。
クソ面白くもねえモンを見せられてこっちでぼんやり待たされる俺の身にもなってみろよ。俺の方がよっぽど退屈で・・・退屈で・・・

・・・プウ〜〜っ・・・ おならが出る」

「お連れさんの方がご器用でらっしゃる」

                  おあとがよろしいようで・・・

*古典落語「あくび指南」翻案 2021年8月言語ビッグバン講座へ提出したものに加筆修正しました。

*記事中に引用した DeepL の翻訳は 2021年8月当時のものです。DeepL は日々進化中のため、現在は引用とは異なる訳が表示される場合もあります。

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